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―第百八十六話― 落ちこぼれと裏切者

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「……仲間、ねえ……。残念だけど、あなたに私は殺せないわよ」
「……だとしても、僕は、僕なりの全力で君を倒すつもりだ」
「そう。まあ、やってみなさい」
「ああ。……でも、その前に……!」

 ぐっと体が宙に浮く感覚に襲われる。
 というか、宙に浮いた。
 いや、正確に言えば、ローズに抱えられた。

「一旦、逃げるぞ!」
「待ちなさい! ……そう易々と、逃がすわけがないでしょう!?」
「邪魔できるもんなら、やってみろ!! 『リバース』!!」

 アルネブの腕がもうすぐ目の前という瞬間に、ローズの能力が発動された。

「リア!! 大丈夫だった!?」
「な、なんとかな……」
「……もしかしてだけど、アルネブの能力くらっちゃった?」
「……ああ。面目ない」
「ちょっと待ってて」

 そう言ってツツジは、俺の額に手を当て、短く詠唱を唱えた。

「……どう?」
「……うん、少しだけ動けそう」

 能力無効化の能力を使ってくれたのか、四肢にも少しずつ力が入り始めた。
 ……戦った時は面倒だったけど、仲間だとめっちゃ頼りになるな。
 今回に限った話ではないが。

「リア、早速でごめんけど、作戦とかはある?」
「……まあ、一応。それよりも、俺に回復魔法かけてくれないか? ちょっと……、怪我しちまったからな」
「あ、分かった! 『ヒール』!!」

 体が淡い光に包まれ、スーッと気分が楽になってくる。
 ……うん、この感じなら、四、五回は能力使えそうだな。

「……ハァ、ハァ、ようやく追いついたわよ……!!」

 背後から、ぞくりとするような声が響いた。

「……随分と早かったな」
「あら、もう元に戻ったのね。……もしくは、そのふりか……」
「あら、私の事は無視するの? 幹部の落ちこぼれちゃん」
「……あんたも同類でしょう、裏切者さん?」

 ツツジとアルネブの間に嫌な雰囲気が流れる。
 もしかして、ツツジが魔王軍にいた頃に、何かあったのだろうか。

「……ハァ。ま、いいわ。本来の目的はあんただったんだけど、気が変わったわ。……リアトリス君を、こっちに」

 そこまで言って、アルネブの両腕が宙を舞った。

「却下。お兄ちゃんには、手を出させないわよ」
「よく話の流れは分かんないけど、リアに手を出すんなら、許さないわよ」
「……今日は、よく腕を切られる日ね……」

 落ちた腕から触手が伸び、再びアルネブの体にくっついた。

「交渉決裂、か……。しょうがないわね……!」

 アルネブがそう呟くと同時に、アルネブの両腕から大量の触手が現れた。

「さあ、戦いましょう!! 私か、あなた達か。どちらかが死ぬまで、戦いましょう!!」
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