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―第百八十四話— 喀血
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口からびちゃびちゃと血が溢れ出してくる。
……もう来たか……!
舌先の痺れ、喉の痛み、物の食べづらさ、飲みづらさ。
どれもこれも、ここ最近感じていたことだ。
最初は風邪か何かかと思っていた。
だが、能力を使うたびに酷くなっていったことから、何となくその影響なのではないかと思い始めていたのだ。
そして、ルビーの発言。
これで俺は確信を持った。
……俺の能力に、デメリットなんてないと思ってたんだけどな……。
「……自滅……?」
ぼそっとアルネブが呟いたのが聞こえる。
……まずい。
「『回復』……!」
無理やり能力を使い、一旦出血を止める。
「まだ、やろうぜ……!!」
「…………」
短剣を構え、足の震えを抑えながら、アルネブに跳びかかる。
だが、そもそもがスライム。
俺の斬撃など意に介さず、首を捕まえられた。
「最強の冒険者とやらも、こうなれば可愛い物ね」
「……離、せ!! 『切断』!!」
全力で腕を切り落とし、やっとのことで脱出する。
……口の端から、少しだけ血が溢れてきた。
喉が切れているのか、肺とかそっちの方がやられてるのか……。
どっちか分からないが、とりあえずまずいということだけはわかる。
……ローズ、なるべく早く来てくれ。
あまり危険が及ぶようなことにはなってほしくないが、流石に、あいつらの力を借りなくてはならない。
……だが、俺自身も。
「最後まで、抵抗させてもらうぜ」
「……そう。好きにしなさい」
聞かないとは知りつつも、短剣を構える。
……この手なら、行けるだろうか。
「爆発!!」
「!!」
……かかったな!
能力も何も使っていない俺の言葉に反応し、アルネブは横に飛び退いた。
そこを狙い、魔力を思い切りこめた短剣を振る。
「くっ……!!」
「魔力込められてたら、流石に少しは効くんだろ!?」
「……正解……」
俺に切られたわき腹を押さえ、ふらふらと立ち上がる。
……とはいえ、ここからどうこうする策なんて、俺にはない。
……いかに俺が能力頼りの戦いをしていたのかが、身に染みて分かるな。
……効くのかな、これ。
「『コメット』!!」
アルネブ目掛け、巨大な魔力塊が飛ぶ。
「あなたって、本当に厄介な冒険者ね……!!」
反応が遅かったのか、アルネブの体の右半分が吹き飛んでいる。
一応、効くことには効くっぽいな。
とはいえ、魔法を使っただけでも、喉の痛みが酷くなった。
……乱射したかったが、無理だな。
「……随分と、苦しそうね」
「うるせえ。お前には、関係ねえだろうが」
「あら、一緒に風呂に入った中だってのに、冷たいのね」
「い、今そんな話題持ち出してくるなよ!」
笑いながら言ってきやがって。
「ほら、楽にしてあげるわ」
アルネブの腕が触手へと変わり、俺の体を締め上げてくる。
「『移ど……う」
「もう、何もできないみたいね」
「うる……ゴホッ、ガハッ!!」
アルネブの青い触手の上に、真っ赤な鮮血が飛び散る。
「まあ、可哀想に! こんなに苦しそうにしちゃって!」
この野郎、何を白々しく言ってるんだ?
……くそっ、解けねえし……!!
「はい、リアトリス君の冒険者人生も、これで終わり。『ウィークネス』」
ドクン、と一つ心臓が強く脈打つ。
その瞬間、全身から力が抜ける。
……温泉で以前感じた感覚だ……。
ぼとっと壊れた人形のように地に落とされる。
ああ、まずい。
能力も何もかも封じられてしまった。
……この状態で『呪縛』を使ったら、どうなるのだろうか。
前みたく舌を切り落として、なんてことはできないから、確実に体にダメージがくるな。
能力を使えなくなることはおろか、死ぬ可能性だって、十二分にあるだろう。
……だが、奴を絶対に殺せる。
……やるしかないか。
「はい、とどめ」
ヒュンッと何かを構える気配を感じる。
さっきの短剣だろうか。
……今からなら、まだ間に合う……!!
「呪縛!!」
辺りに響いた俺の声に、アルネブの動きが一瞬止まる。
……が、それ以上は何も起きない。
なぜ、能力が発動しないのだろうか。
自然と涙が零れてくる。
「……くっ。今度こそ……!」
唯では死ねない、などと思ってたけど……。
……ジャスミン、ツツジ、ローズ、後は……。
俺は、覚悟を決めて目を瞑った。
……もう来たか……!
舌先の痺れ、喉の痛み、物の食べづらさ、飲みづらさ。
どれもこれも、ここ最近感じていたことだ。
最初は風邪か何かかと思っていた。
だが、能力を使うたびに酷くなっていったことから、何となくその影響なのではないかと思い始めていたのだ。
そして、ルビーの発言。
これで俺は確信を持った。
……俺の能力に、デメリットなんてないと思ってたんだけどな……。
「……自滅……?」
ぼそっとアルネブが呟いたのが聞こえる。
……まずい。
「『回復』……!」
無理やり能力を使い、一旦出血を止める。
「まだ、やろうぜ……!!」
「…………」
短剣を構え、足の震えを抑えながら、アルネブに跳びかかる。
だが、そもそもがスライム。
俺の斬撃など意に介さず、首を捕まえられた。
「最強の冒険者とやらも、こうなれば可愛い物ね」
「……離、せ!! 『切断』!!」
全力で腕を切り落とし、やっとのことで脱出する。
……口の端から、少しだけ血が溢れてきた。
喉が切れているのか、肺とかそっちの方がやられてるのか……。
どっちか分からないが、とりあえずまずいということだけはわかる。
……ローズ、なるべく早く来てくれ。
あまり危険が及ぶようなことにはなってほしくないが、流石に、あいつらの力を借りなくてはならない。
……だが、俺自身も。
「最後まで、抵抗させてもらうぜ」
「……そう。好きにしなさい」
聞かないとは知りつつも、短剣を構える。
……この手なら、行けるだろうか。
「爆発!!」
「!!」
……かかったな!
能力も何も使っていない俺の言葉に反応し、アルネブは横に飛び退いた。
そこを狙い、魔力を思い切りこめた短剣を振る。
「くっ……!!」
「魔力込められてたら、流石に少しは効くんだろ!?」
「……正解……」
俺に切られたわき腹を押さえ、ふらふらと立ち上がる。
……とはいえ、ここからどうこうする策なんて、俺にはない。
……いかに俺が能力頼りの戦いをしていたのかが、身に染みて分かるな。
……効くのかな、これ。
「『コメット』!!」
アルネブ目掛け、巨大な魔力塊が飛ぶ。
「あなたって、本当に厄介な冒険者ね……!!」
反応が遅かったのか、アルネブの体の右半分が吹き飛んでいる。
一応、効くことには効くっぽいな。
とはいえ、魔法を使っただけでも、喉の痛みが酷くなった。
……乱射したかったが、無理だな。
「……随分と、苦しそうね」
「うるせえ。お前には、関係ねえだろうが」
「あら、一緒に風呂に入った中だってのに、冷たいのね」
「い、今そんな話題持ち出してくるなよ!」
笑いながら言ってきやがって。
「ほら、楽にしてあげるわ」
アルネブの腕が触手へと変わり、俺の体を締め上げてくる。
「『移ど……う」
「もう、何もできないみたいね」
「うる……ゴホッ、ガハッ!!」
アルネブの青い触手の上に、真っ赤な鮮血が飛び散る。
「まあ、可哀想に! こんなに苦しそうにしちゃって!」
この野郎、何を白々しく言ってるんだ?
……くそっ、解けねえし……!!
「はい、リアトリス君の冒険者人生も、これで終わり。『ウィークネス』」
ドクン、と一つ心臓が強く脈打つ。
その瞬間、全身から力が抜ける。
……温泉で以前感じた感覚だ……。
ぼとっと壊れた人形のように地に落とされる。
ああ、まずい。
能力も何もかも封じられてしまった。
……この状態で『呪縛』を使ったら、どうなるのだろうか。
前みたく舌を切り落として、なんてことはできないから、確実に体にダメージがくるな。
能力を使えなくなることはおろか、死ぬ可能性だって、十二分にあるだろう。
……だが、奴を絶対に殺せる。
……やるしかないか。
「はい、とどめ」
ヒュンッと何かを構える気配を感じる。
さっきの短剣だろうか。
……今からなら、まだ間に合う……!!
「呪縛!!」
辺りに響いた俺の声に、アルネブの動きが一瞬止まる。
……が、それ以上は何も起きない。
なぜ、能力が発動しないのだろうか。
自然と涙が零れてくる。
「……くっ。今度こそ……!」
唯では死ねない、などと思ってたけど……。
……ジャスミン、ツツジ、ローズ、後は……。
俺は、覚悟を決めて目を瞑った。
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