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―第百五十九話― 泥棒か幽霊か

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 ……ここは、風呂場か……!?

「これ、いくらかけて作られてんのよ……」
「な……」

 広すぎるわけではないのに、めちゃくちゃ豪華なんだけど。
 というか、豪華すぎる。
 こんなんじゃ、落ち着いて風呂に入れねえだろうよ……。

「……! これ、魔力でお湯湧かせるやつじゃん! めっちゃ高いのよ!?」
「マジで!?」

 そんなのまでついてんのかよ……。
 えっ、待って、この家の前の持ち主がめちゃくちゃ気になる。

「……と、とりあえず他の部屋も見て回るか……」
「そ、そうね」

 六分の不安と四分の期待を抱えながらも、俺たちはルームツアーを続けることにした。



「「…………はぁ」」

 二人同時に溜め息が出る。
 なんなんだよ、マジでなんなんだよ、この家……。

「ここ、多分だけど空間拡張の結界張られてるわよね……」
「うん……」

 明らかに敷地に不相応な部屋数だったからな……。
 というか、空間拡張って、めちゃくちゃ高度な結界じゃないか。
 しかも、部屋の一つ一つが、当たり前のように豪華だったし。
 どんだけ金かけられてんだよ、この家……。

「てか、結局泥棒だか幽霊だかは見つからなかったな」
「あ、そういえばそうね。……どうする?」
「どうするも何も……。うーん……」

 まじでどうしようかねえ……。
 …………。

「しょうがない、能力使うか……」
「いや、最初から使いなさいよ」

「そんなことしたら、一発で見つかって面白くないだろ?」

「……あんたって人は……」

 ものすっごく呆れた声が返ってくる。

「『探知』」

 さて、どの部屋にいるんだ……?
 ……空間拡張のせいか、若干分かりづらいな。
 ……?
 反応が……二人?
 いや、一人か……?
 なんか、気配も感じ取りづらいな……。

「とりあえず、場所だけは分かった。玄関の辺りだ」
「……逃げだすつもりかしら」
「そうかもな。さっさと行こうぜ」
「うん」

 幽霊でも泥棒でも、見つけたらジャスミンに全力でしばいてもらおう。
 聖騎士様なんだし、どっちもいけるだろ。



「あれ? おっかしいな……」

 お、いたいた。
 相手さんは、やっぱり泥棒だったか。
 なにやらもたついてる様子だな。
 床に置いてある袋は、盗品を詰め込んだものか?

(ジャスミン、いくぞ!)

 小声で合図を出し、廊下の角から踊り出た。

「『捕縛』!!」
「なっ!?」

 能力で相手の体の自由を奪う。

「おらーッ!!」
「がふっ……!!」

 動けなくなった泥棒に、ジャスミンがとどめの腹パンを叩きこんだ。

「よし、このまま警察署に持っていくか」

 泥棒を肩に担ぎ、扉を開ける。

「へぶっ!!」
「「……え?」」

 エリスロニウム!?
 何故か知らないが、エリスロニウムが扉の前に突っ立っており、俺が開けた拍子に額を思い切りぶつけてしまったようだ。

「いてて……」
「だ、大丈夫ですか!?」
「あ、ああ、この程度ならな。……って、その肩に乗ってるのは誰だい?」

「ああ、なんか泥棒が入ってたんで、捕まえました」

「泥棒!?」
「はい。なんか玄関の辺りでもたもたしてたんで、とりあえず気絶させました」
「そうか……。まったく、自分の張った罠に引っかかるとは、とんだ馬鹿者だな」
「どういうことっすか?」
「いや、さっきまで扉が開かなかったんだ。多分、盗みを働いている間に、誰にも侵入されないようにしてたんじゃないか? 扉の取っ手に魔道具が付いていなかったかい?」

 魔道具?

「いや、さっき開けた時は、別にそんなものなかったですけど……。な、ジャスミン」
「うん」
「「「……えっ?」」」

 俺たちの間を、季節外れの木枯らしが吹き去った。
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