160 / 234
―第百五十九話― 泥棒か幽霊か
しおりを挟む
……ここは、風呂場か……!?
「これ、いくらかけて作られてんのよ……」
「な……」
広すぎるわけではないのに、めちゃくちゃ豪華なんだけど。
というか、豪華すぎる。
こんなんじゃ、落ち着いて風呂に入れねえだろうよ……。
「……! これ、魔力でお湯湧かせるやつじゃん! めっちゃ高いのよ!?」
「マジで!?」
そんなのまでついてんのかよ……。
えっ、待って、この家の前の持ち主がめちゃくちゃ気になる。
「……と、とりあえず他の部屋も見て回るか……」
「そ、そうね」
六分の不安と四分の期待を抱えながらも、俺たちはルームツアーを続けることにした。
◆
「「…………はぁ」」
二人同時に溜め息が出る。
なんなんだよ、マジでなんなんだよ、この家……。
「ここ、多分だけど空間拡張の結界張られてるわよね……」
「うん……」
明らかに敷地に不相応な部屋数だったからな……。
というか、空間拡張って、めちゃくちゃ高度な結界じゃないか。
しかも、部屋の一つ一つが、当たり前のように豪華だったし。
どんだけ金かけられてんだよ、この家……。
「てか、結局泥棒だか幽霊だかは見つからなかったな」
「あ、そういえばそうね。……どうする?」
「どうするも何も……。うーん……」
まじでどうしようかねえ……。
…………。
「しょうがない、能力使うか……」
「いや、最初から使いなさいよ」
「そんなことしたら、一発で見つかって面白くないだろ?」
「……あんたって人は……」
ものすっごく呆れた声が返ってくる。
「『探知』」
さて、どの部屋にいるんだ……?
……空間拡張のせいか、若干分かりづらいな。
……?
反応が……二人?
いや、一人か……?
なんか、気配も感じ取りづらいな……。
「とりあえず、場所だけは分かった。玄関の辺りだ」
「……逃げだすつもりかしら」
「そうかもな。さっさと行こうぜ」
「うん」
幽霊でも泥棒でも、見つけたらジャスミンに全力でしばいてもらおう。
聖騎士様なんだし、どっちもいけるだろ。
◆
「あれ? おっかしいな……」
お、いたいた。
相手さんは、やっぱり泥棒だったか。
なにやらもたついてる様子だな。
床に置いてある袋は、盗品を詰め込んだものか?
(ジャスミン、いくぞ!)
小声で合図を出し、廊下の角から踊り出た。
「『捕縛』!!」
「なっ!?」
能力で相手の体の自由を奪う。
「おらーッ!!」
「がふっ……!!」
動けなくなった泥棒に、ジャスミンがとどめの腹パンを叩きこんだ。
「よし、このまま警察署に持っていくか」
泥棒を肩に担ぎ、扉を開ける。
「へぶっ!!」
「「……え?」」
エリスロニウム!?
何故か知らないが、エリスロニウムが扉の前に突っ立っており、俺が開けた拍子に額を思い切りぶつけてしまったようだ。
「いてて……」
「だ、大丈夫ですか!?」
「あ、ああ、この程度ならな。……って、その肩に乗ってるのは誰だい?」
「ああ、なんか泥棒が入ってたんで、捕まえました」
「泥棒!?」
「はい。なんか玄関の辺りでもたもたしてたんで、とりあえず気絶させました」
「そうか……。まったく、自分の張った罠に引っかかるとは、とんだ馬鹿者だな」
「どういうことっすか?」
「いや、さっきまで扉が開かなかったんだ。多分、盗みを働いている間に、誰にも侵入されないようにしてたんじゃないか? 扉の取っ手に魔道具が付いていなかったかい?」
魔道具?
「いや、さっき開けた時は、別にそんなものなかったですけど……。な、ジャスミン」
「うん」
「「「……えっ?」」」
俺たちの間を、季節外れの木枯らしが吹き去った。
「これ、いくらかけて作られてんのよ……」
「な……」
広すぎるわけではないのに、めちゃくちゃ豪華なんだけど。
というか、豪華すぎる。
こんなんじゃ、落ち着いて風呂に入れねえだろうよ……。
「……! これ、魔力でお湯湧かせるやつじゃん! めっちゃ高いのよ!?」
「マジで!?」
そんなのまでついてんのかよ……。
えっ、待って、この家の前の持ち主がめちゃくちゃ気になる。
「……と、とりあえず他の部屋も見て回るか……」
「そ、そうね」
六分の不安と四分の期待を抱えながらも、俺たちはルームツアーを続けることにした。
◆
「「…………はぁ」」
二人同時に溜め息が出る。
なんなんだよ、マジでなんなんだよ、この家……。
「ここ、多分だけど空間拡張の結界張られてるわよね……」
「うん……」
明らかに敷地に不相応な部屋数だったからな……。
というか、空間拡張って、めちゃくちゃ高度な結界じゃないか。
しかも、部屋の一つ一つが、当たり前のように豪華だったし。
どんだけ金かけられてんだよ、この家……。
「てか、結局泥棒だか幽霊だかは見つからなかったな」
「あ、そういえばそうね。……どうする?」
「どうするも何も……。うーん……」
まじでどうしようかねえ……。
…………。
「しょうがない、能力使うか……」
「いや、最初から使いなさいよ」
「そんなことしたら、一発で見つかって面白くないだろ?」
「……あんたって人は……」
ものすっごく呆れた声が返ってくる。
「『探知』」
さて、どの部屋にいるんだ……?
……空間拡張のせいか、若干分かりづらいな。
……?
反応が……二人?
いや、一人か……?
なんか、気配も感じ取りづらいな……。
「とりあえず、場所だけは分かった。玄関の辺りだ」
「……逃げだすつもりかしら」
「そうかもな。さっさと行こうぜ」
「うん」
幽霊でも泥棒でも、見つけたらジャスミンに全力でしばいてもらおう。
聖騎士様なんだし、どっちもいけるだろ。
◆
「あれ? おっかしいな……」
お、いたいた。
相手さんは、やっぱり泥棒だったか。
なにやらもたついてる様子だな。
床に置いてある袋は、盗品を詰め込んだものか?
(ジャスミン、いくぞ!)
小声で合図を出し、廊下の角から踊り出た。
「『捕縛』!!」
「なっ!?」
能力で相手の体の自由を奪う。
「おらーッ!!」
「がふっ……!!」
動けなくなった泥棒に、ジャスミンがとどめの腹パンを叩きこんだ。
「よし、このまま警察署に持っていくか」
泥棒を肩に担ぎ、扉を開ける。
「へぶっ!!」
「「……え?」」
エリスロニウム!?
何故か知らないが、エリスロニウムが扉の前に突っ立っており、俺が開けた拍子に額を思い切りぶつけてしまったようだ。
「いてて……」
「だ、大丈夫ですか!?」
「あ、ああ、この程度ならな。……って、その肩に乗ってるのは誰だい?」
「ああ、なんか泥棒が入ってたんで、捕まえました」
「泥棒!?」
「はい。なんか玄関の辺りでもたもたしてたんで、とりあえず気絶させました」
「そうか……。まったく、自分の張った罠に引っかかるとは、とんだ馬鹿者だな」
「どういうことっすか?」
「いや、さっきまで扉が開かなかったんだ。多分、盗みを働いている間に、誰にも侵入されないようにしてたんじゃないか? 扉の取っ手に魔道具が付いていなかったかい?」
魔道具?
「いや、さっき開けた時は、別にそんなものなかったですけど……。な、ジャスミン」
「うん」
「「「……えっ?」」」
俺たちの間を、季節外れの木枯らしが吹き去った。
0
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?
chocopoppo
ファンタジー
松本(35)は会社でうたた寝をした瞬間に異世界転移してしまった。
特別な才能を持っているわけでも、与えられたわけでもない彼は当然戦うことなど出来ないが、彼には持ち前の『単調作業適性』と『社会人適性』のスキル(?)があった。
第二の『社会人』人生を送るため、超資格重視社会で手に職付けようと奮闘する、自称『どこにでもいる』社会人のお話。(Image generation AI : DALL-E3 / Operator & Finisher : chocopoppo)
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる