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―第百五十六話― お嬢様

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 ……は?

「……は?」

 思ったことが口からそのまま出てしまった。
 ……いや、当然の事であろう。
 だって、扉から入ってきたのは……。

「ジャスミン!?」
「リア、大丈夫? ……お父様。まさか、私の大切な仲間を、苦しめるようなことはしてないでしょうね!?」
「い、いや、決してそんなことは……」

「ふん!!」

「がふっ!!」

 エリスロニウムに大股で駆け寄ったジャスミンが、容赦なく平手打ちをかました。

「ねえ、私が家を出た時に約束させましたよね? 冒険のこと、仲間の事には口出ししないって……!!」
「いやあ、その……」

 凄い剣幕で掴みかかるジャスミンと、しどろもどろなエリスロニウム。

「なあ、ジャスミン」
「ん? ちょっと待って! 今こいつを折檻するから!!」

「いや、先に状況を説明してくれよ!!」



「うぐっ、ひくっ。も、申し訳ございませんでした……」
「い、いや、いいっすよ、そんな謝らなくても……」

 結局折檻されたエリスロニウムは、地面に頭を擦り付ける勢いで謝ってきた。

「ごめんね、リア。このクソバカ親父が迷惑かけちゃって」

 ぼろくそに言うじゃん。
 可哀想だって。

「……それで、どういう状況なの、これは?」
「んーとね……。……はぁ。今まで話してなかったけど、私はこいつの娘なの。で、お父様が私にどうしても仕事を継げって言うから、無理やり家を出て、冒険者になったの」
「へ―……」

 ちゅうことは、こいつは所謂お嬢様なのか?
 …………。

「ふっ」
「ちょっ、今なんで笑ったの!?」
「い、いや、お前がまさか、お嬢様だったなんてな……。……フフッ」
「これが嫌だったから隠してたのよ!! ……まったく、それもこれもお父様のせいね。もう一発殴るわよ」
「ちょ、なんで!?」
「あんたがリアを攫わなかったら、そもそもこんな状況になってないでしょ!!」

 またしてもぶん殴られるエリスロニウム。

「……それで、何のためにリアを攫ったの? 返答によっては、この家にあるもの全部壊して回るわよ」
「……はい。えーっとですね……」



 話が長いうえ、途中途中で殴られたりしてたから、三十分ほどして、ようやく俺を攫った理由の説明が終わった。
 ……つまり。

「おっさんは、娘があんまりにも帰ってこないから、俺を攫えば帰ってくるだろうと踏んだわけか。……そして、リーダーの俺を追い出すことで、ジャスミンが冒険者をやめてくれるのではないかと考えたんだな?」

「はい、その通りです」
「…………」

 無言のまま、もう幾度目になるか分からない平手打ちを、エリスロニウムにかました。
 ……もう、顔面パンパンじゃん。
 というか、ジャスミンのタフさは確実に父親譲りだな。

「……それで、お父様」
「は、はい!!」
「私達さ、ほんのちょーっとだけ、困ったことになってるの。力、貸してくれるわよね?」
「はい、何なりと」

 ……親父さん、弱すぎる……。
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