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―第百四十九話― 侵入者

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 片手に酒瓶を抱え、家に帰る。
 今日はポーションがかなり売れたもんだから、顔も財布の紐も緩くなってしまっている。
 俺にしては珍しく、かなり高めの酒を買ってきてしまった。
 こればっかりは、俺一人で堪能してしまおう。

「たっだいまー!!」

 誰もいない家に意気揚々と挨拶をする。

「あ、おかえりー!!」
「…………!?」
「遊びに来ちゃった」

 ツツジだ。
 なぜか知らんが、俺の布団の上でダラダラと本を読んでいるツツジがいる。
 …………。

「きゃうっ!!」

 無言で首根っこを摑まえ、そのまま外に放り出す。

「ちょっと、なんで投げるの!?」
「逆に聞こう。なんで俺の家にいるんだよ!?」
「え、暇だったから」
「そんな理由で侵入してくるな!!」

 ぴしゃっと扉を閉める。
 ……が。

「締め出さないでよ!!」
「だから入ってくるなって!!」
「鍵してない方が悪いんですー!」
「この家が古すぎて、そもそも鍵なんてねえんだよ!!」

 ……大家さんに相談しようかなぁ。

「ほら、なんも用事ないんだったら、帰れ!! 俺は今から束の間の休息に勤しむんだ!!」
「えー、いいじゃん別に!! ……それとも、何か言えないことでもするのかなあ?」
「酒飲むだけだ!! だからとっとと帰れ!!」
「……ケチ!」
「ケチで結構!! 『閉まれ』!!」

 再び扉を閉め、能力で施錠する。
 ……これで家には入れまい。
 安心したところで、ようやく酒を開ける。
 ……香りがめちゃくちゃいいな。
 さて、肝心のお味は……!!

「……アサシンを舐めてるでしょ?」

 首筋にナイフを突き立てられる。
 …………。

「お前、どんだけうちに居たいんだよ」
「できることならずっと」

 マジかよ、こいつ。

「……はぁ。とりあえず、酒飲むのだけは邪魔しないでくれよ?」
「はーい」

 もう諦めた。



「……美味い」

 細かいことは分からんが、とにかくうまい。
 コップに入れた分だけをちびちび飲もうとしてたのに、一気飲みしてしまった。

「……ねえ、お兄ちゃん」
「だめだ」
「まだ何も言ってないじゃない!!」
「……どうせ、一杯だけ飲ませてくれとかだろ?」
「正解!!」
「絶対だめだ」

 栓を閉め、すぐさま台所に片付ける。
 ……これ以上置いておいたら、ツツジにも俺にも毒だ。

「……で、何しに来たんだ?」
「だから、暇だったから……」
「……本当にか?」
「…………うん」
「眼、泳いでるぞ?」
「…………」

 ふいっと顔を背けるツツジに、思わず大きなため息を漏らす。

「……言いたくないんだったら、無理には聞かないぞ」
「……そうして」

 布団に倒れこむツツジの背中が、ほんの僅かだが震えている。
 …………。

「『癒せ』」

 ツツジが淡い光に包まれる。

「……ありがと」

 くぐもった声が狭い家に寂しく響いた。
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