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―第百四十七話― スイーツ

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 控えめなノック音が狭い家に響く。

「はいはい、誰ですか?」

 重たいまぶたをこすりながら扉を開くと、案の定ジャスミンがいた。

「ね、ねえ、リア? 今日って、何か用事があったりとかする……?」
「は? ……いや、特にはない」
「……そう」

 ん? どうしたんだ、こいつは?
 いつもと様子が違い過ぎはしないか?

「あのー……さ、今からスイーツ食べ歩きとかしない? 最近、新しくできたお店が多かったりするから……」

 ごにょごにょと何か言い続けてるが、要するにスイーツ食べに行こうという誘いなわけだ。
 ……今日一日眠る以外の予定がなかったし、ちょうどいいか。

「オーケー。ちょっと着替えてくるわ」
「!! あ、うん、ありがと!!」

 衣装棚の中から適当な服を選び、さっと着替えを済ませる。
 ……一応、財布に金詰めとくか。

「それじゃ、行くか」
「うん!!」



 ……うっま。
 最初に食べに来たのは、新しく開店したらしいケーキ屋。
 程よい甘さで、俺の好みドストライクだ。

「……うまいな」
「ね」

 黙々とケーキを口に運び続ける。
 マジで美味いな。
 何口食べても飽きがこない。
 クリームの量が多いのも最高だ。
 スポンジもふわっふわで舌触りが非常にいい。
 ……これは、確実にリピーターになるな。



 ……さすがに腹が膨れてきた。
 もう十軒くらい言っただろうか。
 これだけ食うとな……。

「リア、あっちのお店はどう?」
「お前まじか」

 返事とかよりも先に、驚嘆の声が漏れた。

「いや、俺はもういいかな。もう腹がいっぱいなんだよ」
「あ、えと……。そう」
「…………。……あともう少しなら食えそうだけど、いくか?」
「えっ!? 良いの!?」
「ああ」

 あんなトーン落とされたら、行くしかねえだろ。
 ……これも全部計算のうち、とかないよな?


◆◆◆


 整えたベッドにごろんと倒れこむ。
 ……うまくいかなかったな……。
 本当は、もっといろいろなことをリアと話したかったのに、なぜだか上手く話せなかった。
 …………。

「はぁ……」

 布団に潜り込み、深くため息を吐く。
 ……あーだこーだ考えても仕方ないし、昼寝でもしよう。
 全身から力を抜き、目を閉じる。
 すると、何かに誘われるようにして私の意識は深い眠りへと落ちていった。
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