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―第百四十一話― 洞窟潜り
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真っ暗な洞窟の中をすたすたと歩き進める。
……まあ、真っ暗とは言っても能力で昼間と変わらないくらいはっきりと見えてるんだけど。
……もう、クエストを受注してから約半日ほどが経過しただろうか。
俺はなんと、たった一人でクエストを受注したのだ!
……ジャスミンからは、明日槍でも降るのではなどと失礼な物言いをされたが。
クエスト内容自体は、未開拓の洞窟の調査と魔物の退治だけだから、難易度もそこまで高くはない。
なんでも、強い魔物をあらかじめ消しておいて、初心者用の洞窟にしておきたいのだそうだ。
だから、今回は宝物を漁ったりもしてはいけないらしい。
まあ、元からするつもりないけど。
そんなことをしなくたって、俺には十分金があるからな!
「『切断』」
スッと手刀を振り、静かに魔物を倒す。
……だめだ、こんなのじゃ。
俺は、強くなるためにわざわざクエストを受けたのだから。
未開拓の洞窟であれば、強いボスがいる可能性だってある。
それを利用して、少しでも強くならねば……。
「『浄化』」
アンデッドか。
こんなのを相手する時間なんてないが、クエストの指示だからな……。
なるべく急いで倒していこう。
◆
……もうそろそろ中腹に差し掛かったくらいだろうか。
すでに洞窟に潜って一日は経過したはずだ。
能力があるので、睡眠をとる必要もなければ、食料も大量に用意してきたから問題ない。
……もっとペースを上げるか。
「『浄化』」
洞窟内は、やはりアンデッドモンスターが多いな。
ここから下に下がっていけば、また別種の魔物が出るのだろう。
……早くも面倒くさくなってきた。
◆
……魔力が濃いな。
この感じだと、最奥までもう少しといったところだろう。
洞窟の天井の高さもだんだんと高くなってきている。
……ということは、大型の魔物がいると考えたほうが良さそうだな。
「『切断』」
目の前に現れた数体のゴブリンを一瞬で始末する。
……違う、俺が求めているのは、もっとこう……!
どこからか、地鳴りのような咆哮が聞こえてくる。
それと同時に、重たい足音が響いてくる。
……距離は数十メートル離れているはずだ。
……この分だと、とっくに気付かれてたっぽいな。
――ゴルルルルル。
全身にびりびりするような威圧感を感じる。
……恐らくは、ここのボスを守るために作られたであろうモンスター。
「ヒュドラ……か」
幾つもの首をしならせ、こちらを威嚇してくる。
……はぁ。
「『移動』」
唐突に飛んできた毒液を能力で易々と回避する。
すると、背後から岩が溶けだす音が聞こえてきた。
……なるほど、これは喰らったらやばいな。
……でも。
「『細断』」
本来、ヒュドラというのは高レベル冒険者のパーティーで挑んでやっとの相手だ。
だが、そんなのは関係ない。
全ての首が重力に従って落ち、両断された胴体も左右に倒れた。
……ようやく最奥だ。
今までろくに冒険してないからいまいち分からないが、初心者には向かないレベルの深さじゃないか?
……まあ、今はクエストのクリアが最優先だ。
「邪魔するぞ」
重たい扉を無理矢理こじ開け、申し訳程度の挨拶をする。
「ようこそ、我がダンジョンへ!! そして、よくぞここまで辿り着いたな。だがしかし! 我の力の前では、貴様の様な冒険者など……」
「『爆』」
目の前の仰々しい鎧を着た魔物の横に、軽い爆発を起こす。
「口上は早く済ませてくれ。俺は今、気が立ってるんだ」
「…………。ま、まあよい。いざ尋常に、勝負……!?」
短剣を抜き、一瞬で間合いを詰める。
「悪いが、遊んでる時間もないんだ。やるなら本気で来い」
「……舐めおって……!!」
居合の形で抜かれた剣を、短剣で軽く受け流す。
「なっ……!?」
「『斬』」
すれ違いざまに能力を使い、鎧諸共、名も種族も知らぬダンジョンのボスを切り殺す。
「はぁ……」
思わずため息が出る。
俺は、もっと強くなくちゃいけない。
だからこそ、この洞窟では一度も魔力回復をせずに戦ったのだが……。
……思うように結果は得られなかったな。
これ以上留まる意味もないし、さっさとサンビルに帰って報告をしよう。
「『移動』」
……まあ、真っ暗とは言っても能力で昼間と変わらないくらいはっきりと見えてるんだけど。
……もう、クエストを受注してから約半日ほどが経過しただろうか。
俺はなんと、たった一人でクエストを受注したのだ!
……ジャスミンからは、明日槍でも降るのではなどと失礼な物言いをされたが。
クエスト内容自体は、未開拓の洞窟の調査と魔物の退治だけだから、難易度もそこまで高くはない。
なんでも、強い魔物をあらかじめ消しておいて、初心者用の洞窟にしておきたいのだそうだ。
だから、今回は宝物を漁ったりもしてはいけないらしい。
まあ、元からするつもりないけど。
そんなことをしなくたって、俺には十分金があるからな!
「『切断』」
スッと手刀を振り、静かに魔物を倒す。
……だめだ、こんなのじゃ。
俺は、強くなるためにわざわざクエストを受けたのだから。
未開拓の洞窟であれば、強いボスがいる可能性だってある。
それを利用して、少しでも強くならねば……。
「『浄化』」
アンデッドか。
こんなのを相手する時間なんてないが、クエストの指示だからな……。
なるべく急いで倒していこう。
◆
……もうそろそろ中腹に差し掛かったくらいだろうか。
すでに洞窟に潜って一日は経過したはずだ。
能力があるので、睡眠をとる必要もなければ、食料も大量に用意してきたから問題ない。
……もっとペースを上げるか。
「『浄化』」
洞窟内は、やはりアンデッドモンスターが多いな。
ここから下に下がっていけば、また別種の魔物が出るのだろう。
……早くも面倒くさくなってきた。
◆
……魔力が濃いな。
この感じだと、最奥までもう少しといったところだろう。
洞窟の天井の高さもだんだんと高くなってきている。
……ということは、大型の魔物がいると考えたほうが良さそうだな。
「『切断』」
目の前に現れた数体のゴブリンを一瞬で始末する。
……違う、俺が求めているのは、もっとこう……!
どこからか、地鳴りのような咆哮が聞こえてくる。
それと同時に、重たい足音が響いてくる。
……距離は数十メートル離れているはずだ。
……この分だと、とっくに気付かれてたっぽいな。
――ゴルルルルル。
全身にびりびりするような威圧感を感じる。
……恐らくは、ここのボスを守るために作られたであろうモンスター。
「ヒュドラ……か」
幾つもの首をしならせ、こちらを威嚇してくる。
……はぁ。
「『移動』」
唐突に飛んできた毒液を能力で易々と回避する。
すると、背後から岩が溶けだす音が聞こえてきた。
……なるほど、これは喰らったらやばいな。
……でも。
「『細断』」
本来、ヒュドラというのは高レベル冒険者のパーティーで挑んでやっとの相手だ。
だが、そんなのは関係ない。
全ての首が重力に従って落ち、両断された胴体も左右に倒れた。
……ようやく最奥だ。
今までろくに冒険してないからいまいち分からないが、初心者には向かないレベルの深さじゃないか?
……まあ、今はクエストのクリアが最優先だ。
「邪魔するぞ」
重たい扉を無理矢理こじ開け、申し訳程度の挨拶をする。
「ようこそ、我がダンジョンへ!! そして、よくぞここまで辿り着いたな。だがしかし! 我の力の前では、貴様の様な冒険者など……」
「『爆』」
目の前の仰々しい鎧を着た魔物の横に、軽い爆発を起こす。
「口上は早く済ませてくれ。俺は今、気が立ってるんだ」
「…………。ま、まあよい。いざ尋常に、勝負……!?」
短剣を抜き、一瞬で間合いを詰める。
「悪いが、遊んでる時間もないんだ。やるなら本気で来い」
「……舐めおって……!!」
居合の形で抜かれた剣を、短剣で軽く受け流す。
「なっ……!?」
「『斬』」
すれ違いざまに能力を使い、鎧諸共、名も種族も知らぬダンジョンのボスを切り殺す。
「はぁ……」
思わずため息が出る。
俺は、もっと強くなくちゃいけない。
だからこそ、この洞窟では一度も魔力回復をせずに戦ったのだが……。
……思うように結果は得られなかったな。
これ以上留まる意味もないし、さっさとサンビルに帰って報告をしよう。
「『移動』」
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