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―第百四十話― 奇跡
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魔物を倒し終え、町へ戻ろうとした瞬間。
文字に表せないほどの轟音が鳴り響き、直後、とてつもない光と熱があたりを襲った。
「『移動』!!」
すんでのところで街に転がり込み、ようやく状況を確認しようとする。
……いや、その必要もないか。
……サントリナの能力と、アルファルドの魔法がぶつかったのだろう。
また随分と派手だな……。
辺りが焦土と化し、俺の張った結界も破られている。
……土煙でサントリナの様子までは確認できないが、大丈夫なのだろうか。
「おい、リアトリス! 大丈夫か!?」
「ん? ああ、俺は別に平気だぜ? ……リーザ」
「もはや僕の名前の原形をとどめてないじゃないか!! ……でもまあ、冗談を言う余裕くらいはあるみたいだな」
「まあな。……でも、サントリナが心配だ。もうちょっと落ち着いたら、さっと見てくるよ」
「……そうか」
あいつのことだ、そう簡単にくたばっちゃいないとは思うが……。
……ああ、もう!!
「……すまん、やっぱ気になる。ジャスミンとツツジを頼むぞ。『移動』!!」
「あっ、ちょっ……」
◆
一寸先も見えないほどの土煙。
……これだと、安全確認も何もないな。
「『晴れろ』」
能力で土煙を晴らす。
……その直後。
「リア、トリ、ス、か……?」
どこからか、か細い声が聞こえてきた……!
「サントリナ……?」
大急ぎで声の方へ向かう。
「……そっ、か……」
頬に何かが伝うような感触がする。
…………。
「よく、頑張ったな」
目の前にいるのは、確かにサントリナだ。
……だが、両足はズタズタに裂け、全身にも酷い火傷を負っている。
……あれだけの攻撃の中心にいたのだから、当然と言えば当然なのかもしれないが……。
「……アル、ファルドは、どう、なった……?」
微かに唇を動かしながら、こちらに尋ねてくる。
「……死んでるよ。きれいさっぱり」
サントリナの少し先には、アルファルドの身に着けていた胸当てだけだ残っている。
「そう、か。……なら、よかっ、た……」
そこで安心しきったのか、サントリナの首が力なく地面に垂れた。
「……まだだ……!!」
サントリナの体に手を置き、全身全霊で魔力を練る。
……神でも誰でもいい。
今だけでもいいから、手を貸してくれ!!
「「《サントリナの体を治癒せよ》!!」」
全身から溢れ出す魔力とともに、能力を使う。
その時、奇跡が起きた。
サントリナの体に薄い魔力の膜が生まれ、それがゆっくりと浸透していく。
すると、少しづつ火傷が治りだし──
……自然と涙が溢れ出す。
まだ、助かるかもしれない!!
「あと少しの辛抱だからな、サントリナ! 『移動』!!」
サントリナを腕に抱え、溢れる涙を止めようともせず、能力を使う――
◆
その辺で買ってきた紙袋いっぱいのフルーツを抱え、サンビルの街を歩く。
目的地は、ここ最近毎日のように通っているあの場所だ。
◆
病室のドアを控えめにノックし、ゆっくりと扉を開く。
「邪魔するぞ」
「おお、リアトリス!! 今日も来てくれたのか!!」
病院で大声を出すなよ……。
「調子はどうだ? サントリナ」
「絶好調だ! というか、早くフルーツをくれ! ここの飯はまずくて仕方ないんだ」
「そんなことを大声で言うなよ……」
ベッドの横の机に紙袋を置く。
「……ありがとな、リアトリス」
「病院に差し入れくらい、普通持ってくだろ」
「そうじゃねえよ! ……あの時、お前の能力がなかったら、俺は確実に死んでいた。改めて礼を言わせてくれ!!」
「いいよ、水臭い。足までは直せなかったわけだし、俺だって、お前に命助けられてんだから」
「……分かった。でも、お前に心の底から感謝してるってことだけは忘れないでくれよ?」
「はいはい」
短剣でササッと皮をむき、サントリナに投げて渡す。
「サンキュ。あー、早く退院して―!! ……いや待てよ。このまま退院したら、山のような業務が……。でも、病院の飯は……」
「なに馬鹿なこと言ってんだ。早く退院して、皆に元気な姿でも見せてやれよ。……それと、職員のためにも早く退院してやれ。ここに来るたびに、お前の愚痴を聞かされるんだからな!?」
「へーい……」
もう食べ終わったのか、サントリナは俺に背を向けて窓の方をボーっと見つめる。
……あとは自分で食うだろうし、俺ももう帰るか。
「じゃ、俺もう帰るわ。お大事にな」
「おう。またな」
ゆったりとした足取りで、出口へ向かう。
「……ほんと、ありがとな」
「……しつこいっての、ばーか」
文字に表せないほどの轟音が鳴り響き、直後、とてつもない光と熱があたりを襲った。
「『移動』!!」
すんでのところで街に転がり込み、ようやく状況を確認しようとする。
……いや、その必要もないか。
……サントリナの能力と、アルファルドの魔法がぶつかったのだろう。
また随分と派手だな……。
辺りが焦土と化し、俺の張った結界も破られている。
……土煙でサントリナの様子までは確認できないが、大丈夫なのだろうか。
「おい、リアトリス! 大丈夫か!?」
「ん? ああ、俺は別に平気だぜ? ……リーザ」
「もはや僕の名前の原形をとどめてないじゃないか!! ……でもまあ、冗談を言う余裕くらいはあるみたいだな」
「まあな。……でも、サントリナが心配だ。もうちょっと落ち着いたら、さっと見てくるよ」
「……そうか」
あいつのことだ、そう簡単にくたばっちゃいないとは思うが……。
……ああ、もう!!
「……すまん、やっぱ気になる。ジャスミンとツツジを頼むぞ。『移動』!!」
「あっ、ちょっ……」
◆
一寸先も見えないほどの土煙。
……これだと、安全確認も何もないな。
「『晴れろ』」
能力で土煙を晴らす。
……その直後。
「リア、トリ、ス、か……?」
どこからか、か細い声が聞こえてきた……!
「サントリナ……?」
大急ぎで声の方へ向かう。
「……そっ、か……」
頬に何かが伝うような感触がする。
…………。
「よく、頑張ったな」
目の前にいるのは、確かにサントリナだ。
……だが、両足はズタズタに裂け、全身にも酷い火傷を負っている。
……あれだけの攻撃の中心にいたのだから、当然と言えば当然なのかもしれないが……。
「……アル、ファルドは、どう、なった……?」
微かに唇を動かしながら、こちらに尋ねてくる。
「……死んでるよ。きれいさっぱり」
サントリナの少し先には、アルファルドの身に着けていた胸当てだけだ残っている。
「そう、か。……なら、よかっ、た……」
そこで安心しきったのか、サントリナの首が力なく地面に垂れた。
「……まだだ……!!」
サントリナの体に手を置き、全身全霊で魔力を練る。
……神でも誰でもいい。
今だけでもいいから、手を貸してくれ!!
「「《サントリナの体を治癒せよ》!!」」
全身から溢れ出す魔力とともに、能力を使う。
その時、奇跡が起きた。
サントリナの体に薄い魔力の膜が生まれ、それがゆっくりと浸透していく。
すると、少しづつ火傷が治りだし──
……自然と涙が溢れ出す。
まだ、助かるかもしれない!!
「あと少しの辛抱だからな、サントリナ! 『移動』!!」
サントリナを腕に抱え、溢れる涙を止めようともせず、能力を使う――
◆
その辺で買ってきた紙袋いっぱいのフルーツを抱え、サンビルの街を歩く。
目的地は、ここ最近毎日のように通っているあの場所だ。
◆
病室のドアを控えめにノックし、ゆっくりと扉を開く。
「邪魔するぞ」
「おお、リアトリス!! 今日も来てくれたのか!!」
病院で大声を出すなよ……。
「調子はどうだ? サントリナ」
「絶好調だ! というか、早くフルーツをくれ! ここの飯はまずくて仕方ないんだ」
「そんなことを大声で言うなよ……」
ベッドの横の机に紙袋を置く。
「……ありがとな、リアトリス」
「病院に差し入れくらい、普通持ってくだろ」
「そうじゃねえよ! ……あの時、お前の能力がなかったら、俺は確実に死んでいた。改めて礼を言わせてくれ!!」
「いいよ、水臭い。足までは直せなかったわけだし、俺だって、お前に命助けられてんだから」
「……分かった。でも、お前に心の底から感謝してるってことだけは忘れないでくれよ?」
「はいはい」
短剣でササッと皮をむき、サントリナに投げて渡す。
「サンキュ。あー、早く退院して―!! ……いや待てよ。このまま退院したら、山のような業務が……。でも、病院の飯は……」
「なに馬鹿なこと言ってんだ。早く退院して、皆に元気な姿でも見せてやれよ。……それと、職員のためにも早く退院してやれ。ここに来るたびに、お前の愚痴を聞かされるんだからな!?」
「へーい……」
もう食べ終わったのか、サントリナは俺に背を向けて窓の方をボーっと見つめる。
……あとは自分で食うだろうし、俺ももう帰るか。
「じゃ、俺もう帰るわ。お大事にな」
「おう。またな」
ゆったりとした足取りで、出口へ向かう。
「……ほんと、ありがとな」
「……しつこいっての、ばーか」
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