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―第百三十五話― 消す

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 短剣を構え直しながら、アルファルドを睨みつける。
 こいつの能力は、ツツジと同じようなタイプだな。
 相手の能力を邪魔してくるような奴だろう。

「『鑑定』」

 ばれない程度に、能力を使う。
 ……くそっ、見えねえ……。
 ……どうしようかね……。
 能力込めて攻撃しても無傷、相手の能力も分からない。
 ……心の底から面倒くさい。

「……なあ、アルファルド。少し取引をしようじゃねえか」
「……ほう。言ってみろ」

「今すぐに撤退してくれ」

「無理だ」
「……チッ」

 即答された。
 苦肉の策だったってのに。

「な、なあ、もうちょっとだけ考えてくんない?」
「……ならば、こちらからの条件を飲め」
「な、なんでしょう……」

「この街の人間を全員差し出せ」

「無理に決まってるだろ馬鹿かお前」
「交渉決裂だな」

 ……よし、時間稼ぎはこんなもんかな。

「なあ、アルファルド。あと一つだけ聞いてもいいか?」
「……まあ、いいだろう。貴様の命も残り僅かなのだからな」
「……ありがとうな」

 短剣の構えを解き、ゆっくりとアルファルドの方へ歩く。
 ……段々と魔力を高めながら。

「……なあ、アルファルドさんよお。あんたの能力について、教えてくれないかなあ?」
「……もう気付いておるだろう?」
「まあな」

 今さっき確信しただけだがな。

「あんたの能力は『魔力を消す能力』だ」
「……よくぞ気付いたな。褒美でもやろうか?」

 能力だって、魔力で構成されているのだ。
 それを奪われれば、そりゃあ効かないよな。
 俺がさっき練った魔力だって、もうなくなってやがる。

「褒美なら、あんたを殺す権利でも貰おうか」
「欲張り過ぎだ。……まあ、能力の正体に気付いたところで、だがな」

 ……対策のしようがない能力だからな。
 こいつ、マジで今まで戦った中でもダントツで強いかもしれない。

「……はぁ、分かった。降参だ、降参!!」
「…………」
「勝ち目ねえよ、そんな能力。俺の能力ありきの戦い方じゃ、殺すなんて不可能だ!!」
「……貴様、本気で言ってるのか?」
「そうだけど?」
「……そうか」
「……!! 『移動』!!」

 アルファルドの手から炎が飛び出す。

「先ほども言ったであろう!! 戦う気のない物には生きる価値などないのだ!!」

 洗浄中に響くような声で、アルファルドは叫んだ。

「……うるせえよ、じじい」
「貴様、そこまで我を愚弄するか!!」
「ちげえよ」

 短剣を鞘にしまい、地面を踏みしめる。

「簡単な煽りに引っかかりやがって、ばーか」

 地を蹴り、どんどんアルファルドとの距離を詰めていく。
 ……よし、間合いに入った……!

「『切断』!!」
「効かぬわ!!」

 振った短剣を片手で払いのけられる。
 ……計算通り!

「『威力上昇』!!」

 左こぶしを握り締め、思い切り腹を殴り上げる。

「がはっ……!!」
「いくら魔力を消せるとはいえ、これだけの魔力を触る直前に込めれば、多少は残るんだろ!?」
「…………」

 ……ダメージは与えられるが、これで倒すのは無理だな。
 魔力がいくらあっても足らねえ。
 回復だって、今度はそう易々とさせてくれないだろう。

「……大分温まってきたな」
「あ? なんか言ったか……!?」

 ゆっくりと立ち上がったアルファルドが、物凄い速さで首を掴んできた。

「ぐッ……!!」
「声を出せない状態にすれば、貴様の攻略など容易い」

 くそっ、こいつ……!!

「とどめだ。貴様にはかつての勇者の影を見たのだがな……。残念だ」

 腕に魔力が集まってきている。
 ……このまま燃やされるのか。
 ……最期に一矢報いるくらいは……!!

「さらばだ」

 ギっと睨み付ける俺に、アルファルドは無情な声でそう告げてきた。
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