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―第百二十六話― 反転

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 口から血がぽたぽたと零れ落ちる。
 ……なにが起こった……!?
 全身に強烈な痛みが走っている。

「……これは、僕の勝ちでいいかな?」
「……ごふっ……!!」

 地面がどんどん近づいていく。
 まずい、意識が……。
 …………。

「『移動』」

 地面すれすれで能力を発動し、すぐさま体勢を立て直す。

「『回復』」

 ……よし、傷も意識も治った。

「悪いな、俺の能力は何でもありなんだ」
「……さすがリアトリス」

 ……さて、どうしようか。
 どんな芸当か知らないが、ローズの傷も完全に治ってる。
 ……こいつの能力の正体がいまいち掴めないな。

「ほら、俺もお前も傷一つない状態なんだ。まだ続けようぜ」
「……オーケー」

 ……もういい。
 能力の事とか考えるのめんどいし、力でごり押そう。

「『移動』」

 無駄に小細工を弄するのよりも、こっちのほうが良い。

「『威力上昇』、『殴打』」

 ……また魔力を感じる……!!

「『リバース』!!」

 …………。
 ……俺は、剣を持ってたローズの左腕に思い切り拳を振るった。

「……痛えな……」

 だというのに、俺の左腕が吹き飛んだ。
 ……なるほどな。

「どうだ? 僕の能力は」
「……大方理解できた」
「……まじで?」
「ああ」

 今のでわかった。

 こいつの能力は、反転させる能力だ。

 場所、ダメージ、攻撃……。
 ずっとローズは、反転をさせていたのだろう。

「まあ、能力を理解されても、そう簡単にやられたりしないがな」
「……そうだろうなあ……」
「……なんだ、ずいぶんと素直じゃないか」
「お前はマジで強いよ。……すげえよ、本当に」
「…………」

 ……さて。

「『移動』。……じゃ、お話はこの辺で」

 さっと後ろに回り込み、拳を握る。
 そして、ローズがノーガードで能力を準備した瞬間。

「お前はやっぱ、調子乗りやすいな。……だから俺に負けるんだよ」
「……は!?」

 ふわりと腹に柔らかな感触を感じる。
 まあ、拳をやさーしく腹に当てただけだからな。

「はい、俺の勝ち。……『威力上昇』」
「ごふっ!!」

 やっぱり、こいつの能力は一撃一撃認識してから発動しなくてはいけないらしい。
 二発目のパンチは、俺に返ってこなかった。
 まあ、普段はフェイントとか喰らわないんだろうけど、俺と会話してる間に少し警戒心が落ちてたからな。

「……『リバー」
「『気絶』」

 ……はい、終わり。
 能力自体は強いが、ローズの意思に左右されるところが大きいな。
 ……さて。

「『起きろ』」
「……。……負けたのか……?」
「ああ」
「……そうか」
「……ほら、さっさと起き上がれ」
「あ、ああ……」

 手を伸ばし、ローズを引っ張り上げる。

「……なあ、なんで僕と手合わせしてくれたんだ?」
「言ったろ? 現実を教えるって。……ジャスミンは、もう少しで俺より強くなるぞ」
「……まじで?」
「まじだ」

 今でも、能力で来られたら、いくら俺でも勝てないだろう。
 というか、最近のジャスミンの成長が凄まじ過ぎるんだよなあ……。

「おい、さっさとついてこいよ」
「……どこに行く気だよ」
「ギルド」
「は?」

「お前、俺の仲間になるんだろ? 手続きをちゃちゃっと終わらせようぜ」

「……リアトリス……!?」
「ほら、早く来い」
「……なあ、リアトリス」
「ん?」

「お前って、ツンデレだろ?」

 ……?

「なにがどうしてそんな結論に至ったんだよお前はあああああ!?」
「だって、なんだかんだ言いながら僕を仲間にしてくれてるし、さっきの手合わせの時も、ジャスミンの名前を出した途端に……」

「ちっげえよ!! 仲間にしたのは普通にお前を強いと思ったからだ! 手合わせは、お前の強さを見たかったのと現実を教えるっていうのだし、べ、別にジャスミンの名前が出たからじゃねえよ!!」

「お前、焦りすぎだろ」
「焦ってねえよ!! ……ったく、無駄口叩く暇あったらついて来いや!!」
「はいはい」

 変なにやけ顔浮かべやがって!

「てか、ジャスミンはリアトリスには渡さないからな?」
「知らねえよ、勝手にしろ!!」
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