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―第百二十二話― 注文

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 ……ひっさびさにここ来るな……。

「ごめんくださーい」
「おお、リアトリスか! 久々だな!」

 ……うるせえ!
 店主の馬鹿みたいに大きな声が武器屋の中に響き渡る。

「それで、リアトリス。何しに来たんだ?」
「武器買いに来たんだよ。こないだの戦いで無くしちゃったからな」

 恥ずかしながら、俺はツツジにとられた武器をそのまま洞窟においてきてしまったのだ。
 ツツジと一緒に探しに行ったのだが、その頃には洞窟内には何も残っていなかった。

「お前……、俺が精魂込めて打った武器をなくしたってのか!?」
「しょうがねえだろ! 事情があるんだ、事情が!!」
「……ったく、あれはな、俺の作った中でも最高傑作の代物なんだぜ!?」
「……そんなにいいものだったのか?」
「そうだよ! 使っててわかんなかったのか!?」

 言われてみれば、俺がいくら魔力を流しても、攻撃を受けても、一切刃毀はこぼれしてなかったな……。

「それはごめんけどさあ……」
「……分かったよ。また俺が武器を打ってやる。前はお前の戦闘スタイルも何もわかってない状態だったからな。今度は、お前にあった超一級品を作ってやるよ!!」
「お願いします!」



 それから俺は、自分の戦闘スタイルやその他能力のことまで、色々なことを話した。
 そうして、だんだんと新しい武器の設計が進んでいき……。

「サンキューな! 金はお前の言う分だけ払うよ」
「おう。じゃ、数週間待っててくれ」
「ああ。マジありがとな」



 あー、武器が手に入りそうで良かった。
 武器が無くても戦えることには戦えるが、この間みたいに能力が使えなくなった時には不便だからな。

 ……にしても、魔力が戻って本当に良かった。
 何か知らんが、教会でお祈りしたときに一気に回復したんだよな。
 今まで神様なんて、一切信じてこなかったけど、いっそ入信してしまおうか。
 ……その時には、リリーでも信心してやろう。
 知ってるやつ相手なら、何かと気が楽そうだ。

 ……というか、女神と知り合いって、冷静に考えるとやばいな。
 そもそも、ルビーの人脈がどうなっているんだという話ではあるが。

「……よし、とうちゃーく」

 そんなくだらない考え事をしているうちに、俺は目的地にたどり着いた。

「ここもここで久しぶりだな……」

 俺が来たのは、サントリナの家の庭にある訓練場だ。
 昔は、サントリナの生徒たちがここで鍛えていたわけだが、今はもう誰も使っていない。
 ……いや、いくつか新しい傷もあるっぽいし、サントリナは今でも使ってそうだな。

「えーっと、俺が使ってたのは―っと」

 立てかけてある武器の中から、槍、剣、短剣、弓を選び出す。
 俺の体に合ったサイズのはずだ。

 ……久々に鍛えますかね!!



「……はあ、終わり」

 汗を拭い、武器を元の場所に片付ける。
 ……腕が大分落ちてたな。
 槍も昔ほど早く動かなかったし、弓も全然当たらなかった。
 サントリナの目を盗んでは、訓練をしてたんだけどな……。
 ……昔取った杵柄きねづか的な感じで動けないかと思ってたんだけど。

 剣術も、ジャスミンの方がもう上だろう。
 俺なんかより、よっぽど速く、よっぽど強く振れている。

 短剣に関しても、ツツジの方が上だな。
 あれはやばい。
 まじでやばい。
 俺の知ってる限り、短剣の扱いはあいつが一番上手だ。

 ……俺も鍛え直しをするか。

 あいつらに負けないように。
 誰にも負けないように。
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