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―第百八話― 失敗作
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互いの口から放たれる、大量の魔力。
その直後、凄まじい炸裂音とともに魔力同士がぶつかり──
「──ま、こんなもんだよな」
ツツジの真後ろで爆発が発生する。
それに伴い、ツツジの体は爆風に力なく吹き飛ばされた。
「がはっ……!!」
見れば、ツツジは大量に吐血していた。
「どうだ、俺の能力の味は?」
……まだ起き上がれなさそうだな。
まあ、俺の能力もそこそこに負荷の大きい能力だしな。
普段は自分の体内に組んである魔方陣なんかで負荷を軽減してるから、最小限の被害で済ませられている。
あとは、元々の魔力量の差もあるだろうな。
「さて、と……」
ツツジの体を無理矢理起こす。
「おーい、まだ意識あるか?」
「……な、舐め……ないで……」
……そうか。
「『鑑定』!!」
「……な、なにしてるの……?」
……やっぱ、気のせいじゃなかったか……。
「『気絶しろ』!!」
……よし。
完全に意識を失ったことを確認し、俺はツツジの体を持ち上げ。
「おい、見てんだろ? どこの誰か知らねえが、うちのパーティーメンバーにちょっかい掛けやがって」
ツツジの額に浮かんでいる紋様を見据え、脅すような口調で問いかける。
最初に鑑定をしたときに、偶然見つけてしまったのだ。
……ったく、趣味の悪い奴もいるもんだ。
「なあ、俺とお前で力比べでもしようじゃないか。いいよな? ん? ……それに、紋様に何回か実験を行ったが、大量の魔力を流し込めば、こいつは破壊できるんだろ? だったらよ……!」
ツツジを持つ腕に、思いっきり魔力を込める。
「『俺とお前。どっちの方が魔力が大きいか、勝負だ』!!」
その言葉を合図に、紋様から抵抗するかのような魔力が大量にあふれてきた。
それに負けじと、俺も俺で持っている限りの魔力をツツジに流し続ける。
……今のところは互角といったところかな。
魔力同士がぶつかり合い、相殺し。
そんな綱引きのような状態が続くだろう。
……そんなことを考えていた、次の瞬間。
◆
「──どうも。今の貴方と会うのは初めてでしたよね?」
……!?
こいつ……!!
急に目の前が暗くなったかと思えば、俺はおどろおどろしい部屋に立っていた。
そして、その部屋の中心にいたのは、俺が過去に戻ったときにツツジを攫った宣教師の格好をしたあの男。
「……何の用だ?」
「いやなに、貴方が私の物にちょっかいを出していたのでね。少し話をしようかと思いまして」
「……物って、ツツジの事か?」
「それ以外に何がありましょうか?」
「『切断』」
手刀を振るい、斬撃を飛ばす。
……が、片腕で弾かれてしまった。
「ちぃっ……!」
「ここは私の作った空間ですので」
「……あっそ」
「……そういえば、自己紹介を忘れていました。私、魔王軍最高幹部のセルバンテスと申します。以後、お見知りおきを」
「二度と会うつもりねえから、安心しろ」
「いえ、貴方が会いたくなくても、いつか必ず会うことになりますよ。フフフ……」
何言ってんだ、こいつ。
「それよりも、私が折角色々してあげた物を奪おうだなんて……。酷いとは思いませんか?」
「……色々?」
「ツツジが言っていたでしょう? 彼女を半分アンデッドに開発したの、私なんですよ。まあ、他のにも幾つか施しましたが。……そうそう、貴方が倒してしまった、あのメイサにもやりましたね! 彼もそこそこ自信作だったのですが……。ま、ツツジには及びませんがね」
「……で、いつまでべらべらとおしゃべりするつもいだ?」
「私はいつまででもしていいんですが……。……そうですね。ここはひとつ、お願いがございまして」
「……なんだ?」
セルバンテスは不気味な笑みを浮かべ。
「近々、貴方の街へ大量の魔物を贈る予定ですので、そいつらを全力で叩きのめして頂けませんか?」
「……は?」
まじで何を言っているんだ、こいつは。
「私、実験というものが何よりも好きでしてねえ。貴方のようないい被検体がいると、ぞくぞくしちゃうんですよ」
「…………」
「それで、やって頂けますか? もし引き受けてくださったら、ツツジを引き渡しましょう」
「……良いぜ。というか、サンビルを襲うような奴には、最初から容赦しねえし」
「ありがとうございます。……いやあ、私の方でも、あの失敗作の処分をどうしようか悩んでいたんですよ。親である私にさえ歯向かうのですから」
「は?」
「ツツジは、能力と種族の埋め込みだけは上手く行ったのに、思考回路をいじるほうで失敗して……」
「てめえ、それ以上口を開くな。殺すぞ」
「……そうですか。出来ないのは分かっていますが、とりあえずは退散させていただきましょうか。それでは、またいつか」
その直後、凄まじい炸裂音とともに魔力同士がぶつかり──
「──ま、こんなもんだよな」
ツツジの真後ろで爆発が発生する。
それに伴い、ツツジの体は爆風に力なく吹き飛ばされた。
「がはっ……!!」
見れば、ツツジは大量に吐血していた。
「どうだ、俺の能力の味は?」
……まだ起き上がれなさそうだな。
まあ、俺の能力もそこそこに負荷の大きい能力だしな。
普段は自分の体内に組んである魔方陣なんかで負荷を軽減してるから、最小限の被害で済ませられている。
あとは、元々の魔力量の差もあるだろうな。
「さて、と……」
ツツジの体を無理矢理起こす。
「おーい、まだ意識あるか?」
「……な、舐め……ないで……」
……そうか。
「『鑑定』!!」
「……な、なにしてるの……?」
……やっぱ、気のせいじゃなかったか……。
「『気絶しろ』!!」
……よし。
完全に意識を失ったことを確認し、俺はツツジの体を持ち上げ。
「おい、見てんだろ? どこの誰か知らねえが、うちのパーティーメンバーにちょっかい掛けやがって」
ツツジの額に浮かんでいる紋様を見据え、脅すような口調で問いかける。
最初に鑑定をしたときに、偶然見つけてしまったのだ。
……ったく、趣味の悪い奴もいるもんだ。
「なあ、俺とお前で力比べでもしようじゃないか。いいよな? ん? ……それに、紋様に何回か実験を行ったが、大量の魔力を流し込めば、こいつは破壊できるんだろ? だったらよ……!」
ツツジを持つ腕に、思いっきり魔力を込める。
「『俺とお前。どっちの方が魔力が大きいか、勝負だ』!!」
その言葉を合図に、紋様から抵抗するかのような魔力が大量にあふれてきた。
それに負けじと、俺も俺で持っている限りの魔力をツツジに流し続ける。
……今のところは互角といったところかな。
魔力同士がぶつかり合い、相殺し。
そんな綱引きのような状態が続くだろう。
……そんなことを考えていた、次の瞬間。
◆
「──どうも。今の貴方と会うのは初めてでしたよね?」
……!?
こいつ……!!
急に目の前が暗くなったかと思えば、俺はおどろおどろしい部屋に立っていた。
そして、その部屋の中心にいたのは、俺が過去に戻ったときにツツジを攫った宣教師の格好をしたあの男。
「……何の用だ?」
「いやなに、貴方が私の物にちょっかいを出していたのでね。少し話をしようかと思いまして」
「……物って、ツツジの事か?」
「それ以外に何がありましょうか?」
「『切断』」
手刀を振るい、斬撃を飛ばす。
……が、片腕で弾かれてしまった。
「ちぃっ……!」
「ここは私の作った空間ですので」
「……あっそ」
「……そういえば、自己紹介を忘れていました。私、魔王軍最高幹部のセルバンテスと申します。以後、お見知りおきを」
「二度と会うつもりねえから、安心しろ」
「いえ、貴方が会いたくなくても、いつか必ず会うことになりますよ。フフフ……」
何言ってんだ、こいつ。
「それよりも、私が折角色々してあげた物を奪おうだなんて……。酷いとは思いませんか?」
「……色々?」
「ツツジが言っていたでしょう? 彼女を半分アンデッドに開発したの、私なんですよ。まあ、他のにも幾つか施しましたが。……そうそう、貴方が倒してしまった、あのメイサにもやりましたね! 彼もそこそこ自信作だったのですが……。ま、ツツジには及びませんがね」
「……で、いつまでべらべらとおしゃべりするつもいだ?」
「私はいつまででもしていいんですが……。……そうですね。ここはひとつ、お願いがございまして」
「……なんだ?」
セルバンテスは不気味な笑みを浮かべ。
「近々、貴方の街へ大量の魔物を贈る予定ですので、そいつらを全力で叩きのめして頂けませんか?」
「……は?」
まじで何を言っているんだ、こいつは。
「私、実験というものが何よりも好きでしてねえ。貴方のようないい被検体がいると、ぞくぞくしちゃうんですよ」
「…………」
「それで、やって頂けますか? もし引き受けてくださったら、ツツジを引き渡しましょう」
「……良いぜ。というか、サンビルを襲うような奴には、最初から容赦しねえし」
「ありがとうございます。……いやあ、私の方でも、あの失敗作の処分をどうしようか悩んでいたんですよ。親である私にさえ歯向かうのですから」
「は?」
「ツツジは、能力と種族の埋め込みだけは上手く行ったのに、思考回路をいじるほうで失敗して……」
「てめえ、それ以上口を開くな。殺すぞ」
「……そうですか。出来ないのは分かっていますが、とりあえずは退散させていただきましょうか。それでは、またいつか」
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