92 / 234
―第九十二話― 本音
しおりを挟む
……大切な話……?
「……どうしたの?」
「……………………俺は」
ぐっと何かに耐えるようにしながら。
「俺は、お前が好きだ」
……………………。
…………え?
「お前の本心を聞かせてくれないか? 俺は、心の底から。仲間としてじゃなくて、異性として、お前のことが好きなんだ……」
……頭が追い付かない。
リアが、何を言っているのか。
ほんとうに、わからない。
……それでも、なんとか思考をまとめようとする。
リアが私を好きって……。
それなら、私はどうなんだ?
私は、リアのことが好きなのだろうか。
分からない。
考えたこともない。
……いや、なんとなくだけだが、考えていたのかもしれない。
……私は。
…………私は。
「…………リア、私は……」
口から浅く息が零れる。
それと同時に、胸元がぐっと熱くなる。
「ごめんね、ジャスミンちゃん」
口の端からぽたぽたと血が流れていく。
「ごはっ……!!」
よろけながら胸元を見ると、突然飛び込んできたリア……いや、ツツジのナイフが深々と刺さっていた。
「はあー、変装スキルって、結構疲れるのよねー」
「つ、ツツジ……!?」
何が起こったの……!?
……いや、そんなことを考える暇はない。
まずは、ツツジを殺してからね。
もう、ツツジに対していらない情を持ってはいけない。
そうじゃないと、リアやここにいる人たちにまでも危害が及んでしまう。
……剣は……、部屋の反対側か。
「無駄な抵抗なんて……考えないほうが良いわよ? 私がその気になれば、いつでもナイフから魔力を送り込んで、前のお兄ちゃんみたいに暴れさせられるんだから」
「……くっ……!」
剣を取りに行けるような時間はくれなさそうね。
……なら、どうする……?
……魔法で行くしかないわよね。
でも、ルビーさんは使うなって言ってた気がする。
……背に腹は代えられない……!
ツツジが油断した瞬間に、全力でたたきこめば……。
「まったく、あの程度の色仕掛けに引っかかっちゃうって、ジャスミンちゃんチョロ過ぎじゃない?」
「…………」
「まあ、安心して。あなたが変な気を起こさない限りは、私たちもお兄ちゃん達には手をださないから」
「……」
「さて、そろそろ部下たちが来る頃ね……」
……後ろを向いた。
今がチャンス……!!
「『ライトニ」
「抵抗しないでって言ったじゃん」
……くそっ……!
ナイフから大量の魔力が流れ込んでくる……。
それに伴い、だんだんと意識が薄れて……。
「大丈夫。まだ暴走なんてさせないから。もう少しだけ、利用価値もあるしね」
その言葉を聞きながら、私は重力に従うようにして床に倒れた――
◆◆◆
「ツツジ様」
「あら、案外早く終わったわね」
扉の方を見ると、全身痣だらけの状態で気絶しているルドベキアが部下の魔物に引っ張られていた。
「抵抗されてしまいまして、二体ほど殺されてしまいましたが、その段階で魔力切れを起こしたようで……」
「ふーん……」
こんなどこの馬の骨かも分からないような男になんて、興味が湧かない。
……そんなことよりも、だ。
「お兄ちゃんは? お兄ちゃんがどこにいるのかは調べたの?」
「はい、既に」
「ありがと」
……フフッ。
ようやく、計画が上手くいった。
もう、あとほんの少し。
ほんの少しで、お兄ちゃんが手に入る……!!
「待っててね、お兄ちゃん……!」
月光に照らされながら、ぼそりとつぶやいた。
「……どうしたの?」
「……………………俺は」
ぐっと何かに耐えるようにしながら。
「俺は、お前が好きだ」
……………………。
…………え?
「お前の本心を聞かせてくれないか? 俺は、心の底から。仲間としてじゃなくて、異性として、お前のことが好きなんだ……」
……頭が追い付かない。
リアが、何を言っているのか。
ほんとうに、わからない。
……それでも、なんとか思考をまとめようとする。
リアが私を好きって……。
それなら、私はどうなんだ?
私は、リアのことが好きなのだろうか。
分からない。
考えたこともない。
……いや、なんとなくだけだが、考えていたのかもしれない。
……私は。
…………私は。
「…………リア、私は……」
口から浅く息が零れる。
それと同時に、胸元がぐっと熱くなる。
「ごめんね、ジャスミンちゃん」
口の端からぽたぽたと血が流れていく。
「ごはっ……!!」
よろけながら胸元を見ると、突然飛び込んできたリア……いや、ツツジのナイフが深々と刺さっていた。
「はあー、変装スキルって、結構疲れるのよねー」
「つ、ツツジ……!?」
何が起こったの……!?
……いや、そんなことを考える暇はない。
まずは、ツツジを殺してからね。
もう、ツツジに対していらない情を持ってはいけない。
そうじゃないと、リアやここにいる人たちにまでも危害が及んでしまう。
……剣は……、部屋の反対側か。
「無駄な抵抗なんて……考えないほうが良いわよ? 私がその気になれば、いつでもナイフから魔力を送り込んで、前のお兄ちゃんみたいに暴れさせられるんだから」
「……くっ……!」
剣を取りに行けるような時間はくれなさそうね。
……なら、どうする……?
……魔法で行くしかないわよね。
でも、ルビーさんは使うなって言ってた気がする。
……背に腹は代えられない……!
ツツジが油断した瞬間に、全力でたたきこめば……。
「まったく、あの程度の色仕掛けに引っかかっちゃうって、ジャスミンちゃんチョロ過ぎじゃない?」
「…………」
「まあ、安心して。あなたが変な気を起こさない限りは、私たちもお兄ちゃん達には手をださないから」
「……」
「さて、そろそろ部下たちが来る頃ね……」
……後ろを向いた。
今がチャンス……!!
「『ライトニ」
「抵抗しないでって言ったじゃん」
……くそっ……!
ナイフから大量の魔力が流れ込んでくる……。
それに伴い、だんだんと意識が薄れて……。
「大丈夫。まだ暴走なんてさせないから。もう少しだけ、利用価値もあるしね」
その言葉を聞きながら、私は重力に従うようにして床に倒れた――
◆◆◆
「ツツジ様」
「あら、案外早く終わったわね」
扉の方を見ると、全身痣だらけの状態で気絶しているルドベキアが部下の魔物に引っ張られていた。
「抵抗されてしまいまして、二体ほど殺されてしまいましたが、その段階で魔力切れを起こしたようで……」
「ふーん……」
こんなどこの馬の骨かも分からないような男になんて、興味が湧かない。
……そんなことよりも、だ。
「お兄ちゃんは? お兄ちゃんがどこにいるのかは調べたの?」
「はい、既に」
「ありがと」
……フフッ。
ようやく、計画が上手くいった。
もう、あとほんの少し。
ほんの少しで、お兄ちゃんが手に入る……!!
「待っててね、お兄ちゃん……!」
月光に照らされながら、ぼそりとつぶやいた。
8
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる