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―第九十二話― 本音

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 ……大切な話……?

「……どうしたの?」
「……………………俺は」

 ぐっと何かに耐えるようにしながら。

「俺は、お前が好きだ」

 ……………………。
 …………え?

「お前の本心を聞かせてくれないか? 俺は、心の底から。仲間としてじゃなくて、異性として、お前のことが好きなんだ……」

 ……頭が追い付かない。
 リアが、何を言っているのか。
 ほんとうに、わからない。
 ……それでも、なんとか思考をまとめようとする。
 リアが私を好きって……。
 それなら、私はどうなんだ?

 私は、リアのことが好きなのだろうか。

 分からない。
 考えたこともない。

 ……いや、なんとなくだけだが、考えていたのかもしれない。

 ……私は。
 …………私は。

「…………リア、私は……」

 口から浅く息が零れる。
 それと同時に、胸元がぐっと熱くなる。



「ごめんね、ジャスミンちゃん」



 口の端からぽたぽたと血が流れていく。

「ごはっ……!!」

 よろけながら胸元を見ると、突然飛び込んできたリア……いや、ツツジ・・・のナイフが深々と刺さっていた。

「はあー、変装スキルって、結構疲れるのよねー」
「つ、ツツジ……!?」

 何が起こったの……!?
 ……いや、そんなことを考える暇はない。
 まずは、ツツジを殺して・・・からね。

 もう、ツツジに対していらない情を持ってはいけない。
 そうじゃないと、リアやここにいる人たちにまでも危害が及んでしまう。
 ……剣は……、部屋の反対側か。

「無駄な抵抗なんて……考えないほうが良いわよ? 私がその気になれば、いつでもナイフから魔力を送り込んで、前のお兄ちゃんみたいに暴れさせられるんだから」
「……くっ……!」

 剣を取りに行けるような時間はくれなさそうね。
 ……なら、どうする……?

 ……魔法で行くしかないわよね。
 でも、ルビーさんは使うなって言ってた気がする。
 ……背に腹は代えられない……!
 ツツジが油断した瞬間に、全力でたたきこめば……。

「まったく、あの程度の色仕掛けに引っかかっちゃうって、ジャスミンちゃんチョロ過ぎじゃない?」
「…………」
「まあ、安心して。あなたが変な気を起こさない限りは、私たちもお兄ちゃん達には手をださないから」
「……」
「さて、そろそろ部下たちが来る頃ね……」

 ……後ろを向いた。
 今がチャンス……!!

「『ライトニ」
「抵抗しないでって言ったじゃん」

 ……くそっ……!
 ナイフから大量の魔力が流れ込んでくる……。
 それに伴い、だんだんと意識が薄れて……。

「大丈夫。まだ・・暴走なんてさせないから。もう少しだけ、利用価値もあるしね」

 その言葉を聞きながら、私は重力に従うようにして床に倒れた――


◆◆◆


「ツツジ様」
「あら、案外早く終わったわね」

 扉の方を見ると、全身痣だらけの状態で気絶しているルドベキアが部下の魔物に引っ張られていた。

「抵抗されてしまいまして、二体ほど殺されてしまいましたが、その段階で魔力切れを起こしたようで……」
「ふーん……」

 こんなどこの馬の骨かも分からないような男になんて、興味が湧かない。
 ……そんなことよりも、だ。

「お兄ちゃんは? お兄ちゃんがどこにいるのかは調べたの?」
「はい、既に」
「ありがと」

 ……フフッ。
 ようやく、計画が上手くいった。
 もう、あとほんの少し。
 ほんの少しで、お兄ちゃんが手に入る……!!

「待っててね、お兄ちゃん……!」

 月光に照らされながら、ぼそりとつぶやいた。
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