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―第八十九話― 昔話
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……綺麗だな。
夜空の星を見ていると、そんな感情が浮かび上がってきた。
魔物たちを退治した後、ジャスミンの希望でアマリリスたちの家に一晩だけ厄介になることになった。
……まあ、サンビルに帰ったらピザ奢ってもらう約束したしな。
「あ、流れ星」
頭上にきらりと一筋の光が走った。
「……懐かしい」
遥か昔の記憶だが、母親と流星群を見に行ったことがある。
あの時はまだ母も病気にかかっておらず、二人で一緒に明け方まで夜空を眺め続けたはずだ。
…………。
「……よし、着いた」
感慨に浸っていられるのはここまでだ。
俺は、調査をしにこんな夜中まで起きていたのだから。
「『鑑定』」
…………。
……はぁ。
俺が調べたのは、さっき殺した魔物たちの死体なのだが……。
「やっぱりあったな」
その死体全てから、紋様が見えた。
これはやっぱり、ツツジが一枚噛んでそうだな。
それなら、結界の件も納得がいく。
……ん?
いや、ちょっと待てよ……。
この紋様、前のと形が違う……!?
よくよく見れば、今までのとまるっきり形が違う。
……どういうことだ?
命令の系統が変わっていないのであれば、形を変える必要なんてまるで無い。
だというのに……。
……よし。
「寝よう」
こんな面倒な事、俺が考える必要なんてないのだ。
サントリナにでも適当に報告しておいて、あとはそっちに任せよう。
「……眠れないのですか?」
!?
「……ああ、ベゴニアさんでしたか……。びっくりしましたよ……」
割とまじで心臓止まるかと思った。
「すみません。リアトリスさんの姿が見えなかったので、どこかに行かれたのかと思って……」
「いや、ちょっと考え事しに行っただけですよ」
うん、嘘は言ってない。
あんまりここの人たちに無駄な悩みを増やしてもいけないしな。
「……あの、リアトリスさん……?」
「はい?」
「……本当に父親のことを何も知らないんですか?」」
「はい。……まあ、母からどこかに行ったとだけ告げられましたけど」
「そう……ですか……」
あんな子供の時に死んだことを伝えるなんてこともしないだろうしな。
「俺からも一ついいですか?」
俺は、ずっと気になっていた質問を口に出した。
「ベゴニアさんって、父とどんな関りがあったんですか?」
「…………」
その質問にベゴニアさんは、少し嬉しそうな、それでいて寂しそうな表情を浮かべ。
「あいつとは、冒険者仲間だったんです」
「……!?」
冒険者仲間!?
……ってことは、父親も冒険者をやってたのか!?
そういえば、戦闘スタイルがうんたらとか言ってたな……。
「まあ、もうかなり昔の話ですけどね。それはもう、強いお方でしたよ? ……それこそ、今のリアトリスさんに匹敵……、いや、それ以上かもしれません」
……まじかよ。
俺もかなり強い方だと思うんだけどな……。
というか、そんな強い人なら、俺の耳に名前くらいは入ったことがあるかもしれないな。
「……なんか、父と同じ職業に就いたって、その……」
「感慨深い、とかですか?」
「……はい」
俺が冒険者になったのは別な理由だが、それでも……。
「てか、俺、ベゴニアさんとサントリナの関係もいまいち知らないんですよね」
「えっ、そうなんですか!? ……あとであの恩知らずには説教の手紙でも送っておきましょうかね」
あ、サントリナ、ご愁傷様……。
「サントリナがまだ見習いのペーペーだったころに、何度か修行をつけてあげていたんですよ」
……わお。
ってことは、サントリナの師匠……!?
「まあ、才能もかなりありましたし、それほど教えることもなかったんですけどね」
「……そうなんですか」
「……さ、もう遅い時間ですし、昔話はこれくらいにしましょう。……明日は、早く発つのでしょう?」
「……はい」
くるりと背を向けたベゴニアさんに、俺は少し残念に思いながら、村までの道をゆっくりと辿った。
夜空の星を見ていると、そんな感情が浮かび上がってきた。
魔物たちを退治した後、ジャスミンの希望でアマリリスたちの家に一晩だけ厄介になることになった。
……まあ、サンビルに帰ったらピザ奢ってもらう約束したしな。
「あ、流れ星」
頭上にきらりと一筋の光が走った。
「……懐かしい」
遥か昔の記憶だが、母親と流星群を見に行ったことがある。
あの時はまだ母も病気にかかっておらず、二人で一緒に明け方まで夜空を眺め続けたはずだ。
…………。
「……よし、着いた」
感慨に浸っていられるのはここまでだ。
俺は、調査をしにこんな夜中まで起きていたのだから。
「『鑑定』」
…………。
……はぁ。
俺が調べたのは、さっき殺した魔物たちの死体なのだが……。
「やっぱりあったな」
その死体全てから、紋様が見えた。
これはやっぱり、ツツジが一枚噛んでそうだな。
それなら、結界の件も納得がいく。
……ん?
いや、ちょっと待てよ……。
この紋様、前のと形が違う……!?
よくよく見れば、今までのとまるっきり形が違う。
……どういうことだ?
命令の系統が変わっていないのであれば、形を変える必要なんてまるで無い。
だというのに……。
……よし。
「寝よう」
こんな面倒な事、俺が考える必要なんてないのだ。
サントリナにでも適当に報告しておいて、あとはそっちに任せよう。
「……眠れないのですか?」
!?
「……ああ、ベゴニアさんでしたか……。びっくりしましたよ……」
割とまじで心臓止まるかと思った。
「すみません。リアトリスさんの姿が見えなかったので、どこかに行かれたのかと思って……」
「いや、ちょっと考え事しに行っただけですよ」
うん、嘘は言ってない。
あんまりここの人たちに無駄な悩みを増やしてもいけないしな。
「……あの、リアトリスさん……?」
「はい?」
「……本当に父親のことを何も知らないんですか?」」
「はい。……まあ、母からどこかに行ったとだけ告げられましたけど」
「そう……ですか……」
あんな子供の時に死んだことを伝えるなんてこともしないだろうしな。
「俺からも一ついいですか?」
俺は、ずっと気になっていた質問を口に出した。
「ベゴニアさんって、父とどんな関りがあったんですか?」
「…………」
その質問にベゴニアさんは、少し嬉しそうな、それでいて寂しそうな表情を浮かべ。
「あいつとは、冒険者仲間だったんです」
「……!?」
冒険者仲間!?
……ってことは、父親も冒険者をやってたのか!?
そういえば、戦闘スタイルがうんたらとか言ってたな……。
「まあ、もうかなり昔の話ですけどね。それはもう、強いお方でしたよ? ……それこそ、今のリアトリスさんに匹敵……、いや、それ以上かもしれません」
……まじかよ。
俺もかなり強い方だと思うんだけどな……。
というか、そんな強い人なら、俺の耳に名前くらいは入ったことがあるかもしれないな。
「……なんか、父と同じ職業に就いたって、その……」
「感慨深い、とかですか?」
「……はい」
俺が冒険者になったのは別な理由だが、それでも……。
「てか、俺、ベゴニアさんとサントリナの関係もいまいち知らないんですよね」
「えっ、そうなんですか!? ……あとであの恩知らずには説教の手紙でも送っておきましょうかね」
あ、サントリナ、ご愁傷様……。
「サントリナがまだ見習いのペーペーだったころに、何度か修行をつけてあげていたんですよ」
……わお。
ってことは、サントリナの師匠……!?
「まあ、才能もかなりありましたし、それほど教えることもなかったんですけどね」
「……そうなんですか」
「……さ、もう遅い時間ですし、昔話はこれくらいにしましょう。……明日は、早く発つのでしょう?」
「……はい」
くるりと背を向けたベゴニアさんに、俺は少し残念に思いながら、村までの道をゆっくりと辿った。
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