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―第八十話― カランコエ
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……眩しい。
日光が瞼に直接射しているのか、ものすごく眩しい。
……もうそろそろ起きろってことか。
布団の中でぐっと背伸びをすると、腕が何かに当たった。
……?
俺、布団の周りになんか置いてたっけ?
布団から少しだけ顔を出し、周囲の様子を探ろうと……。
「お邪魔してます」
二コリと笑みを浮かべた長身の女性が、俺をのぞき込んでいた。
……?
「えっ、いやいやいや、お前誰だよ!! な、なんで俺の家に勝手に上がり込んできてるの!?」
「ええっ!? す、すみません!? あの、サントリナ様に上がっていいと言われたのですが……」
……サントリナか。
「あー、ごめん。いまいち状況が把握できてないんだけど、とりあえず泥棒とかじゃないんだよね?」
「そ、そんな野蛮なことしませんよ!」
サントリナ公認の泥棒とかじゃないみたいだな。
「ならよかった。で、あんた、名前は?」
「えっと、私、カランコエと申します」
カランコエ……。
どこかで聞いた覚えのある名前だな……。
「うーっす、邪魔するぞー」
「来やがったな、黒幕」
「お、カランコエ様も無事に到着されてましたか」
「はい、おかげさまで」
おい、無視するなよ。
……ってか、カランコエ様?
「なあ、サントリナ。とりあえず、状況の説明だけしてくんね?」
「あれ? 何も聞いてない感じ? あー、どこから話そうか……」
そう言ってサントリナは二、三秒ほど考え。
「まず、この方は俺の行ったドラゴン族の集落の長様です。ちょっとリアトリスの力が必要っぽかったから、来てもらった」
……ああ、そういう事か。
この間ドラゴンの本を読んだときに、確かにカランコエという名前が載っていた。
「いや、だからって納得できねえよ。なんでドラゴン族の長なんてしてる人間が、俺の家の、しかも枕元に立ってるんだよ、怖すぎるだろ!」
「人間じゃなくてドラゴンな」
「そんなことはどうだっていいんだよ! というか、俺の力が必要とか抜かしやがったな。面倒な事なら、お断りだぞ!」
それだけ言って、俺は再び布団の中に縮こまった。
「あの、リアトリス様。話だけでも聞いてくださいませんか?」
「無理です。俺は極力働きたくないんで」
「そ、そこをなんとか……」
「そうだそうだ―」
「サントリナ、お前は黙ってろ」
「はい、すみません」
……。
「要件だけ言ってくれ。引き受けるかどうかは、俺の気分次第だ」
「……! ありがとうございます。……単刀直入に言います。私たちの集落が、魔王軍に襲われました」
……魔王軍。
「ちょっと待ってくれ。まさか、その魔王軍の討伐が依頼内容とか言わないよな……?」
「話が早くて助かります。リアトリス様には」
「絶対に嫌だ!! そんな面倒くさそうなこと、ジャスミン辺りにでも頼んでくれ!!」
「おい、話は最後まで聞けよ。最後まで聞けば、少しは気が変わるかもしれない」
いいや、俺の確固たる意志は、何人たりとも動かすことはできない!!
「カランコエ様、続きは私の方から話させていただきます。リアトリス、お前に依頼したいのは、魔王軍の討伐じゃないんだ。どっちかというと、生け捕りだな」
「いや、なに勝手に難易度上げてんだよ」
というか、魔王軍の生け捕りってなんだよ。
「とりあえず、対象の魔王軍の上の奴の名前を言うぞ」
「嫌だ、聞かない」
「駄々っ子か、お前は!! 名前だけでも聞け!! お前にとっても、有益な情報になるはずだぞ」
……。
「いいか、リアトリス。お前に生け捕りにしてもらう奴の名は」
その時、突如として街の外で大きな爆発が起こった。
『人間共に告ぐ!! 我々は、魔王様の命令により、貴様らを殲滅しに来た!!』
「……すまん、話しは後だ。対処に向かうぞ、リアトリス」
「……くそっ、いいところで切りやがって。許さねえからな、魔王軍ども!」
……面倒くさいし、寝間着のままでいいか。
短刀だけを携え、俺たちは街の外まで大急ぎで走っていった。
「……あの、私はどうすれば……?」
日光が瞼に直接射しているのか、ものすごく眩しい。
……もうそろそろ起きろってことか。
布団の中でぐっと背伸びをすると、腕が何かに当たった。
……?
俺、布団の周りになんか置いてたっけ?
布団から少しだけ顔を出し、周囲の様子を探ろうと……。
「お邪魔してます」
二コリと笑みを浮かべた長身の女性が、俺をのぞき込んでいた。
……?
「えっ、いやいやいや、お前誰だよ!! な、なんで俺の家に勝手に上がり込んできてるの!?」
「ええっ!? す、すみません!? あの、サントリナ様に上がっていいと言われたのですが……」
……サントリナか。
「あー、ごめん。いまいち状況が把握できてないんだけど、とりあえず泥棒とかじゃないんだよね?」
「そ、そんな野蛮なことしませんよ!」
サントリナ公認の泥棒とかじゃないみたいだな。
「ならよかった。で、あんた、名前は?」
「えっと、私、カランコエと申します」
カランコエ……。
どこかで聞いた覚えのある名前だな……。
「うーっす、邪魔するぞー」
「来やがったな、黒幕」
「お、カランコエ様も無事に到着されてましたか」
「はい、おかげさまで」
おい、無視するなよ。
……ってか、カランコエ様?
「なあ、サントリナ。とりあえず、状況の説明だけしてくんね?」
「あれ? 何も聞いてない感じ? あー、どこから話そうか……」
そう言ってサントリナは二、三秒ほど考え。
「まず、この方は俺の行ったドラゴン族の集落の長様です。ちょっとリアトリスの力が必要っぽかったから、来てもらった」
……ああ、そういう事か。
この間ドラゴンの本を読んだときに、確かにカランコエという名前が載っていた。
「いや、だからって納得できねえよ。なんでドラゴン族の長なんてしてる人間が、俺の家の、しかも枕元に立ってるんだよ、怖すぎるだろ!」
「人間じゃなくてドラゴンな」
「そんなことはどうだっていいんだよ! というか、俺の力が必要とか抜かしやがったな。面倒な事なら、お断りだぞ!」
それだけ言って、俺は再び布団の中に縮こまった。
「あの、リアトリス様。話だけでも聞いてくださいませんか?」
「無理です。俺は極力働きたくないんで」
「そ、そこをなんとか……」
「そうだそうだ―」
「サントリナ、お前は黙ってろ」
「はい、すみません」
……。
「要件だけ言ってくれ。引き受けるかどうかは、俺の気分次第だ」
「……! ありがとうございます。……単刀直入に言います。私たちの集落が、魔王軍に襲われました」
……魔王軍。
「ちょっと待ってくれ。まさか、その魔王軍の討伐が依頼内容とか言わないよな……?」
「話が早くて助かります。リアトリス様には」
「絶対に嫌だ!! そんな面倒くさそうなこと、ジャスミン辺りにでも頼んでくれ!!」
「おい、話は最後まで聞けよ。最後まで聞けば、少しは気が変わるかもしれない」
いいや、俺の確固たる意志は、何人たりとも動かすことはできない!!
「カランコエ様、続きは私の方から話させていただきます。リアトリス、お前に依頼したいのは、魔王軍の討伐じゃないんだ。どっちかというと、生け捕りだな」
「いや、なに勝手に難易度上げてんだよ」
というか、魔王軍の生け捕りってなんだよ。
「とりあえず、対象の魔王軍の上の奴の名前を言うぞ」
「嫌だ、聞かない」
「駄々っ子か、お前は!! 名前だけでも聞け!! お前にとっても、有益な情報になるはずだぞ」
……。
「いいか、リアトリス。お前に生け捕りにしてもらう奴の名は」
その時、突如として街の外で大きな爆発が起こった。
『人間共に告ぐ!! 我々は、魔王様の命令により、貴様らを殲滅しに来た!!』
「……すまん、話しは後だ。対処に向かうぞ、リアトリス」
「……くそっ、いいところで切りやがって。許さねえからな、魔王軍ども!」
……面倒くさいし、寝間着のままでいいか。
短刀だけを携え、俺たちは街の外まで大急ぎで走っていった。
「……あの、私はどうすれば……?」
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