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―第七十九話― 忠告

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 心地よい満腹感と眠気に包まれながら、温かな布団にくるまる。
 はあー、最っ高。
 リアとも久々にちゃんとお出かけできたし、今日はかなり気分がいい。
 お化け屋敷は怖かったけど、まあ、結果オーライかしら。

 そんなことを考えているうちに、私の意識はゆっくりと落ちていき――



「や、久しぶり!」

 ……!?

「ルビーさん! お久しぶりです!!」
「いやー、あんまり顔出せなくてごめんね。今日も来ようか迷ってたんだけど、ちょーっと急を要する内容だからさ」

 急を要する……。
 なにか、緊急事態なのだろうか。

「リアトリスとのデート、楽しかった?」

「ぴぇっ!?」

 口から変な声が零れてしまった。

「そんなことで呼び出したんですか……!? と、ととというか、あれはデートとかじゃなくて……」
「冗談だよ、冗談。……にしても、そんなに焦るってことは、やっぱり……?」
「は、早く話さなきゃいけないことを話してくださいよ!! 急ぎなんですよね!?」
「ああ、そうだった。つい、からかうのが楽しくてな」

 つい、でからかわれるこっちの身にもなってほしい。

「うーん、まあ、簡潔に話せばだね……。ジャスミンちゃん、あと少ししたら、やばめの事態に陥る可能性大だよ」
「……やばめ、ですか?」
「うん。最悪、死ぬかもしれないくらい」
「死っ……!?」

 先程までの雰囲気と打って変わって告げられたその言葉に、思わず息が詰まってしまう。

「あー、そこまで深く考える必要はないよ。安心して」
「いや、安心できないですよ!! えっ、私死ぬんですか!?」
「うーん、リアトリスもいるから、たぶん大丈夫だとは思うけど……。とりあえず、今日は注意喚起程度に呼んだだけだから」
「え、ええー……」
「心配なら、僕からも対処法を教えておくけど……いる?」
「いります。超いります」

 当然だ、命がかかってるんだから。

「とりあえず、ディザスターは禁止。あと、ライトニングも」
「え!?」
「戦闘は基本リアトリスに任せること。ジャスミンは支援に徹するように。あと、常に油断しないようにすること」
「は、はい……!」

 ここまで忠告するということは、よっぽどのことなのだろう。
 ……まったく予想がつかない。

「……もう一つだけ、忠告。パーティーメンバーを頼るのは良いことだが、依存するのはだめだからな。……人間、自分の目が届く範囲、手が届く範囲でしか助けることはできないんだから」
「……はい」
「まあ、今回はこんなもんかな。俺もできる限りの支援はするけど、あんまり期待はしないでくれ」
「わかりました。ありがとうございます!」
「うん、いい返事だ。……そうだ。今度機会があったら、ディザスターについて教えようか? 少々俺のとは構造が違うけど、多分教えられるはず」
「はい。お願いします!!」

 もしルビーさんに魔法を教われば、リアと同等、いやそれ以上に強くなれる可能性も……?

「あ、それは普通にあるよ。というか、現段階でも五分五分くらいじゃないの?」
「えっ、そうなんですか!?」
「うん。だって、君の場合は……」

 そこまで言って、ルビーさんは慌てた様子で口を閉じた。

「これ以上は言えねえんだった。危ねえ、危ねえ。……まあ、とりあえず、ジャスミンはもう既に群を抜いて強い部類になってきているから、心配する必要はないよ」

 ……すっごい気になるんですけど。
 ルビーさんはいったい、何を言おうとしたんだ?

「そろそろ起きる時間かな? じゃあね、ジャスミン」

 パチン、という乾いた音と同時に、視界がうっすらと透けていく。

「また、今度……たくさん、お話を……」
「うん。楽しみにしてるよ」

 だから、と一言置いて。

「ちゃんと、生きて帰ってくるんだよ?」

 その瞬間に、私の意識は――


◆◆◆


 真っ白な部屋の中で、俺は退屈気に椅子に座りこむ。
 というか、実際に退屈なのだ。

「……大丈夫かな……」

 十分に忠告はしたが、あれで確実にジャスミンが助かるという確証もない。
 ……あとは、リアトリスがどう動いてくれるかだな。
 最善手は打ててるはずだし、ここからは本当に運任せだな。

「リリー、いるー?」
「……なんですか?」

 おっと、かなり不機嫌そうですね。

「ちょっと、リリーの力が必要になる場面ができるかもしれないから、その時にはよろしく」
「……リアトリスさんの件でしたら、もう関わりたくないんですけど!」
「そこをなんとか!! 呪いの浄化、俺も手伝うからさ!」
「……分かりました……。そのかわり、奴隷の如く働く準備をお願いしますね?」
「うぐっ、は、はーい……」

 こ、これもリアトリス達のためだ……。
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