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―第六十三話― 謎の少女
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剣を抜き、最終点検を行う。
リアにもらった大切なものだから、絶対に壊したくない。
……うん、手入れもしっかりしてたし、大丈夫そう。
あとは、国王様からの合図を待つだけ。
合図があれば、全員が一斉に戦いを始める。
今の私が、どの程度通用するのか……。
……って、あれ?
「ローズ!?」
「ジャスミン!! もう一人って、お前だったのか……!」
そういえば、サントリナさんがもう一人サンビルから出るって言ってたわね。
ローズも、リアほどではないにしろ結構強い冒険者だしね。
「国王陛下が台に立ったし、そろそろっぽいな」
「うん。お互い、頑張ろうね!」
「おう!」
『それでは、諸君。程々に全力で楽しんで試合をするように。では、ス──』
その瞬間、闘技場に爆音が轟いた。
辺りに土煙が立ち込め、なにが起こったのか把握できない。
少しずつ晴れてきた視界の中、誰かが闘技場の中心に立っているのが見えた。
「飛び入りで申し訳ないが、参加させていただけないだろうか」
中性的な声と特徴的な赤髪の少女。
淡白な模様が施された仮面をつけており、不気味な雰囲気をより一層際立たせている。
その立ち姿は、明らかに他の参加者と一線を画していた。
まるで、リアと対峙したとき……いや、それ以上の圧迫感を感じる。
「……あー、国王様、ちょっといいですか?」
緊迫した空気の中、サントリナさんがゆったりと発言した。
「あのな、この大会は、あらかじめ決められた人間からの推薦を受けないと参加できないの。そこんところ、分かってる?」
「はい」
「だったら、飛び入りなんてできないってのは分かってるよね?」
「はい」
「サントリナ殿、少し言い方がきつすぎやしないか……?」
「国王、あんたは黙って最後まで話を聞いてなさい」
「はい」
いや、立場が逆でしょ。
「……まあ、面白そうだし、今回は俺が推薦してやるよ。いいよな、国王陛下」」
「「「「!?」」」」
「ま、まあ、サントリナ殿が良いのであれば……」
ちょっと待って、国王様、サントリナさんに甘過ぎじゃないですか!?
「てなわけで、少しハプニングもあったけど、大会を始めようか。国王様、合図を」
「あ、ああ」
なんでサントリナさんは、そんなにも平静を保ってられるの?
『それでは、改めまして。よーい、スタート!!』
◆
剣を振るい、次々と向かってくる人を薙ぎ倒す。
剣の腹で殴ってるだけだし、気絶だけで済ませられている。
ローズもアマリリスも、今のところは無事に残れているようだ。
あの赤髪の少女の方は……。
「えっ!!」
戦い中にもかかわらず、思わず声が出てしまった。
あの少女に十人ほどが一斉にかかっているのに、一切攻撃を受けていない。
しかも、反撃もなしで。
それだけ、腕に自信があるという事だろう。
「終わり」
冷ややかな声が闘技場に響き渡った。
その瞬間、少女の周りにいた人たちが、全員吹き飛ばされた……!
……ギリギリ、目で追えた。
一瞬で抜かれた長剣。
そのまま繰り出されたたった一振りで、終わらせたのだ。
『終了!! 全員、武器を降ろしなさい!!』
サントリナさんの声が、静まり返った闘技場に響く。
そこでようやく、私は緊張を解くことができた。
恐らく、その場の誰もが少女の動きに目を奪われていた。
というか、その場から動くことができなかった。
全員に放たれる殺気に、内心恐怖していたのだろう。
リア以上に強いのかもしれない。
そう思わせるだけの気迫が、あの一瞬で放たれていた。
『えー、今残っている十人が、次に戦うことのできるメンバーです! とりあえずは、おめでとう! 今から休憩時間だから、控室に戻り、しっかりと英気を養うこと。解散!!』
リアにもらった大切なものだから、絶対に壊したくない。
……うん、手入れもしっかりしてたし、大丈夫そう。
あとは、国王様からの合図を待つだけ。
合図があれば、全員が一斉に戦いを始める。
今の私が、どの程度通用するのか……。
……って、あれ?
「ローズ!?」
「ジャスミン!! もう一人って、お前だったのか……!」
そういえば、サントリナさんがもう一人サンビルから出るって言ってたわね。
ローズも、リアほどではないにしろ結構強い冒険者だしね。
「国王陛下が台に立ったし、そろそろっぽいな」
「うん。お互い、頑張ろうね!」
「おう!」
『それでは、諸君。程々に全力で楽しんで試合をするように。では、ス──』
その瞬間、闘技場に爆音が轟いた。
辺りに土煙が立ち込め、なにが起こったのか把握できない。
少しずつ晴れてきた視界の中、誰かが闘技場の中心に立っているのが見えた。
「飛び入りで申し訳ないが、参加させていただけないだろうか」
中性的な声と特徴的な赤髪の少女。
淡白な模様が施された仮面をつけており、不気味な雰囲気をより一層際立たせている。
その立ち姿は、明らかに他の参加者と一線を画していた。
まるで、リアと対峙したとき……いや、それ以上の圧迫感を感じる。
「……あー、国王様、ちょっといいですか?」
緊迫した空気の中、サントリナさんがゆったりと発言した。
「あのな、この大会は、あらかじめ決められた人間からの推薦を受けないと参加できないの。そこんところ、分かってる?」
「はい」
「だったら、飛び入りなんてできないってのは分かってるよね?」
「はい」
「サントリナ殿、少し言い方がきつすぎやしないか……?」
「国王、あんたは黙って最後まで話を聞いてなさい」
「はい」
いや、立場が逆でしょ。
「……まあ、面白そうだし、今回は俺が推薦してやるよ。いいよな、国王陛下」」
「「「「!?」」」」
「ま、まあ、サントリナ殿が良いのであれば……」
ちょっと待って、国王様、サントリナさんに甘過ぎじゃないですか!?
「てなわけで、少しハプニングもあったけど、大会を始めようか。国王様、合図を」
「あ、ああ」
なんでサントリナさんは、そんなにも平静を保ってられるの?
『それでは、改めまして。よーい、スタート!!』
◆
剣を振るい、次々と向かってくる人を薙ぎ倒す。
剣の腹で殴ってるだけだし、気絶だけで済ませられている。
ローズもアマリリスも、今のところは無事に残れているようだ。
あの赤髪の少女の方は……。
「えっ!!」
戦い中にもかかわらず、思わず声が出てしまった。
あの少女に十人ほどが一斉にかかっているのに、一切攻撃を受けていない。
しかも、反撃もなしで。
それだけ、腕に自信があるという事だろう。
「終わり」
冷ややかな声が闘技場に響き渡った。
その瞬間、少女の周りにいた人たちが、全員吹き飛ばされた……!
……ギリギリ、目で追えた。
一瞬で抜かれた長剣。
そのまま繰り出されたたった一振りで、終わらせたのだ。
『終了!! 全員、武器を降ろしなさい!!』
サントリナさんの声が、静まり返った闘技場に響く。
そこでようやく、私は緊張を解くことができた。
恐らく、その場の誰もが少女の動きに目を奪われていた。
というか、その場から動くことができなかった。
全員に放たれる殺気に、内心恐怖していたのだろう。
リア以上に強いのかもしれない。
そう思わせるだけの気迫が、あの一瞬で放たれていた。
『えー、今残っている十人が、次に戦うことのできるメンバーです! とりあえずは、おめでとう! 今から休憩時間だから、控室に戻り、しっかりと英気を養うこと。解散!!』
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