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―第五十八話― 秘密
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「や、久しぶり」
いつも通りの白い部屋。
そして、その真ん中にはいつも通りのルビーがいる。
「お久しぶりです、ルビーさん」
「ごめんね、後処理とかで時間食っちゃって、なかなかここに来られなかったんだ」
「そうなんですか」
「うん……。あの、何でこっちに近づいてくるの? ちょっと、無言は怖いからやめ……!」
「ふんっ!!」
「いだいっ!! ちょ、殴るなよ!!」
「あんたでしょ、ジャスミンのステータス隠したの?」
「……うん」
「うん、じゃないでしょうが!!」
「いや、これに関していえば、わざとじゃないんだよ!!」
「どういうことですか?」
「この間、俺のことを降ろしたじゃん?」
……あの時か。
「まあ、俺ぐらいの? 強い亡霊になるとさ?」
言い方ムカつくなあ。
「降ろすときの体への負荷が、とてつもないことになっちゃうんだよ」
「えっ?」
「ああ、安心して。ジャスミンちゃんに渡しておいたブレスレットは、その負荷を軽減するためのものだから。正確には、能力を肩代わりするものなんだけどね」
「能力を?」
ということは、ジャスミンの能力は……。
「ああ、能力については後で教えるよ。で、それを使って負荷は軽くはなってたんだけどね。それでも、なんというか、力の逆流? みたいなのが発生しちゃって、結果的に僕の魔力が体内に堆積しちゃったんだ」
「それで、ステータスが見えなくなったと」
「うん。僕の魔力を見通すなんてのは、君でもしばらくは無理なはずだよ」
「へー、すごいですね」
「いや、適当に流さないでくれない!?」
そんなことより、ジャスミンの能力の方が気になるんだよ。
とか考えとけば、どうせ心の中見てくれんだろ?
「……そうだけどさ。それだと、僕が独り言を喋ってるみたいになって、結構惨めなんだよ」
「いいじゃねえか」
「よくねえよ!! ……ごほん。まず、ジャスミンちゃんの能力について知るうえで、いくつか話しておきたいことがある」
お、ようやく来たか。
というか、さっきの話の流れで、大方の予想はついているのだが。
「一つ目。ジャスミンちゃんの能力には、それはもう大きなリスク、デメリットが課せられていること。二つ目。それを取り除けるのは、現段階では僕だけということ。三つ目。能力の使いようによっては、君を遥かに凌ぐ様な力も手に入るということ」
…………。
大きなリスクとデメリット。
能力を持っているのであれば、あるだろうとは思っていたが……。
それに、俺の能力を超えるような能力なのだとしたら……。
「デメリットについては、今のうち説明しておこうか。ジャスミンちゃんの能力のデメリットは、ある一定の条件を満たさなければ使えないこと」
「…………えっ?」
それだけ!?
能力のデメリットにしては小さいような気がする。
「うん。デメリットの方はそうだね。ただ、問題なのはリスクの方なんだ」
「……教えてください」
「能力のリスクは、一定以上の力を使った場合、もしくは時間を超過した場合に、寿命が削られるんだ」
寿命が、削られる……?
「それを防ぐために、この間はブレスレットを貸したんだ」
「そう、だったんですか……」
寿命を削るほどの能力。
逆に考えると、それだけの力を持っているということだ。
「能力についてだが、聞きたいかい?」
「…………はい。お願いします」
ジャスミンの能力が分かれば、ある程度の対策がとれるかもしてない。
誤使用で寿命が削られるなんてことがあれば、一大事だ。
「うん。そこを分かっているのであれば、大丈夫だ」
満足そうにうなずいたルビーさんは、普段と変わらぬ口調で言葉を紡いだ。
「ジャスミンちゃんの能力は、――――――」
「……………………」
きっと、俺は今とてつもなく間抜けな顔をしていることだろう。
なんというか、想像以上の能力過ぎた。
これは、ダメだろ。
俺なんかよりも、チート能力過ぎる。
「てな感じで、結構危険な能力だから、しっかり注意しておいてね」
「え、ええ……」
「あ。能力のデメリットとかの抑え方については、今度俺が直々に教えてやるよ。今日は、もう時間が残っていないんでね」
そう言ってルビーさんは、いつもの如く指を鳴らした。
視界は歪み、意識が現実へと引き戻されて――
◆
「ふぅ……。……精神的に疲れた」
ようやく一息つけるな。
ここ最近は、色々な後処理に追われて大変だったしな。
にしても、ジャスミンちゃんの能力について、教えても大丈夫だったのかな……?
いや、リアトリスのことだ。
俺の考えている以上のことをやらかしてくれるだろう。
それを信じて、俺も準備をしなくてはだな。
こんなのするの、いつぶりだっけ?
生前に少しやってただけか。
……また体力が削られるな。
それもこれも、リアトリスのためだ。
ジャスミンの能力を抑えるには、リアトリスが必要なんだ。
この間出来なかった分、ここで返してやるよ。
いつも通りの白い部屋。
そして、その真ん中にはいつも通りのルビーがいる。
「お久しぶりです、ルビーさん」
「ごめんね、後処理とかで時間食っちゃって、なかなかここに来られなかったんだ」
「そうなんですか」
「うん……。あの、何でこっちに近づいてくるの? ちょっと、無言は怖いからやめ……!」
「ふんっ!!」
「いだいっ!! ちょ、殴るなよ!!」
「あんたでしょ、ジャスミンのステータス隠したの?」
「……うん」
「うん、じゃないでしょうが!!」
「いや、これに関していえば、わざとじゃないんだよ!!」
「どういうことですか?」
「この間、俺のことを降ろしたじゃん?」
……あの時か。
「まあ、俺ぐらいの? 強い亡霊になるとさ?」
言い方ムカつくなあ。
「降ろすときの体への負荷が、とてつもないことになっちゃうんだよ」
「えっ?」
「ああ、安心して。ジャスミンちゃんに渡しておいたブレスレットは、その負荷を軽減するためのものだから。正確には、能力を肩代わりするものなんだけどね」
「能力を?」
ということは、ジャスミンの能力は……。
「ああ、能力については後で教えるよ。で、それを使って負荷は軽くはなってたんだけどね。それでも、なんというか、力の逆流? みたいなのが発生しちゃって、結果的に僕の魔力が体内に堆積しちゃったんだ」
「それで、ステータスが見えなくなったと」
「うん。僕の魔力を見通すなんてのは、君でもしばらくは無理なはずだよ」
「へー、すごいですね」
「いや、適当に流さないでくれない!?」
そんなことより、ジャスミンの能力の方が気になるんだよ。
とか考えとけば、どうせ心の中見てくれんだろ?
「……そうだけどさ。それだと、僕が独り言を喋ってるみたいになって、結構惨めなんだよ」
「いいじゃねえか」
「よくねえよ!! ……ごほん。まず、ジャスミンちゃんの能力について知るうえで、いくつか話しておきたいことがある」
お、ようやく来たか。
というか、さっきの話の流れで、大方の予想はついているのだが。
「一つ目。ジャスミンちゃんの能力には、それはもう大きなリスク、デメリットが課せられていること。二つ目。それを取り除けるのは、現段階では僕だけということ。三つ目。能力の使いようによっては、君を遥かに凌ぐ様な力も手に入るということ」
…………。
大きなリスクとデメリット。
能力を持っているのであれば、あるだろうとは思っていたが……。
それに、俺の能力を超えるような能力なのだとしたら……。
「デメリットについては、今のうち説明しておこうか。ジャスミンちゃんの能力のデメリットは、ある一定の条件を満たさなければ使えないこと」
「…………えっ?」
それだけ!?
能力のデメリットにしては小さいような気がする。
「うん。デメリットの方はそうだね。ただ、問題なのはリスクの方なんだ」
「……教えてください」
「能力のリスクは、一定以上の力を使った場合、もしくは時間を超過した場合に、寿命が削られるんだ」
寿命が、削られる……?
「それを防ぐために、この間はブレスレットを貸したんだ」
「そう、だったんですか……」
寿命を削るほどの能力。
逆に考えると、それだけの力を持っているということだ。
「能力についてだが、聞きたいかい?」
「…………はい。お願いします」
ジャスミンの能力が分かれば、ある程度の対策がとれるかもしてない。
誤使用で寿命が削られるなんてことがあれば、一大事だ。
「うん。そこを分かっているのであれば、大丈夫だ」
満足そうにうなずいたルビーさんは、普段と変わらぬ口調で言葉を紡いだ。
「ジャスミンちゃんの能力は、――――――」
「……………………」
きっと、俺は今とてつもなく間抜けな顔をしていることだろう。
なんというか、想像以上の能力過ぎた。
これは、ダメだろ。
俺なんかよりも、チート能力過ぎる。
「てな感じで、結構危険な能力だから、しっかり注意しておいてね」
「え、ええ……」
「あ。能力のデメリットとかの抑え方については、今度俺が直々に教えてやるよ。今日は、もう時間が残っていないんでね」
そう言ってルビーさんは、いつもの如く指を鳴らした。
視界は歪み、意識が現実へと引き戻されて――
◆
「ふぅ……。……精神的に疲れた」
ようやく一息つけるな。
ここ最近は、色々な後処理に追われて大変だったしな。
にしても、ジャスミンちゃんの能力について、教えても大丈夫だったのかな……?
いや、リアトリスのことだ。
俺の考えている以上のことをやらかしてくれるだろう。
それを信じて、俺も準備をしなくてはだな。
こんなのするの、いつぶりだっけ?
生前に少しやってただけか。
……また体力が削られるな。
それもこれも、リアトリスのためだ。
ジャスミンの能力を抑えるには、リアトリスが必要なんだ。
この間出来なかった分、ここで返してやるよ。
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