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―第五十五話― 能力か魔法

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「『移動』」

 さて、ジャスミンの様子は……。

「あ、リア……」
「……………………」

 焦る必要はねえって言ってんだよ……。

「『気絶』」

 馬鹿が。
 何やってんだよ。

 周りを見渡せば、そこら中に穴が開いている。
 それだけの数、魔法を使ったのだろう。

「『回復』」

 腕も火傷ができている。
 こりゃあ、かえってポーション飲ませたほうが良いな。

「『修復』」

 壁に吸い込まれるようにして、石などの破片がパラパラと浮き上がった。
 それらが一つ一つ組み合わさり、元通りの壁に戻る。

 ……あれ?
 この作業自体はいつもやっていたのだが、何か違和感がある。
 なんだ、なにがおかしい……?

 ……分かった。
 壁に開いている穴が、普段よりも小さく、深くなっている。
 今までのライトニングから、何かしらの変化が生まれた。
 そう考えるのが妥当なのかな。
 だとすると、オリジナル魔法が成功したのか……!?

「……明日聞くか」

 今のグロッキーなジャスミンに聞くのは、流石に酷だしな。

「『家に帰れ』」

 ……ジャスミンの家を未だに覚えてないのは、内緒だな。

 ああ、早く明日にならないかなあ……!
 実は、魔法の完成がかなり楽しみだったりしたんだよな。
 もしかして、サントリナも俺に修行をつけてくれていた時、こんな気持ちだったのか……?

 今度、魔法を見せるのもありだな。
 あいつの前では一回も使ったことなかったし。

 …………。

「『創造』」

 前回出したときの三倍ほどの大きさのゴーレムを生み出す。
 これなら、耐えられるよな。

 右腕を前に突き出し、意識を集中させる。
 久しぶりにやるけど、やっぱり体は覚えているものだな。
 魔力を掌に集め、固め、放出する!

「『コメット』!!」

 掌から魔力塊が放出され、目の前のゴーレムを派手な音をたてながら破壊する。

 ……うん、久しぶりにしては上出来じゃないか?
 というか、魔力量が上がったからか、破壊力が段違いだな。
 一発で八割くらい壊せたかな。

 これ、実戦でも十分通用しそうだな。
 魔力消費も能力に比べれば少ないし、細かい敵を倒すんだったら、こっちの方が適しているだろう。
 意外な発見だったな。
 今度、少し魔法について勉強し直してみるか。

「ただ、やっぱ能力で事足りてしまうんだよなあ」

 結局はそこに収束してしまう。
 一瞬魔法に俺かけてしまったが、冷静に考えればわかる話だ。
 今のだって、一言『破壊』と唱えるだけで終わってしまう。
 それを、わざわざ魔法でやろうとは思わないしなあ。
 魔力の消費だって、細かい調整をすれば、さっきの魔法並みに落とすことだって可能だ。
 とか言ってると、魔法使いの方々から全力で殺されそうだな。

「能力と魔法の組み合わせ……とか?」

 ま、そんなのは夢物語だろうな。
 能力と魔法、同時に集中するなんて器用なことは俺にはできない。
 というか、面倒だししたくない。

 ただ、ジャスミンが俺を追い越しそうになった時には、少し考えてみるか。
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