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―第五十四話― 紋様
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「なあ、サントリナはどう思う?」
「うーむ……」
死体をギルド職員さんに持ち帰ってもらったのだが、サントリナなら知っているかもしれないと思い、一応聞きに来たのだが……。
「これは……魔方陣……でもないか……」
「そうなんだよ。なんか、中途半端に魔力も感じるし、よくわからないんだよな」
「黒魔術の一種の可能性もあるが……。オーク種ならまだしも、未確認の魔物まで操られていたと考えると、相当まずい状況かもしれんな」
「黒魔術か。それは考えていなかった」
「ちょっと待ってろ。うちの図書室に、もしかしたらあるかもしれん」
「そっちを漁ってみるか?」
「うん。それでわからなかったら、王国の図書館にも聞いてみるとしようか」
ここの図書館なら相当な数の本があるし、見つかる可能性は高いな。
◆
「──だーめだ!」
「それっぽいのは何冊かあったけどな……」
「黒魔術でもないとしたら……マジでなんなんだ?」
それが分かれば苦労しないんだけどな。
「魔法、黒魔術でもないとしたら、あとはもう能力くらいしか思い浮かばないぞ?」
そうだよ……な……。
「「能力だ!!」」
そうだ、能力だったら、こんな無茶苦茶もあり得る。
どうして今まで思いつかなかったのか……。
……ポンコツコンビということか。
「ただ、能力であれだけの数を操っていたとしたら、それはそれでまずくないか?」
「五百くらいだったっけ? 相当な魔力の持ち主か、特殊な条件持ちだろうな。……魔王軍に、そんな奴いたっけな……。少なくとも、俺が戦っていたころにはいなかったぞ」
「そうか……」
でも、これで少し正体に近づいたわけだ。
それだけでも、かなりの収穫だ。
「そういえば、ジャスミンちゃんの修行はどうなったの?」
「ある程度進んだし、自分で魔法を作らせてるよ」
「もうそんなに行ったのか!?」
「あいつ、魔力操作が得意っぽいんだよ」
「だとしても、その習得速度は異常だぜ!? ……お前、ジャスミンちゃんに抜かされんじゃないのか?」
「流石に、それはない。というか、その前に俺が修行を始めるさ」
「うわー、性格悪っ!!」
「違えよ!! ……というか、お前なら俺の言ってることが分かるだろ!?」
「ああ、まあ、その気持ちはわからんことはない。ライバル的な立ち位置になってんだろ? ……懐かしいな。俺も、周りから絶対に抜かされないように更なる強さを求める、なんて時期があったな」
その結果、群を抜いて強くなったんですね、分かります。
「ライトニングは、結構特殊な魔法だからな。かなり修業を積まないと、完全に使いこなすなんてのは無理じゃないか?」
「そうだな。でも、ジャスミンならいけるよ」
「……かもな。……俺らには、応援することしかできないんだ。強くなるには、他人からの教えよりも自分の気付きの方が効果的だ」
こいつがまともなことを言っている……だと!?
雷に打たれたのではないかというほどの衝撃が全身に走った。
「お前、凄く失礼なことを考えなかったか?」
「いいえ、考えてないです」
「……本当か?」
エスパーか!
「……ライトニングは、相手に投擲する瞬間に、魔力を爆発させているんだ」
「え?」
「その爆発を、もう少し別の方向に向かせることができれば、だな」
……マジか。
こいつ、俺が何度も注視して、ようやく見つけた性質を、こうもあっさりと……。
「なんでそんなに驚いたような顔すんだよ」
「いや、なんというか、お前ってすごいな」
「無駄に長く生きてるわけじゃねえんだ。そういう性質まで完全に見極めないと、相手の攻撃を避けることができなくなってしまう」
「そんなもんなのか」
「そんなもんだよ」
てか、魔力の爆発を別の方向に向かせるって、相当難しくないか?
ジャスミンの能力が分かっていない以上、能力なしでそれをすると考えると……。
「サントリナ。お前だったら、どんな風にライトニングを使うんだ?」
「うーん、そうだな……。例えばだが、武器に纏わせるなんてのはどうだ?」
「武器に?」
「ああ。確か、ジャスミンちゃんは剣士だっただろ? 自分の剣に魔力を流すのはもうしたんだろうし、それの応用で剣に魔法を纏わせてみたりとかな」
「なるほどな。その発想はなかった」
「でもまあ、どんな魔法に仕上げてくるのかは、ジャスミンちゃん自身のポテンシャルだったり、ひらめきだったりに関わってくる話だ」
「そうだな。自分で考えた魔法ってのは、やっぱり体に馴染みやすいし、できれば会得してほしいんだよなあ」
「お前、全然魔法使わねえじゃねえか」
「お、俺の場合は、能力自体がオリジナル魔法みたいなもんなんだよ!!」
実は、俺も昔にオリジナル魔法は作ったのだが……。
それっきり、一度も使ったことがない。
まあ、能力さえあれば、魔法が必要なくなってくるってのはあるな。
「王国の方の図書館にも一応は問い合わせてみるが、あんまり期待はしないでくれ」
「大丈夫だ。お前の仕事に期待したことなんて一度もない」
「おい、それはそれで酷いぞ」
「じゃ、俺はジャスミンの経過でも見てくるよ」
「おう、気を付けて行ってこい」
「ああ。図書館の、よろしくな」
「うーむ……」
死体をギルド職員さんに持ち帰ってもらったのだが、サントリナなら知っているかもしれないと思い、一応聞きに来たのだが……。
「これは……魔方陣……でもないか……」
「そうなんだよ。なんか、中途半端に魔力も感じるし、よくわからないんだよな」
「黒魔術の一種の可能性もあるが……。オーク種ならまだしも、未確認の魔物まで操られていたと考えると、相当まずい状況かもしれんな」
「黒魔術か。それは考えていなかった」
「ちょっと待ってろ。うちの図書室に、もしかしたらあるかもしれん」
「そっちを漁ってみるか?」
「うん。それでわからなかったら、王国の図書館にも聞いてみるとしようか」
ここの図書館なら相当な数の本があるし、見つかる可能性は高いな。
◆
「──だーめだ!」
「それっぽいのは何冊かあったけどな……」
「黒魔術でもないとしたら……マジでなんなんだ?」
それが分かれば苦労しないんだけどな。
「魔法、黒魔術でもないとしたら、あとはもう能力くらいしか思い浮かばないぞ?」
そうだよ……な……。
「「能力だ!!」」
そうだ、能力だったら、こんな無茶苦茶もあり得る。
どうして今まで思いつかなかったのか……。
……ポンコツコンビということか。
「ただ、能力であれだけの数を操っていたとしたら、それはそれでまずくないか?」
「五百くらいだったっけ? 相当な魔力の持ち主か、特殊な条件持ちだろうな。……魔王軍に、そんな奴いたっけな……。少なくとも、俺が戦っていたころにはいなかったぞ」
「そうか……」
でも、これで少し正体に近づいたわけだ。
それだけでも、かなりの収穫だ。
「そういえば、ジャスミンちゃんの修行はどうなったの?」
「ある程度進んだし、自分で魔法を作らせてるよ」
「もうそんなに行ったのか!?」
「あいつ、魔力操作が得意っぽいんだよ」
「だとしても、その習得速度は異常だぜ!? ……お前、ジャスミンちゃんに抜かされんじゃないのか?」
「流石に、それはない。というか、その前に俺が修行を始めるさ」
「うわー、性格悪っ!!」
「違えよ!! ……というか、お前なら俺の言ってることが分かるだろ!?」
「ああ、まあ、その気持ちはわからんことはない。ライバル的な立ち位置になってんだろ? ……懐かしいな。俺も、周りから絶対に抜かされないように更なる強さを求める、なんて時期があったな」
その結果、群を抜いて強くなったんですね、分かります。
「ライトニングは、結構特殊な魔法だからな。かなり修業を積まないと、完全に使いこなすなんてのは無理じゃないか?」
「そうだな。でも、ジャスミンならいけるよ」
「……かもな。……俺らには、応援することしかできないんだ。強くなるには、他人からの教えよりも自分の気付きの方が効果的だ」
こいつがまともなことを言っている……だと!?
雷に打たれたのではないかというほどの衝撃が全身に走った。
「お前、凄く失礼なことを考えなかったか?」
「いいえ、考えてないです」
「……本当か?」
エスパーか!
「……ライトニングは、相手に投擲する瞬間に、魔力を爆発させているんだ」
「え?」
「その爆発を、もう少し別の方向に向かせることができれば、だな」
……マジか。
こいつ、俺が何度も注視して、ようやく見つけた性質を、こうもあっさりと……。
「なんでそんなに驚いたような顔すんだよ」
「いや、なんというか、お前ってすごいな」
「無駄に長く生きてるわけじゃねえんだ。そういう性質まで完全に見極めないと、相手の攻撃を避けることができなくなってしまう」
「そんなもんなのか」
「そんなもんだよ」
てか、魔力の爆発を別の方向に向かせるって、相当難しくないか?
ジャスミンの能力が分かっていない以上、能力なしでそれをすると考えると……。
「サントリナ。お前だったら、どんな風にライトニングを使うんだ?」
「うーん、そうだな……。例えばだが、武器に纏わせるなんてのはどうだ?」
「武器に?」
「ああ。確か、ジャスミンちゃんは剣士だっただろ? 自分の剣に魔力を流すのはもうしたんだろうし、それの応用で剣に魔法を纏わせてみたりとかな」
「なるほどな。その発想はなかった」
「でもまあ、どんな魔法に仕上げてくるのかは、ジャスミンちゃん自身のポテンシャルだったり、ひらめきだったりに関わってくる話だ」
「そうだな。自分で考えた魔法ってのは、やっぱり体に馴染みやすいし、できれば会得してほしいんだよなあ」
「お前、全然魔法使わねえじゃねえか」
「お、俺の場合は、能力自体がオリジナル魔法みたいなもんなんだよ!!」
実は、俺も昔にオリジナル魔法は作ったのだが……。
それっきり、一度も使ったことがない。
まあ、能力さえあれば、魔法が必要なくなってくるってのはあるな。
「王国の方の図書館にも一応は問い合わせてみるが、あんまり期待はしないでくれ」
「大丈夫だ。お前の仕事に期待したことなんて一度もない」
「おい、それはそれで酷いぞ」
「じゃ、俺はジャスミンの経過でも見てくるよ」
「おう、気を付けて行ってこい」
「ああ。図書館の、よろしくな」
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