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―第十三話― 計略
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久しぶりの長旅の末、ようやくジャロイに着いたわけなのだが──
「……ったく、面倒くさいことになってんな」
町中から上がる火の手に、倒壊した建物。
もとは観光地として有名な場所であったはずなのだが、その片鱗すら感じられない。
規模の大きさからみて、幹部クラスの奴が来てるようだな。
「……リア」
「どうした?」
「魔王軍どもを殲滅するわよ」
「当り前だ」
響き渡った爆発音を合図に、俺たちは同時に街へと繰り出した。
◆◆◆
街の中には、いたるところに魔物がいた。
ゴブリンやコボルトなどの雑魚だけでなく、オーガやマンティコアのようなかなりの強さを誇る魔物たちもたくさんいる。
「剣の試し斬りにはちょうどよさそうね」
ゴブリンが数体跳びかかってきたが、リアの怒涛の攻撃の速度に比べればどうってことない。
鞘から剣を抜き、ゴブリンに向かって横薙ぎに振るう。
「すごっ!?」
振り心地が無茶苦茶いい。
重すぎず軽すぎずで、腕への負荷もほとんどない。
切れ味も鋭く、多少の防御力は無視して攻撃できそうだ。
素早くゴブリンを倒し、マンティコアのほうへ向かう。
しっぽの毒針が飛んでくるが、それを刃の側面で受ける。
やはり、防御力もピカイチの様だ。
爪やしっぽわかわしつつ、相手の首へ全力の一撃を叩きこむ。
「よし、撃破!」
普通ならば苦戦してしまうような相手だが、そんな相手でさえ難なく倒していける。
この調子なら、何百体でも倒せるのでは、という気さえ起きてしまう。
◆
「ああ、もう! 数が多い!!」
目についた魔物を片っ端から倒しているのだが、数が多すぎる。
雑魚ばかりとは言えど、さすがにこちらも疲弊してくる。
「『切断』、『燃えろ』」
リアが短剣を振るった瞬間、こちらに向かってきていた魔物が半分に切れ、切断面から炎が上がった。
「こりゃあ、本当にいいものをもらったな。帰ったらたっぷりお返しをしなくちゃだな」
そう言いながらリアが指を鳴らすと、周りの魔物にも炎が広がった。
「私も負けて、られない、わ……ね」
あ、れ?
言葉がうまく出てこない。
視界もだんだんぼやけて……。
◆◆◆
「ジャスミン?」
急に気配が消えた。
まさか……!
後ろを振り返ると、さっきまでいたはずのジャスミンの姿が消えていた。
「くそっ!! さらわれたか!!」
魔法が使われたような感じはしなかった。
……いや、うまく隠したんだな。
だとすると、俺が想像する以上にやり手だな。
「ん? なんだこれ?」
ジャスミンがいた場所に、一枚の紙が落ちていた。
そこに書かれていたのは。
『今晩、町の中心まで一人で来い。それまでは能力を使うな。それさえ守ればこいつの命も保証してやる。』
夜までは……、あと数時間程度か。
能力を使うなってのはなかなかきついが、もう魔物も残ってないだろうし、大丈夫だろう。
「さてと……」
残った魔物どもを全員殺す。
待ってろよ、魔王軍幹部。
絶対に殺してやるからな。
◆
日はとっくに沈み、辺りには静かな暗闇が広がっていた。
「お前か。ジャスミンをさらったのは」
ゆっくりとこちらに向かってくる影に向かい、そう呼びかけると。
「私についてきてください」
影はその一言のみを残して、先ほど来た方向へと歩きだした。
面倒くさいが、ジャスミンの命がかかってるしな。
俺はしょうがなく、その影の指示に従った。
それから数十分、影の行く道をひたすらついていった。
すると、急にあたりに濃い魔力が漂い出し、その影もぴたりと止まった。
◆
「ようこそ、わが主の屋敷へ」
その言葉とともに、影は地面に吸い込まれるようにして消えた。
屋敷?
不可思議に思い、正面に向き直ると。
「!?」
先ほどまで更地だった場所に、大きな建造物が建っていた。
その様は、さながら幽霊屋敷のようだった。
「とりあえず、ここに入ればいいんだよな……」
不気味に思いながらも、玄関に構えてある大きな扉まで歩く。
辺りには薄い霧が漂っており、そこはかとない不気味さを演出していた。
魔力の濃さも、さっきとは比べ物にならないレベルになっている。
扉に手をかけると、その見た目の割にはすんなりと開いた。
「やあ、君が……、リアトリス君だね」
そこにいたのは、がたいのいい大男だった。
脳筋のような見た目だが、こいつから感じる魔力量は異常だ。
おそらく、シリウスにも引けを取らないレベルだろう。
「おい、ジャスミンはどこだ?」
「大丈夫。今のところは生きているよ。今のところは……ね」
「さっさとジャスミンを出せ。殺すぞ」
「フフッ、君にそんなことができるのかな? 自己紹介をさせてもらおう。私の名は、メイサ。魔王軍幹部の一人だよ」
「……ったく、面倒くさいことになってんな」
町中から上がる火の手に、倒壊した建物。
もとは観光地として有名な場所であったはずなのだが、その片鱗すら感じられない。
規模の大きさからみて、幹部クラスの奴が来てるようだな。
「……リア」
「どうした?」
「魔王軍どもを殲滅するわよ」
「当り前だ」
響き渡った爆発音を合図に、俺たちは同時に街へと繰り出した。
◆◆◆
街の中には、いたるところに魔物がいた。
ゴブリンやコボルトなどの雑魚だけでなく、オーガやマンティコアのようなかなりの強さを誇る魔物たちもたくさんいる。
「剣の試し斬りにはちょうどよさそうね」
ゴブリンが数体跳びかかってきたが、リアの怒涛の攻撃の速度に比べればどうってことない。
鞘から剣を抜き、ゴブリンに向かって横薙ぎに振るう。
「すごっ!?」
振り心地が無茶苦茶いい。
重すぎず軽すぎずで、腕への負荷もほとんどない。
切れ味も鋭く、多少の防御力は無視して攻撃できそうだ。
素早くゴブリンを倒し、マンティコアのほうへ向かう。
しっぽの毒針が飛んでくるが、それを刃の側面で受ける。
やはり、防御力もピカイチの様だ。
爪やしっぽわかわしつつ、相手の首へ全力の一撃を叩きこむ。
「よし、撃破!」
普通ならば苦戦してしまうような相手だが、そんな相手でさえ難なく倒していける。
この調子なら、何百体でも倒せるのでは、という気さえ起きてしまう。
◆
「ああ、もう! 数が多い!!」
目についた魔物を片っ端から倒しているのだが、数が多すぎる。
雑魚ばかりとは言えど、さすがにこちらも疲弊してくる。
「『切断』、『燃えろ』」
リアが短剣を振るった瞬間、こちらに向かってきていた魔物が半分に切れ、切断面から炎が上がった。
「こりゃあ、本当にいいものをもらったな。帰ったらたっぷりお返しをしなくちゃだな」
そう言いながらリアが指を鳴らすと、周りの魔物にも炎が広がった。
「私も負けて、られない、わ……ね」
あ、れ?
言葉がうまく出てこない。
視界もだんだんぼやけて……。
◆◆◆
「ジャスミン?」
急に気配が消えた。
まさか……!
後ろを振り返ると、さっきまでいたはずのジャスミンの姿が消えていた。
「くそっ!! さらわれたか!!」
魔法が使われたような感じはしなかった。
……いや、うまく隠したんだな。
だとすると、俺が想像する以上にやり手だな。
「ん? なんだこれ?」
ジャスミンがいた場所に、一枚の紙が落ちていた。
そこに書かれていたのは。
『今晩、町の中心まで一人で来い。それまでは能力を使うな。それさえ守ればこいつの命も保証してやる。』
夜までは……、あと数時間程度か。
能力を使うなってのはなかなかきついが、もう魔物も残ってないだろうし、大丈夫だろう。
「さてと……」
残った魔物どもを全員殺す。
待ってろよ、魔王軍幹部。
絶対に殺してやるからな。
◆
日はとっくに沈み、辺りには静かな暗闇が広がっていた。
「お前か。ジャスミンをさらったのは」
ゆっくりとこちらに向かってくる影に向かい、そう呼びかけると。
「私についてきてください」
影はその一言のみを残して、先ほど来た方向へと歩きだした。
面倒くさいが、ジャスミンの命がかかってるしな。
俺はしょうがなく、その影の指示に従った。
それから数十分、影の行く道をひたすらついていった。
すると、急にあたりに濃い魔力が漂い出し、その影もぴたりと止まった。
◆
「ようこそ、わが主の屋敷へ」
その言葉とともに、影は地面に吸い込まれるようにして消えた。
屋敷?
不可思議に思い、正面に向き直ると。
「!?」
先ほどまで更地だった場所に、大きな建造物が建っていた。
その様は、さながら幽霊屋敷のようだった。
「とりあえず、ここに入ればいいんだよな……」
不気味に思いながらも、玄関に構えてある大きな扉まで歩く。
辺りには薄い霧が漂っており、そこはかとない不気味さを演出していた。
魔力の濃さも、さっきとは比べ物にならないレベルになっている。
扉に手をかけると、その見た目の割にはすんなりと開いた。
「やあ、君が……、リアトリス君だね」
そこにいたのは、がたいのいい大男だった。
脳筋のような見た目だが、こいつから感じる魔力量は異常だ。
おそらく、シリウスにも引けを取らないレベルだろう。
「おい、ジャスミンはどこだ?」
「大丈夫。今のところは生きているよ。今のところは……ね」
「さっさとジャスミンを出せ。殺すぞ」
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