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第5話 飛び抜けた同期のあいつは、有名俳優の長男だった! 出世する男は、"女にモテるのが仕事" なのか?

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目黒第一高時代の思い出の二つ目は、やっぱり、同期のあいつ――瀬下 優のことを触れなくてはならないだろう。

同級生だったのだが、まあ、入学当初から凄かった。

顔も名前もよく知られた男だったからね。
御存知、有名俳優――瀬下卓司の長男だった。
教職員達も、よく知っていたらしい。

特別待遇みたいに感じはあった。
でも、幼児期の写真を見ると、そうでもない。
実家のある品川の自宅付近なら、どこにでもいるような少年だ。

中学に入ってからも同じ。

冴えない印象すらあった。

本人も周囲の視線は、感じていたらしい。

転機が来たのは、中学卒業間際――有名俳優の息子ということだから、親の七光りで、劇場映画の子役出演もかなったのは、いいが、現場のスタッフには、結構、揉まれたらしい。




クランク・アップ直後のインタビューでは、「年上の制作スタッフに注意されて、ずいぶん、へこんだこともあった。辞めたい気持ちすらあった」という趣旨の発言をしている。
ここから、本人の自覚が芽生えたらしい。

まず、「形から入る」というわけで、筋力トレーニング・ジムに通いだす。




元々、素質があったのか、めきめきと筋肉がついて、別人になった。

何しろ、両親から引き継いだ資質が、凄いやつだった。

母親は、肉体派ファッション・モデルの春日部蓉子。




そして、父親は、「役者は、モテるのが仕事」と公言する名優――瀬下卓司だ。
世間からの批判も凄いらしいが、結婚しても、そのエネルギーは、収まることも知らない。










外部に流れただけでも、相当な女遊びの証拠がある。
実態は、もっと多いだろう。

よく、奥さんが、黙っていると思うが、最初からそんな「約束」で結婚したらしい。
事前承諾では仕方がない。

そんな両親の血統を受け継ぐ息子なんだから、いろんな意味で黙ってられない。

17歳で早くも、単独主演の劇場映画公開――共演ヒロインの秋沢多佳子と恋仲になり、名優の二世俳優として、出世の階段を上り始めた。



現役都立高校生とは、思えない――風格まで身に着け始めていた。

もちろん、すでに恋人もいた。
出演作のスポンサー会社の重役の長女――今井美鈴。
絵に描いたような美人令嬢で、週に三回は密会するほどの熱い仲になったらしい。



はたから、見れば、実に順調すぎる人生の滑り出し――普通の神経の持ち主なら、守りに回ってもおかしくないところだが、ヤツの場合は、両親の血統からして、狂っているから、「守りに回る」どころか、ケタ外れの女遊びに爆走した。








周囲の関係者は、みんな気が付いていたが、何しろね「役者は、モテるのが仕事」と公言する俳優一家なので、衷心から止めるに入る者がいない。

おれも、呆れて、見ていたクチだが、一つ、感心したのは、ヤツが、年下や同い年は、もちろん、富裕層の年上の女性からもモテまくったということだ。



これは、結構、凄いことなのかもしれないと思った。

どこでも、40代セレブ美女ともなれば、異性への審美眼が厳しい。
そのお眼鏡にかなう男とは、何からの魅力を備えているのかもしれないと納得した。


まあ、三つ年上の母親似の美人の実姉との関係も良好だったせいなのかもしれないが。




もっとも、女遊びもますますエスカレートして、背後ハグどころじゃすまなくて、正面から抱き合い始めたのは、将来を約束したらしい"本命の恋人"――今井美鈴の方は、心中、穏やかではなかっただろうか。

次の年のクリスマスになると高輪駅前のプリンス・ホテルに呼び出されて――その一室で週末を二人っきりで過ごしたらしいから。


そして、もう、この頃になると本人も将来の進路――売り出す俳優イメージも固まり出してきたようで、カメラ目線の写真には、「好感度の高い爽やかな青年としての笑顔」が、板に着いてきている。

だが、職業キャリアが順調に動き出した――そういう時こそ、気をつけなきゃいけないのだ。

思ってもみない肉体派グラマー美女との鮮烈な出会いが、ヤツ――瀬下 優に男の人生のある真理を気付かせることになる……。
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