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第1話 無から有を生み出す! 現代劇画ビジネス業界で、そんな道を歩きだした大望の若者たちの物語

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無から有を生み出す!
世にも稀な "巨大なるスモール・ビジネス" ――高精細液晶ペンタブ一台、机椅子一組と自らのあふれるような表現意欲と華やかな創造的才能一つで、取り巻く状況は、空前のメガヒットへと動き出す――現代劇画ビジネス業界。

そこに創造的才能未知数の新星が、自らのあふれる若さだけを頼りにして、決然と飛び込む!

東京都立目黒第一高等学校を、卒業後、渋谷区代々木タレント・アカデミーのコミック作家養成コースを修了し、勇躍、乗り出す21世紀初の年に生まれた主人公=上原 純。

「作画力以外は、素人」
「読者や世間、社会どころか、好きな女の気持ちもわかりません」

そんな今どきの西東京なら、どこにでもいるような一人の典型的若造主人公の彼を中軸として描かれる――様々な涙あり、笑いあり、冒険あり、恋愛ありの人間模様ドラマ。

様々な人々の出会い、長く曲がりくねった旅、激烈で理不尽な闘いを通して、誰かを熱く愛し、誰かに深く愛され、「この仕事には、自分が託せる理想がある」と言えるほどの一人の青年にまで成長し、「彼女は、一生の伴侶」と呼べるほどの心から愛する女性と知り合うまでを、様々なエピソードを通して、活写する。


どんな社会を理解し、どれほど世間から理解されないのか?
何を受け入れ、何から拒否されたのか?
どこの誰を愛し、どこの誰から愛されたのか?


世の中の"何かを表現する"という仕事を愛し、人生の"何かに感動する"という生きがいに愛された男の生涯とは、どんなものなのか?

若造主人公の軽快ハードボイルドな一人称文体で、輝く未来へ向けて、躍動する"創造の魂の軌跡"を生き生きと描き尽くす――新世代劇画作家の華やかで、鮮やかなビジネスサクセス・ストーリー!

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おれの名前は、上原 純うえはら じゅん


誕生日は、2001年1月25日。
世界最初の21世紀生まれというわけだ。


身長=186センチ、体重72キロ。
お見かけたとおりの目黒区を中心に西東京の街なら、どこにでもいるような平凡なナイス・ガイだ。

まあ、非凡なナイス・ガイではないけれど、おれのことを好きになってほしい。
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別に他人から嫌われたくて、生きているわけではないのだから――。
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体格は、こんな感じだ。
もちろん、短期も長期も入院歴なし。
親からもらった健康体のこの体――文句のつけようもないな。
おかげで、内臓疾患も皮膚病にも、かかったことはないよ。
つるつる、ごりごりで、君の指先で触ってみたくなるような滑らかな皮膚感だ。
有料サービスを始めてやってもいいな。

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さらに言えば、この澄んだ双つの瞳の魅力も、また、いいね。
漢の魅力と生命力は、両眼に表れる――というが、まさにこれだ!

くだらない汚濁の世の中や嘘つきだらけの人間たちの鬼畜の所業を見ても、一点の曇りもなし。
迷いもなし。

これが、奇跡と偶然が重なって産まれた――新世代の眼だ。
そして、夢と希望の彼方――常に"魂の地平線"を視野に捉えているのが、この両眼なんだ。

まあ、といっても、たかだか20年そこそこの若造人生ですよ。
容赦無き荒波、超えてきた人生の先輩方にご教示願うこともあるだろうけどね、当然。


精神的原風景といえば、こんなところだろうか?

今どきの西東京なら、どこにでもありそうな風景だ。

特異なロケーションも事件も何もないよ。

おかげで、身についた特技・趣味といえば、1つしかない。


写実画を描くこと――。

抽象画は、さっぱり興味がない。
基本、文系だが、それなりの"理系の血"を引く――おれに、言わせれば、抽象画なんて、"嘘の画"だから――。
だから、印象派の画家なんか、眼中にない。









もっとも、作画モデルといえば、自分しかいなかったから、御覧の通り、すべて自画像ばかりだがね。
おかげで、美大進学は、考えもしなかった。

多摩美術大学も武蔵野美術大学も、抽象画専門の世界だからね。

美大の世界とは「抽象画を描かなければ、人間に非ず!」。
これが、鋼のルール。

全く、恐ろしい世界だよ。
美しい地獄さ。









卒業校は、東京都立目黒第一高等学校。




在籍期間は、三年。
残念ながら、語りたくなるような話題は、ほとんど無いね。


残念ながら、その三年間で、出会った連中といえば、最初から夢のない連中ばっかりだったよ。

そんなことが、なぜ、わかるかって?
全員の顔に描いてあるからさ。



自分の夢の無さを、苦笑で、ごまかしているような連中ばっかりだったよ。
この顔を見れば、わかるだろう?




でも、高校三年間なんて、人生で、一番、夢と希望にあふれている年齢だぜ。


もう、少し明るい顔をしてみてもいいんじゃないか?
卒業したこいつらが、目黒区や渋谷区などの西東京の路上で、平然と歩いていたら、石をぶつけてもいいよ。
法律が許さなくても、俺が許可するよ。

それが、俺の見方だった。


勉強、スポーツ、いじめ。

結局、平凡な都立高校生のやることなんて、この三つだけだったよ。

もちろん、おれは、三つとも見事にやらなかったし、やる必要を感じなかった。

おかげで、卒業した今――語りたくなるような話題は――これから話す、次の3つを除けば、ほとんど無いね。

まず、一つ目について、語っていこう――。
クラス担任の体育科の女性教師が、特別な美人だったということさ。




彼女の名前は、緑川有布子。30才。

横浜体育大の体育学部新体操学科卒業だそうだ。


おまけに肉体美も相当なもの。
いわゆるセクシー・ダイナマイト!――才色兼備ってやつだね。





まあ、見るからにオーラはある女性だったよね。

彼女が、通るたびに陰気で退屈な教職員廊下が、ぱっと明るく見えた。

大したものだった。
これは、凄い――とすら思えた。



こういう資質は、単なる座学では身につかない。


生まれついての肉体派美人の素質を持って、生まれてきたんだろう。


当社比――じゃなくて、当人比だがね。
この点は、かなり自信を持って言えるだろう。
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