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異世界3
しおりを挟むユーリは仕事を始めてから2年目だったという。一応会社に顔を出したら、日常となっており、このまま仕事をしなくてはならなくなったと電話をしてきた。コソコソっと周りに聴こえないよう、小さな声で話している。
「すみません、アリオス様。帰りは19時くらいになります。お昼は冷蔵庫の物を適当に食べててください。それか、引き出しの1番上にお金がありますので、コンビニとかでお願いします」
「ああ、大丈夫だ。適当に何とかする」
俺は返すと、かちゃりと受話器を置いた。
電話というのは家に置いてある通信機器で、離れた場所からかければすぐに話せるという便利な物だ。スマホというものから目の前でかけてもらった時は心臓がいくらあっても足りないほどドカドカと胸を打ちつけた。
それにしても便利な物だ。すぐに伝えたいことが伝えられる。
自分は特にやることもなく、テレビでも見るか散歩くらいしかない。この世界にこのままいるとしたら、俺は何ができるのだろうか。幸い、言葉だけは通じるようだが。
俺は退屈になり、鍵を持って外に出る。いつもは仕事で何かしら忙しくしていたもので、こんな降ってわいた休日のようなものは困りものだ。かと言ってここで急に働けるわけでもない。
コンビニでも行くか。俺はこの世界のお金をポケットに入れ、外へ出た。
信号を渡る。
人型のランプが青になったら通っていいらしい。歩くにも細かいルールがあるようだ。俺は青になると黙々と歩き出す。
すれ違う若い女性がちらりと俺を振り返る。少し心配になるが、見た目おかしくはないはずだ。外国人が珍しいとユーリは言っていた。
ユーリがいない。
この世界でユーリがいなかったら俺は路頭に迷っていただろう。
自分の世界でやってきたものと似たような仕事をすればなんとかなるだろうか?
俺は考えることしか出来なかった。
コンビニに着くと、俺はフラフラと食べ物を見ることにした。とりあえず文字は読めないが、赤い色の麺が気になったので、それをとってみた。あとは何かの黄色いフルーツの乗ったカップに入ったケーキがあったので、それも手にした。
それをあの店主らしき若者に渡すらしい。
「980円です」
ピッピッと何かを施し、店主が値段を言ったので、慌ててポケットからお金を渡す。
「温めますか?」
と聞くので、思わず「うむ」と答える。店主は何やら銀色の箱に麺を入れ、ピッピッとボタンを押す。
ウィーンと何かの音が聞こえている間に、釣りを渡してくる。小さい袋には透明のスプーンとケーキが入れられ渡された。
四角い箱からピーピーと音がすると、店主はフォークとそれを袋に入れ渡してきた。
温まった麺に驚きたかったが、我慢して外に出る。
なんだこれは! 温まっている! 少しの時間で温めることが出来るのかと驚いた。
この世界の文明はすごい。まるで魔法のような事ばかりだ。
初めてのことばかりで、頭がパンクしそうだ。
家についてから、コンビニで温まった麺が昼まで温かいわけでない事に気づいた。まあ、冷たくても構わないが。
冷蔵庫というものの説明はされたので、とりあえずケーキだけそこに入れておく。この後の退屈に、俺は耐えられないでいた。
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