異世界から来た女は魅力的なので

告白

　次の日、俺はユーリの元へ向かった。馬車に乗っていくが、ふと、ユーリの世界の乗り物があったらすぐに辿り着けるのになと思う。
　しばらく走らせて、やっとユーリの邸に着いた。ユーリの侍女が出迎えてくる。

「突然すまない、ユーリはいるか？」
「はい！　意識を失っておりましたが、先程もどりました。いつもと変わりないですよ」

　笑顔でハキハキと答えてくれた。その様子にホッとする。

「どうぞ、お上がりになってください」

　侍女が迎え入れてくれる。俺は遠慮なくそうさせてもらう事にした。



　トントン。
　ユーリの部屋の前でノックする。

「はい、どうぞ」

　ベッドにユーリは横になっていた。俺よりも少し長く意識を失っていたらしい。目の前にいてくれた事がたまらなく嬉しい。
　俺が来たので体を起こそうとしたが制止した。

「ユーリ、無事だったのか？」
「あっ、はい……では、あの事は夢ではなかったんですね？」
「多分……」

　やっぱりユーリも元の世界へ戻っていたようだ。あれがユーリのいた世界。

「カレー、うまかったな。コンビニとやらの料理も食べたかったぞ。ケーキも食べ損ねた」
「ふふ、結婚したらここの材料でも何かお作りしますよ」

　ユーリが言った後、顔を真っ赤にする。上掛けを両手で目の下まで上げて隠す。

「ごめんなさい、気が早かったですね」
「ははは、気にする事ないぞ。俺もそのつもりだ」

　ふ、と目が合い、2人で優しく微笑み合う。ユーリはゆっくりと体を起こした。

「あれは、ユーリの世界だったんだな」
「はい！　もうこちらに慣れてしまって、ちょっと落ち着きませんでした」

　ユーリはハッと思いつくと、スカートのポケットから何やら取り出した。

「あの、これ……仕事の帰りに印刷してきたんです」
「ん？」
　
　手渡されたのは、ユーリと一緒に並んで撮った写真というものだった。退屈していたときに、そういえば撮った気がする。機械から怪しい光が出たので面食らったのを思い出した。

　俺とユーリは、その写真の中で幸せそうに笑っていた。

「すごいな。この国の絵描とは比べ物にならない。全てがそのままの状態でうつされてるのか」
「はい……」

　俺は写真を返すと、ユーリに向き直る。表情は嬉しそうだ。しかし思う所がある。

「あっちに残らなくて良かったのか？　あのまま俺に触れなければ、ユーリの世界に残れたんじゃないかと……この世界の比じゃないほど文明も発達していて便利だ。そして生まれた世界なんだろう？」

　ユーリは目を見張ると、すぐに小さく首を振った。ほのかに笑みを浮かべている。

「アリオス様のいない世界に、魅力なんかありません」

　どきりと胸を打った。
　ユーリは本当に強い女なんだなと。

「そうか、では、俺とずっと一緒にいろ」

　俺はそういうと、ユーリの側へ寄る。


「愛してる」


　今まで照れ臭くて言えなかった言葉。
　俺も、ユーリだから魅力があるんだ。



　髪を手に触れ、額にキスをする。

「この艶やかな黒髪も」


　目元にキスを落とす。

「この黒曜石のような瞳も」


　頸を優しく吸う。

「この絹のような肌も」


　俺はユーリを抱きしめて、伝える。


「その強い心も」



「全部、愛してる」








　数ヶ月後、俺達は結婚し、ちょうどその頃子を身籠ったとわかった。






　俺達の新しい世界が、またここから始まる。







　　　　　　　　　　　　～fin～