上 下
29 / 32

夢の中

しおりを挟む

 特にする事もないので、テレビでも見よう。

 テレビを見ていると、ドラマとかいう奴で少女が過去に戻るとかいう内容のものがあった。まるで今の自分と合わせてしまい、感慨深い。
 最終的にその少女は元の時間に戻り、元あった生活に戻るというエンディングだった。

 ユーリがなかなか帰ってこない。
 俺は少し睡眠不足で眠くなり、うつらうつらとしてきた。
 ベッドに潜り込んで、ユーリの残り香を感じながら睡魔に打ち負けた。



 俺は夢を見る。
 ユーリの世界に来てしまったが、本当は元の世界に戻りたいのだ。ユーリは俺の世界に対応出来たが、俺はどうしてもこの世界が退屈でたまらない。
 ゆらゆらと重力のない空間で、俺は仰向けにだらんと腕を垂らし身を任せ漂っている。
 すると、暗くて遠い場所からユーリが近づいてくる。

「アリオス様」

 ユーリの鈴のような声に俺は目を覚ます。

「帰りましょう、アリオス様の世界へ」

 何を言ってるんだと思いながら、ユーリの方へぼんやり視線だけ向けると、力の抜けた俺の手を握り締めてくる。
 ユーリの熱が伝わってくる。

「風が来たら帰れます」

 ユーリが言った途端、目の前の無の空間に穴が開き始める。夜の闇の穴だ。
 ビュウゥゥーーーーッと、風が突如強くなる。

 俺の手をユーリが握りしめたまま、俺達はまたその穴の中に吸い込まれて行った。

「キャアァァァァ!」
「グッーーアァァァ!」




     †††



 ゆっくりと瞼を開けると、見慣れた空間だった。
 広い部屋にソファが置いてあり、部屋の隅には華美な花が飾られている。
 俺はベッドから身を起こすと、体をチェックした。
 服が、夢の中の服だった。

「あれは……夢では無かったのか?」

 じゃああの車だとか店だとかテレビだとか、異世界のものだったのか?
 状況が読めない。

「あ、アリオス様ー!!」

 涙目でユーザが目覚めた俺に駆け寄ってくる。

「心配してたんですよ! 庭園で行方不明になって丸一日見つからなくて。見つかったと思ったら、意識不明なんですから!」

 そういえば、ユーリがこの世界へ来た時も、意識がなかったとか言っていたな。

「にしても、随分と地味な服をお召しになってますね?」

 俺の着ている服をみて、ユーザが不思議そうにする。ペタペタと上衣の布を触り、感触をチェックしている。

「不思議な手触りですね。柔らかくて伸びやすい。動きやすそうです」
「そうなんだ。似たような糸さえあれば、開発出来ないかなと思うんだが」
「いいですね。専門のものに尋ねてみます!」
 
 ユーザはすぐにこの部屋を出て行った。
 この世界に戻った途端、商いの話に戻る。やはりこうでなくては。カレーとかいう食べ物も作れたらいいのだが、難しいか?

 しかしユーリ、ユーリは戻っているんだろうか? この屋敷には気配がない。
 後ほどユーザに調べに行ってもらおう。いや、自分で行った方が早いか。

 俺がいつもの服に着替えようとしていたら、突然来客が来たようだった。
 タイミングの悪い……

 仕方なく俺は、着替え後応接室へむかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪

奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」 「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」 AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。 そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。 でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ! 全員美味しくいただいちゃいまーす。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!

奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。 ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。 ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...