異世界から来た女は魅力的なので

らいらい

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婚約へ

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 いよいよエルトー伯爵が帰って来たそうだ。俺たちは愛し合っているが、王子からの婚約の希望と被ってしまい、どのような判断がなされるのか正直不安だった。


 俺はエルトー伯爵により呼び出され、屋敷に訪れた。
 テーブルには華やかすぎないが質の高い食事が並んでいる。卿の趣味が垣間見えるようだ。

「では、アリオス卿は数ヶ月ほど前からユーリを見初めていて、近頃話すようになったと」
「ええ。初めて見た時は正直、外見の珍しさで興味をもち、夜会での振る舞いで惹かれ、次第に好意を持って」

 俺はユーリとの馴れ初めや、今まで出かけていた事などを話した。もちろんそういったことをした事は伏せて。

「ふむ。ユーリには君といずれは結婚したいとも聞いている……だがなぁ、王子から婚約を希望されているのだよ」
「はい、それは聞き及んでおります。しかしながら、私はそれでもユーリを、いずれは妻として迎えたいのです」

 俺は今までなく真摯にエルトー伯爵に頭を下げた。
 伯爵は面をあげてくださいと慌てて止める。そして、静かに言葉を紡ぐ。

「分かりました。私は結婚は家同士の道具とは思っていません。娘が望む相手と、婚約してもらいたいと思ってますよ」

 自然と、ほうっとため息が出る。
 俺の緊張の解けたのを垣間見たのか、エルトー卿はにっこり微笑んだ。

「まあまあ、あとは美味しく食事をいただきましょう」
「……はい、頂きます」

 柄にもなく緊張していた。
 やはりユーリを育てていた父親だ。柔らかい人間性にホッとなった。
 目の前の食事も少し喉に通りにくくはあるが、食べてみると美味で意外に食べることができた。

「ふむ、こうしてまた一人息子が増えるのは喜ばしいな」

 ニッコリと微笑んで食事に手を伸ばしていた。



     †††



 後日、婚約式を行うことになる。その後婚約を公表し、世間に知らしめる事になる。
 数日が待ち遠しい。
 トントン拍子すぎてえも言われぬ不安もあるが。


 今日は剣技の練習があり、城に訪れていた。
 一通り練習をし、少し息が切れている時見たことのある顔が通りかかる。
 ねっとりした話し方、美しいがどこか色気が過剰なエイダだ。

「あら、アリオス様、ご機嫌いかがです?」
「ああ、それなりに」
「そうですの。私これからノルティ殿下にご挨拶してきますわ」

 ふふんと鼻にかけ、いけ好かない態度を隠さない。
 なぜこの間はあんな事をさせたのか聞きたいが、婚約前にトラブルを起こしたくない。仕方なく当たり障りなく過ごそうと去ろうとする。

「この前ユーリ様がいらしたので一緒にお酒をと勧めましたけど、いろんな殿方に誘われてお話してとーっても楽しそうでしたわ。おモテになる女性を婚約者になんて、大変ですわね。ご機嫌よう」

 男に襲わせておいて、この言い草に震えるほどの腹立ちを隠せない。自分があの時いたからよかったが、そうでなかったらと思うと、怒りで血管が膨れ上がるようだった。
 俺は深呼吸をすると、忌々しげに睨みつける。

 あまりの腹立たしさに、手にしている剣の先を地面に叩きつけた。

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