上 下
18 / 32

噂2

しおりを挟む

 お約束の展開だが。

 第一王子の婚約したい相手というのが、ユーリだった。

 どこかの夜会でユーリを見かけたらしく、焦げ茶の髪に黒い瞳が珍しく、さらに可愛らしい顔立ちだったのもあり、見染めたそうだ。
 しかし周りには我が我がと女性達にかこまれ、声がかけられなかったそうで。

「……どっかで聞いたことある話ですね?」

 ジト、とユーザがこちらを見る。
 ま、よくある話だろうとそこには俺はスルーした。

 とはいえここで大問題だ。
 俺たちはまだ正式な婚約をしていないため、ユーリを王子が婚約者とする事ができてしまうのだ。

 まだエルトー伯爵が自宅に戻ってないという事で、俺からの手紙も届いてない。つまり、俺と王子の婚約したいという連絡が、同じ日になってしまうという。

「普通に考えたら不利ですよねぇ」

 空気も読まず、ユーザは独り言を言う。グサリと来ることも平気で言うのがこの男だ。

 ましてや一国の王子だ。これは本気で参る……
 ユーリは俺を好いていてくれてはいるが、エルトー伯爵がどう思うのか……
 机に頬杖をつくと、髪をグシャリとする。

 ユーリ、ユーリはどうするのか。俺は思い立ち、彼女の元へ急ぐ事にした。
 ユーザは、ですよねーとばかりにひらひらと俺に手を振ってくる。



     †††



 エルトー邸についた。
 御者には待つように伝え、ユーリを訪ねる。

 ユーリは俺が来たのを知ると、嬉しそうに迎えに出てくれた。

「アリオス様、来てくださったんですね」

 俺はユーリの顔を見ると、何となくホッとした。

「では、中にお入りください」

 ユーリは俺を慣れたように迎え入れてくれる。サロンに通してくれた。

「噂のことですよね?」
 
 サロンのシンプルなソファに向き合って座り、率直に聞いてきた。

「ああ。王子がユーリを所望しているのは本当か?」
「……ええ。ちょうどアリオス様と同じ日に手紙が届いて……侍女たちは王家からの誘いで舞い上がってしまって」

 困ったように頬に手を当てて悩ましい顔をする。

「でも私は……」

 ユーリは俺の目を見つめると、テーブルの上の俺の手を握りしめてくる。

「ありがとう、ユーリ。安心した。正直、分が悪いとは思っている」

 地位的に。

「お父様が帰ってきたら、私からもお話してみます」

 握りしめられた手は小さく、しっとりと温かい。指をそっと撫でると、ユーリは下を向いた。視線はドギマギと左右に揺れ、緊張しているように見える。

「ユーリ」
「あの、私の部屋に街で買ってきた本があるんですけど」
「あぁ、見せてくれ」

 急に空気が変わる。俺が望んでいる事がわかるのだろう。拒否せず、うまく話を合わせてくれる。
 再び侍女たちを払い、ユーリの部屋に入った。


 ベッドに目をやると、前に買った大きな犬のぬいぐるみが枕元にある。
 この前は余裕がなくて気づかなかったが……

 俺はユーリの瞳を真っ直ぐ見つめる。
 ユーリも俺の瞳を見つめ返してくる。

 ユーリのベッドに俺は腰を下ろすと、手を差し出してユーリに膝に座れと促す。

 横抱きにすると、ユーリが首の後ろに腕を回してきたので、そのしっとりした唇にそっと口付けた。
 ちゅ、と何度か下唇をはみ、粘膜のあたりを舌でぺろりと舐め上げる。

 舌を深く入れ撫でるようにゆっくりとからめ、片手はやわやわとふくらみを揉みあげる。

「あふ……ん……」

 と、艶っぽい声でユーリが鳴く。
 深いキスと触れられているのがたまらなくなるのだろう。

 俺はスカートをめくり上げて腹部も撫で回す。そうっと触れたり、掴むように触れたり、思うがままに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!

臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。 そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。 ※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています ※表紙はニジジャーニーで生成しました

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜合体編〜♡

x頭金x
恋愛
♡ちょっとHなショートショートつめ合わせ♡

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

処理中です...