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プレゼント2
しおりを挟むユーリはそう言うと、恥ずかしそうに頬を染めて下を向く。
「いや、驚いただけだ。少しこのまま街を歩こう」
絞り出すようにして、俺は言った。
自分の手に伝わってくるユーリの暖かさに、頭がグワングワンしてくる。
落ち着け、俺。
手を出したくなる衝動に言い聞かせる。今日はそういうのナシで安心してもらうために誘ったんだから。
「アリオス様! そういえばこの間ユーザ様が半月後に誕生日だと侍女のリュナさんに話していましたよ。よかったら、ユーザ様にも誕生日プレゼントとかいかがですか?」
唐突にユーリが提案してくる。
そうか、ユーザそろそろ誕生日なのか……
「そうだな。本当にアイツには頭が上がらない。何かプレゼントしよう」
俺はアクセサリーショップに向かう事にした。少し大きな通りに行くと、城下らしく高級な店が立ち並んでいる。その一角のアクセサリーショップに訪れた。
俺はカフスが並んでいる場所のあたりで立ち止まる。
「ユーリはユーザといったらどれが似合うと思う?」
「そうですね、このブルーの石ならユーザ様と同じ瞳の色をしていてお似合いだと思います。アリオス様はどうですか?」
ふむ、デザインもシンプルだけど華やかさもあり、ユーザには似合いそうだ。
「じゃあこれ、プレゼント用に」
と、店員に頼む。その間に、ユーリは他のアクセサリーに見入っている。一応興味がないわけじゃないらしい。
ふと、視線の端にグリーンの小さな宝石のついたネックレスがある。俺の目の色と同じ石。
俺は思わず、コッソリとこちらもプレゼント用に頼んだ。
常に一緒にいられるわけではない。
俺がいつもいると思えるように、彼女につけてもらいたいと思ったのだ。思いつきだが。
プレゼントが包まれると受け取り、代金を支払う。
今日は、なんだかいつもと違って穏やかな日を送れている気がした。
満足感でいっぱいのまま、店を出た。
「今日はありがとう」
「私も楽しかったので」
俺が素直にお礼をいう。
しかしユーリは驚きもせず普通だ。
「それと……」
包まれたプレゼントの一つをユーリに渡した。
「えっ」
思いもしてなかったようで、目を丸くして驚いている。
「アリオス様……」
「俺がいない時はそれが俺の代わり」
俺はそう言うと、元の道へ歩き出す。そろそろ御者が来ているはず。
長い事一緒にいると、色んなことをしたくなるので、出かけるのはあまり長くない時間にした。
「……いつも、肌身離さず持ってます。ぬいぐるみはずっと持っていられないので」
笑顔だが、ユーリは今にも泣きそうな顔だった。嬉しかったと思っていいのか。女はよくわからない。
歩きながら、今度は俺から手を繋ぎ、馬車が来ていることを確認するとそちらへ戻った。
馬車に乗り込みしばらく走らせると、ユーリが突然立ち上がり、しなやかな細い手で俺の頬を覆うと目を瞑り、小さくちゅ、と唇にキスを落とした。
すぐに座って真っ赤になってそっぽを向いてしまったが。
俺は面食らって、ただユーリを見ていた。今日は、手を出さない。
……胸が弾みすぎて死にそうだ。
愛おしい。
こんなしんどい日も大事だ。
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