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プレゼント
しおりを挟むこの所ずっとユーリには身体を求めてばかりになってしまっている。
俺は嬉しいが、女からしたら身体目当てと思われてしまうような気がする。なので、街に出てユーリにプレゼントをしようと画策した。もちろん手を出さないと決めて。
休みを取り、ユーリと自分の都合に合わせ、王都で買い物しようと誘った。
彼女を誘うと喜んで受けてくれた。
出かける当日。
ユーザはため息混じりに行ってらっしゃいませ、と俺を見送った。
俺が遊んでる間、ユーザが仕事を回すのだ。ほぼ俺の代わりだ。
俺の仕事もユーザさえいれば回せてしまう。よくデキる男だ。
俺は馬車でユーリの邸宅に向かう。
邸からはそれほど離れてはいない。
エルトー伯爵は忙しくされているらしく、今日は留守らしい。いたのなら挨拶くらいしたかったが。
ユーリを拾うと、王都へと向かって走り出した。
馬車の中ではユーリが隣に座り、外を馬車の窓から眺めている。
横顔を見ていると、ついちょっかいをかけてしまいたくなるが、今日は我慢だ。
「それにしてもお買い物なんて珍しいですね。何か欲しいものでもあったんですか?」
流れる景色を見たまま、ユーリは俺に問う。
「今日はお前と買い物したくて誘ったんだ」
俺がそう言うと、ユーリの耳がちょっとだけ赤く染まったように見えた。
するとこちらを警戒心も何もない無邪気な笑顔で振り向いた。
「そうなんですか。嬉しい」
素直で思わず抱きしめたくなるが、今日はとにかく我慢。
純粋にユーリと出かけるため。
「あっ、見えてきましたよ! あんな所に出店までありますね」
わ、すごい! と嬉々として街を見ている。普段は王都のには来ないらしく、見るものが初めてのものばかりのようだ。
笑顔を見ると、連れてきた甲斐があったなと嬉しくなる。
「後であそこの人形屋さんのところに行きたいです!」
「よし、じゃあそこに行こう」
ちょうどユーリが気になる店が見つかったようだ。街の中央に馬車を止めると、先程の店へ歩き出した。
「あっ、あそこですよ! アリオス様」
「ぬいぐるみか。こういったのが好みか?」
顔をほんのり染めて、はい……と頷く。
「私のいた世界でも、ぬいぐるみがあったんです。懐かしいなって思って」
と、俺の服の袖を掴みながら、周りに聞こえないように耳元で小声で話してくる。俺の腹の辺りがムズムズっとする。
こちらの気も知らず、無邪気に。
犬やネコのぬいぐるみなど、さまざまな動物のぬいぐるみが置いてある。ユーリはどれにしようとなかなか買うものを決めない。俺は呆れながらも、ユーリが選ぶのを待つ。
「これ可愛い!」
手に取ったのは、犬の大きめのぬいぐるみだった。
俺は店主に代金を支払うと、ユーリにぬいぐるみを手渡した。
「えっ」
「これは俺からのプレゼントだ。受け取ってくれ。それとも、アクセサリーとかの方がよかったか?」
ふるふると首を左右に振り、犬のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
「アリオス、ありがとう」
嬉しくて仕方ないとでもいうように、頭を撫でたり背中を撫でたり、ぬいぐるみの毛並みの気持ちよさを味わっている。幼い子供でもないんだが、これでいいらしい。
あの時は官能的な姿を晒すのに、普段はこのように幼なげで。
どちらも彼女だと思うと不思議でならない。
考え事をしていると、ユーリが俺の手を何気なく握ってくる。
ーーーー!
ドキリと大きく胸が脈打つと、その後は激しい動悸が止まらなくなる。彼女から自分を求める仕草などされたことがなかったので、俺は混乱していた。
「あの……せっかくふたりでお出かけしてるので、手を繋いで歩きたいなって……」
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