3 / 32
湖畔にて
しおりを挟む仕事がひと段落したある日、休みが取れたので、ユーリを街の西にある丘の湖へ誘った。
ユーリは薄い水色の裾の広がりの少ない丈は膝ほどのドレスを纏っており、軽やかで動きやすそうだ。
小さめの馬車に俺たちは乗り込み、狭い中二人で並ぶ。
ガタリゴトリと馬車の音。
俺は気になっていた、ユーリの元いた世界の話を聞いてみた。
車という金属でできた速い乗り物があったり、空を飛べる飛行機などがあったそうだ。
この世界よりも文明が進歩しているらしい。
「便利な世界だけど、今のこちらのゆったりとした世界も好きです」
ニコッと屈託のない笑顔を見せる。
こちらの世界の女では、なかなか見ない屈託さだ。利権などが関係するため、媚びた笑顔だったりする。
ガタン、と、小石を踏んだのか馬車が大きく揺れた。
「あ……っ」
ユーリの意思に反して体が傾いた方、つまり俺の方に倒れて抱きつく形になる。
強く抱きしめたら折れてしまいそうな柔らかく細い肢体が、俺を誘惑してるかのように絡みつく。
「今日は、随分と積極的だな」
俺がユーリの腰に触れながら意地悪く笑うと、パッと離れてそっぽを向き膝に両手をおき、顔を真っ赤にする。
「積極的じゃありません」
むぅ、と口を尖らせる。
「冗談だ」
プッ、ハハ……と、ユーリの反応に俺は頬にかかる前髪をかき上げ、思わず笑った。
†††
湖のほとりに着くと、従者に昼過ぎに迎えにくるよう伝えた。馬車を見送ると、湖の周りを二人でゆったり歩く。
木々は青々とし、清々しいほど晴れて空は天高い。湖はキラキラと小さく波打って輝き、太陽の光を美しく反射している。
風がユーリの焦げ茶の髪を遊ばせるたび髪を押さえるので、俺の視線は自然と彼女の頸(うなじ)に向かってしまう。
白い肌。
透き通るほど艶やかで滑らかな頸。
髪を抑える指はしなやかに細く女性らしい。
水色のドレスからのびるたおやかな足は、太すぎず痩せすぎてもいず、歩くたびにふわりと揺れる裾からチラリと覗き、俺を誘惑する。
俺の視線に気づいたか、ユーリは俺の一歩後ろに下がる。
目は伏せがちで、少しキョロキョロと周りを見ている。
またそういう恥ずかしそうな姿が俺をそそっていることに気づいていない。
俺はユーリの腰に手を回すと、隣に歩かせた。視線を少しだけ下げると、胸元は広く開いてはいないが、程よく鎖骨が覗いてふっと触れたくなる。
シタイーーーー
欲望のままに、腰に当てていた手をグイと力を入れ引き寄せる。驚いた彼女をそのままに、体を少しかがめて鎖骨のラインにキスを落とす。
ふんわりと彼女の香りが頸から漂ってくる。
チュ、とわざと聞こえるように鎖骨から頸へとキスをつなげていく。
「あ……っ」
ユーリは耳まで真っ赤になると、俺に支えられてやっと立っている。
「キスが好きか?」
俺は口角をつりあげ、困らせるように言った。
ユーリは返答に困り、目をぎゅっとつむったまま固まっている。
気にせず俺は頸をちゅ、と吸うと、チラチラと小さく舌を這わせる。
「ん……あっ……」
這わせていた舌を頸から唇にうつし、少しずつ割り入れていく。深く、深く、緩めず、力強く。
8
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。

【R18】仲のいいバイト仲間だと思ってたら、いきなり襲われちゃいました!
奏音 美都
恋愛
ファミレスのバイト仲間の豪。
ノリがよくて、いい友達だと思ってたんだけど……いきなり、襲われちゃった。
ダメだって思うのに、なんで拒否れないのー!!

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる