ダサい勇者

マズいぞダサ勇者

　俺は勇者だ。

　ちょっとマズいかもしれない。
　俺は帰ったらステキ村人になる予定なんだが、よりにもよって姫さんが俺を勇者と紹介してしまい、王様に勇者フラグが立ってしまった。

　勇者よ、とかありきたりな事言ってるけど、この王様達はどれだけの勇者と呼ばれる者に頼みごとをしているんだろうか。
　勇者じゃないんでちょっと、とお断りしても、まぁまぁまぁまぁと流される。

　とりあえず美少女は王様にカエル退治のおこずかいをもらい、嬉々としている。

　んじゃまーこの辺で……と、片手を上げてさりげなく立ち去ろうとする俺。

　だが、王様は俺の行動を無視して祝いじゃ祝いじゃ、とか城あげて祝おうとしている。

　助けてください、さすが美少女の親だよ。まったく人の話を聞いてねえ！



　そして、夜が明けたーー


　はぁー、もう勇者やだ。
　早く帰りたい。
　さめざめと涙する俺。
　こんなダサい勇者の格好でお披露目されたくなかった、酷い。

　俺は城のバルコニーから美少女と城下の民衆のみなさんに小さく手を振る。

　この城では俺は勇者かもしれないけど、俺は村に帰ったら村人するんだ。

「皆よく聞け、今ここから、この勇者と我が娘アリアが冒険の旅に出る。必ずや魔王を倒し、ここに戻る事を約束しよう！！」

　うぉー！！
　と拳を上げ、民衆が盛り上がる。

　いやいやいやいやいや！
　何言っちゃってんのこの王様！？
　そんな話一つもしてませんけど！？
　なんで勝手に約束しちゃってんの！？
　
　ていうか美少女はアリアって名前なのか。初めて知ったわ。

　俺はひきつった笑顔で目の前の民衆のみなさまにさらに小さくに手を振った。

　みんなこんな貧乏くさい勇者でいいんですかね？疑問は持たないんですかね？むしろそっちの方が疑問なんだが？

　ああもう誰か助けて。
　目の前がクラクラしてきた。