ダサい勇者

獣ダサい勇者

　俺は勇者だ……

　居てもいなくても変わらないへっぽこ勇者だ。目から何か光るものがあるのは気のせいだ。

　それは置いておいて、リアルフロッグを退治した（美少女が）。
　ので、そのまま付き添いで隣の王城まで向かう。

　はたして俺の存在が要るかいらないかはわからないが、美少女が所望しているのでとりあえず付き合う事にした。

　一日目に倒してしまったので、あと二日はひたすら王城に向かって歩くのみ……

　鍋の蓋が消え去ってしまい、ダサさは一つ解消されたが、また初期のみの装備になってしまった。


　彼女は相変わらず俺を置いてズンズン先に進む。
　体力ないという割にはペースが早い。
　恐らく自分自身ではか弱い美少女の立ち位置なのだろう。

　俺から見たらメンタル体力威力全てにおいて最強の初心者だと思うのだが。
　横目で冷めた視線を彼女に向ける。

　俺は軟弱だし、本当のか弱い美少女の方がいい…
　ダサい勇者どころかダメ勇者か。


　延々と歩いてるとただただ飽きてきて、あくびしながら道の脇の石のあたりに目をやると、自生している薬草を見つけた。

　俺はラッキーとばかりに木の剣で刈っていく。荷物ぶくろから布袋を取り出し、草を詰めていく。
　これを怪我した時に使おう。

　結構な量生えていて、布袋は満タンになった。

　と、のんびりやっていたら案の定美少女とはぐれていた。まぁ想定内。

　もうこのまま家に帰ろうかな？　と、悪魔の囁きがあったが、一応勇者なのでそれはやめておく事にした。

　一人歩いていると安定の魔物との遭遇。

　オオカミ型の獣が、待ち伏せをするように目の前で仁王立ちしている。
　こいつ、俺を舐めてるな？
　俺は勇者だ、こんな敵なんて事ないぜ？

　俺は木の剣を前に構えると、ジリジリとオオカミににじり寄る。オオカミはうーっと唸りながら、いつ飛び出してもおかしくない状態である。

　ある程度近づいて、ここだ！　という瞬間、オオカミに向かって走り出し、体のど真ん中を一突きする。

　ザシュッという音と感触と共に、オオカミはその場で倒れた。
　よし、俺カッコいい。

　オオカミのすぐ横に宝箱が現れ、俺はそれを開けた。


　皮。

　……あー、獣の皮だね。
　鎧の代わりに着るやつ。
　この旅人の洋服よりは防御力はある。
　あるが……

　俺はその宝箱をそっ閉じした。