ダサい勇者

森の中のダサい勇者

　俺は勇者だ。
　昨日はとりあえず安宿で泊まって気力体力回復した！
　この際、水ぐらいいくらでも取ってきてやるぜ。

　宿屋から右手には木の剣、左手には鍋、このあからさまにダサいカッコでチェックアウトするのはかなり恥ずかしかった……

　まぁ、しばらくは森の中。
　人と会う事などない。
　旅の恥はかき捨てってな。気にしない事にする。

　俺はどんどんと森の中を突き抜ける。
　道とかないし、とりあえず真っ直ぐ行けば後ろ向いて帰れば迷わないだろうと。

　今日の俺、カッコいい？

　なんて慢心していたら、モサモサと生えた草に足をとられ、おもっくそスライディングでこける。

　顔面まで土だらけ、服なんかもう葉っぱまみれでもある。
　こんなダサい勇者誰にも見せられねぇ！
　
　俺は何もなかったように口笛を吹きながら颯爽と歩き出す。

　この際誰かと会ったら魔物に襲われてかろうじて倒したって事にしよう。
　勇者のイメージ大事だからな！

　1時間ほど歩いたか？
　ただひたすら真っ直ぐ直進してきたが、小腹が空いてきた。
　一応非常食のパンは持ってきてあるが……
　荷物バッグから取り出しはしたが、まだ水源にたどり着けてないのに食べるのは早計か？

　そうこう悩んでる隙に、ワイルドカッコーが飛んできて、俺のパンを光の速度で奪い取って行った。

　うそーん！

　俺は勇者だ。

　依頼を断れず、こんなところに来た自分を軽蔑した。

　知ってるかい？
　空腹になるとネガテイブな思考になるんだぜ。
　……うっ……涙が……

　鳥の魔物にパンを取られて泣く勇者なんかこの世にそうそういないぜ？

　ああ、俺、世界にそうそういない勇者なんだ。
　このままこんな森の中でガイコツ化するのか。ダサいな。

かわいいお姉さんたちに囲まれて命を全うしたかったぜ。
サヨナラ、未来の恋人たち。