ダサい勇者

ダサかった勇者

　俺は勇者だった。

　ダサいのが嫌で一日で村人になった。

　そもそも勇者ではなかったのかも知れない。

　宝箱に剣は入れているが、旅人の洋服はまだ勿体無いので着ている。

　そんな勿体無い思考がダサい。

　そんな俺が勇者であっていいはずがない。
　だがしかし、昨日は勇者になると決めたんだ。

　今日は村人だが、やはり勇者になろうと思う。

　宝箱から剣を取り出すと、右手に持つ。
　立派な勇者の出来上がりだ。

　俺はやはり勇者になるべき男だったのだ。

　この小屋みたいな家を出た。
　眺めると、木でできていて風でも吹けば壊れそうだ。

　こんなダサい家から勇者は誕生するだろうか？

　まあそういう事もあるだろう。
　誰にも反対はさせぬ。

　そこら辺を歩いている村人を捕まえる。

　俺は勇者だ。

「この村はホゲホゲ村だ」

　村人は答える。
　知ってるわ。
　この村で生まれた勇者だからな。

　ホゲホゲ村出身の勇者とかダサい。ダサすぎる。

　俺は頭を抱えたが、このダサさは俺のせいではないのでまぁいい。

　他の村人が、スライムのかけらが欲しいと頼んできた。
　俺は勇者だからな。
　仕方ないから村を出てスライムを倒しに行く。

　剣を振り当てると、ぶよんぶよん切り刻まれるスライムを眺めながら俺は気づく。

　よく考えたら、これってただのパシリなんじゃないか？ものすごいダサい。

　勇者って筋肉バカなんだろうか？
　上手いことパシられて、ありがとうで終わる。

　俺はやっぱり勇者に向いてないと思った。

　まあ近所付き合いもあるし、スライムのかけらだけは持ち帰ることにした。

　勇者ってやっぱりダサい。

　帰ったらやっぱり村人に戻ることにした。