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部屋3
しおりを挟むまた、流されてしまった。
隣で体を曲げて寝ているリョウの髪を一筋触れる。
いつもはサラサラの髪だけど、汗をかいたのかしっとりしている。
私は下着とワンピースを着て、ベッドのわきに座った。
膝を曲げて、抱えるように。
リョウはすやすやと寝息を立てて寝ている。
この所こんな感じが続いて、付き合うってなんだろうとは思う。言いたいこともあまり言えてないから気持ちがモヤモヤするのかな?
リョウのことは好きだけど、モヤモヤが少しずつ大きくなってる気がした。
「ごめん、俺また寝てた?」
うとうとと膝を抱えて目をつむっていたら、リョウが目を覚ましたのか声をかけてきた。
「んー、そうだね。寝てたからこっちで座ってた」
「一緒に寝てればよかったのに」
「狭いから寝れないよ。リョウデカいし」
ベッドの長さより背が高いので、膝を曲げて寝てる状態だもん、一緒には寝れない。
「そっか、ごめんごめん」
ぱぁっといつもの笑顔で手を合わせて謝っている。
「それより服着なよー」
気恥ずかしくなって私は横を向く。言われてリョウは慌てて服を着る。
「この後どっかご飯食べに行こうよ」
袖に手を通しつつ、リョウが言う。
どこも行けなかったし、お昼になってたのでそうだねーと了解する。リョウはあ、そーだと続ける。
「隣町の商店街のパスタ屋に行こうよ」
電車で一駅行くと、この町より栄えている商店街があり、百均やゲームセンター、カラオケ、食べ物屋、携帯ショップなどいろいろな店が集まっている。
その中でもパスタ屋は美味しいので女の子に人気で、リョウは知っているようでそれを提案した。
「うん、いいね。楽しみ」
ニコリとすると、リョウはヨシ、とグーの手で気合を入れた。
2人で準備をして電車を使って隣町に出る。
電車の中でもリョウは女の子の視線を浴びるようで、私は何となく窓の方を向いて立つ。だいぶ慣れはしたけど、無駄に自分の評価は受けたくない。
「新はパスタは何が好きなの? 俺、たらこスパ好きなんだよね。こー、コッテリまったりした感じが」
リョウが横で笑いながら、好きなパスタを話してくる。
「んー、私はペペロンチーノとアラビアータかな? 辛いのとか好きなんだよね」
デート中なので、さすがにペペロンチーノは食べるつもりはないけど。あごに人差し指を当てて、視線を上に泳がせて考える。
「あと、パスタじゃないけどドリアも好き」
洋食屋さんに家族で行ったりすると、ついつい選んでしまう。高校に入ってからは友達と出歩く事がなかったので、中学の頃の友達と店に入る時は、割とこの3つの中のどれかを選んでる。
「ドリア好きなんだー。じゃあミートソースとかも好きな感じ?」
「うん、ミートソースも好きだよ。パスタは何でも美味しいけどね」
食べ物の話になると、つい饒舌になってしまう。最近ハマったレトルトのパスタソースのおすすめとか、リョウがひきつる勢いで延々と話してしまった。恥ずかしい……。
「そんなに新がパスタ好きとは……また新しい一面が知れた」
へへ、とリョウがニッコリ笑う。私は真っ赤になって言葉に詰まる。
「ご、ごめん。つい止まらなくなっちゃって!」
5分もすると駅に着き、2人で栄えてる方の通りに出る。
賑やかな街並み、ティッシュ配りのお兄さんや、飲食店の呼び込み、行き交う人が多くいて、ぶつかりそうになる。
前からくる人とぶつかる前にリョウが肩を引っ張って、避けてくれる。
「ここいつも人多いよね。危ないから近くにいて」
パスタ屋さんまではもう少し先で、リョウはニコニコしてぺったり張り付いてくる。
「う、うん」
「ご飯食べたら約束してたゲーセン行こ!」
ゲームセンターを通る直前に指差した。
「忘れてなかったんだ」
「もっちろーん。ちゃんとデートしたいしね」
最近求められてばっかりでアレをするために付き合うだけなのかとか心配になってたけど、そうじゃなかったのかな……? 少し安心する。
「ほら、あそこ! 新入った事ある?」
「ううん、あそこは入った事ないよ。ザストならあるけど」
「そうなんだ! 良かった。気にいるといいなー」
リョウは微笑むと私の手を捕まえ、繋いで足速に店に向かった。私はギュッと繋ぐ手に力を入れて、後を追って軽く走る。
なんかいいな、こんな時間。
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