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報告(リョウの視点)
しおりを挟む次の日、俺が学校へ行くと新はいつものように席についていた。少しボーッとして見えるのは気のせいか?
俺が新の机の横に座って顔を見上げると、パチっと目があった。
「新、俺、ちゃんと別れたよ」
新の言う通り、ありさも納得したはず。他にもう何もない。新は小さく驚いた顔をした。
「今日、一緒に帰りたい」
俺は新にそう伝えた。早く元の俺たちに戻りたいんだ。新は目を伏せるとコクリと頷いて、誘いをOKしてくれた。自分の胸がホッとするのがわかった。
「はー……よかった」
思わず声が漏れる。口角は勝手に上がり、ニンマリしてしまう。
俺は服の袖で口元を隠すと、目をつぶってこらえる。やばい、笑みが止まらない。耳まで熱を持ってるのが自分でもわかる。
「ちょ、リョウ。先生来たよ」
笑いをこらえるのに必死な俺に、新が苦笑いしていた。
「ごめん、行くわ」
俺は口元を隠していた手を新の頬にそっと伸ばし、すっと触れると後ろの窓際の席に戻った。
放課後、ホームルームが終わった。帰り支度をしていると、クラスの女子が話しかけてくる。
「ねー、鈴木くん今度一緒にカラオケ行こうよ! 中山とか他にも誘ってさ」
「あっ、いいね! 私も行きたい~」
女子たちはキャッキャッと花を咲かせて話をしている。俺は手のひらを合わせてすかさず謝る。
「え? あー、ごめん! 俺カラオケ苦手で……んじゃーね」
そういうと、カバンを手に取り新の席へ向かう。新の事だから、あんまり長いこと待たせると帰ってしまう。俺は慌てて新の前の席の椅子に後ろ向きに座る。新と向かい合わせだ。
「お待たせ!」
ニヤニヤしてしまう顔をそのままに、新のパッチリした目を見る。新を見るだけで、嬉しくなってしまう。
「リョウ、たまには友達とも遊べばいいのに」
「え? あー、うん。そうなんだけど、今はいいかな」
俺はヘヘッと笑うと、新のカバンを手に持って教室を出る。
新も俺の後を追って、足早に隣を歩く。今度は彼女の歩く速度に合わせてゆっくり歩き、そっと新の手を繋いだ。
新は周りの目を気にするそぶりをするが、俺は気にせず握る手を離さない。
「新とめっちゃ一緒にいたい」
「リョウ! 恥ずかしいから大きな声でそんな事……」
俺の言葉に新が真っ赤になっている。
なんなら恥ずかしがってる新たにキスしたいくらいだ。女子たちに騒がれようと俺には関係ない。
せっかく好きになった子と一緒にいられるんだから、他はどうだっていいと思う。
握りしめた手を、さらに強く握りしめた。
「こんなに好きになると思わなかった」
新にだけ聞こえるように、耳元で囁いた。
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