23 / 28
別れ話(リョウの視点)
しおりを挟むなんだよ、俺、ちゃんと別れたのに。
彼女のフリから始まったわけだけど、新の考えてる事がよくわからない。だから余計に必死になる自分がいる。
付き合うってみんなこんな難しいのか?
楽しそうにしている友達を横目に見てしまう。
「なんだよリョウ、ケンカでもしたのか?」
クラスの友達が俺の様子を思いやり、声かけてきた。俺の前の席の中山だ。
「そういうわけじゃないけど。前カノの事でちょっと」
「前カノかよ。3組の彼女だっけ?」
「そう。ちゃんと別れたのに急に別れてないとか新に直談判したって」
「げ、まじ?」
うわぁ、と中山が苦笑いしている。そりゃそうだ。別れていたはずの彼女が、急に別れてないって言い出して新しい彼女に文句言いだしたんだから。
「確かにちょっと前にまたちゃんとやり直したいって言われて濁してたけど……」
「え? 濁すって?」
「なんか浮気してた相手と別れたからまたヨリを戻したい、キスして欲しいっていうから、付き合えなくてもいいならするよって言われたからした」
ええ、と微妙な表情をする。俺の方を向いて椅子をしまうと机の上に座った。
「付き合えなくてもいいって納得したはずだけど。それにそのあとも付き合えないってハッキリ言ったし。なんで付き合ってるままって言われてるか意味がわからない」
「まあ、そうかも知れないけど、思わせぶりになったんじゃね? 嫉妬させようとしたみたいに思われたとか」
「いや、意味わかんないから」
イライラして俺が言うと、中山は困り顔で首を捻る。
「まあ、佐藤とちゃんと付き合うなら彼女の事ケリ付けないとダメだな」
「わかってるよ。浮気されたのこっちの方なのに、なんで邪魔すんだよ……」
俺は机に肘をついて頬杖をつく。イライラが隠せない。
「リョウはもう少し自分がされたら嫌な事を頭に入れて動いた方がいいんじゃね? 付き合いの事はよく知らねーけど、浮気するきっかけとか色々リョウにも非はある気がするけど」
「正論かよ。仕方ないだろ、あの時は好きとかよくわかんなかったんだし」
「今はわかんのか?」
中山の問いに俺は言葉を詰まらせる。わかってるような気はする。新と一緒にいると楽しいのと嫉妬といろんな考えがないまぜになって湧いてくる。ありさに対してはなかった感情だ。
「とにかく、もうありさとは付き合う気ないし。早く元に戻りたい」
俺は机の引き出しからノートと教科書を出すと、机に突っ伏した。
放課後、ありさを呼び出して公園まで一緒に帰る。そこで話合いをする事にした。
ハッキリ言ってもう今更なんだけど。
「新から話は聞いた。どういうこと? 俺たち別れたよね?」
俺はベンチにどかっと座ると、前屈みに腕を膝に乗せた。顔だけありさに向けて話を切り出す。
「そう、だけど。まだ私はちゃんと割り切ってないから」
「……いや、割り切るとかそういうのってありさの中でやる事でしょ? 俺には関係ないし新にも関係ないじゃん」
ありさは顔を紅潮させて俺の隣に少し離れて膝を揃え座った。膝の上で手を握りしめ、少し震えているようだ。
「ていうかじゃあなんであの時キスしたの? 私、断られたらちゃんと別れるつもりだったのに」
震える唇から、俺を責める言葉が紡がれる。今にも泣きそうな表情に、少しだけ俺の良心が痛んだ。
けど、ここで話をつけないと新は自分を受け入れてくれない。
「だってあれはありさがしてっていうからでしょ? ちゃんと付き合わなくてもいいならって俺言ったよね?」
「好きじゃないのに付き合って、好きじゃないのにああいう事できるの? 涼、今の彼女の事、本当に好きなの?」
「えっ?」
新の事好きなの? って、好きだから必死になっていつも一緒にいて、好きだから求めるんじゃ、と。
「涼は言ってることとやってる事がぐちゃぐちゃだよ。それが周りを傷つけてるのわかってる?」
「なん……だよそれ。そっちだって他の男と浮気したじゃないか。それも俺のせいだっていうのかよ?」
間髪入れずにありさは立ち上がり、俺を見下ろすように強く言ってくる。
「浮気じゃないよ。私のことを可哀想に思って寄り添ってくれただけだよ。手も繋いでないし彼のことは恋愛の好きじゃなかったよ」
「どっちにしても、俺はもうお前とは戻らない。新と付き合いたい」
俺はありさの顔を真っ直ぐ見つめてハッキリという。
「……そう、わかった。じゃあこれでほんとにお別れだね」
「ああ」
ホロっとありさの目から、涙が溢れる。
泣いてしまったありさを慰めたい気持ちはあるが、これ以上思わせぶりをしてはいけない。手を伸ばそうとして、やめた。
「……ごめん、別れる時にはちゃんと嫌いになりたくて、わざと涼を困らせた」
「いいよ、帰る。じゃあ」
好きだから俺に必死になってた、好きだから新に嫉妬した、好きだから嫌いになりたかった……諦めるために?
俺がもし新に別れようって言われたら、そう思うかもしれない、とふと思った。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる