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階段にて
しおりを挟むそういえば、あれから山田くんは声をかけてこない。とりあえずホッとするけれど。
断った時点で、気を使ってくれてるのかもしれない。
体育の時間、きゃーと女の子達のはしゃぐ声がする。見てみると、リョウがバスケでうまくゴールした所だった。相変わらず運動神経もいいらしい。
私の視線に気がつくと、ニコーと笑顔を送ってくる。近くにいるファンらしき子が、自分達に送られたと手を取り合って喜ぶ。
あ、もしかして本当に周りの子に笑ったのかもしれない。思い込みは気をつけないと。
「あとはゴール下から10球ゴールしたら次の人に代わってー」
私は運動全般は苦手だけど、何故かゴールに入れるのは得意で。一球も外さず次の人にタッチした。
「終わったー」
私は壁際に座ってみんなが終わるのを待った。割とみんな外さないようで、サクサク進んでいく。この体育が終われば帰れる。6時間目に体育とか地獄すぎでしょ。
さりげなく、リョウがこちらに近づいてくる。横に座ると、話しかけてきた。
「新ぁ、さっきこっち見てたでしょ? なかなかやるっしょ?」
「そだね。女の子達が騒いでたから、見ちゃったよ」
「それじゃ騒いでなかったら見ないみたいな感じじゃん」
ブーブーと口を尖らして私に文句を言う。
「俺は新のやってんの見てたよ。動かないでゴール入れんのうまかったね」
う、見られてたのか。何というか、見られるの恥ずかしいよ。
イケメンスマイルでジーッと見てくる。
「んじゃまたねー。あんまこっちいると先生に怒られる」
「うん、じゃあねー」
ひらひらと手を振ると、リョウは友達の方にかけて行く。なんか、サマになるんだよね、やっぱり。
「終わりー、整列!」
先生の鶴の一声でみんなが集まって行く。私もすぐ立ち上がり先生の元へ行く。
「ではここまでー。教室で着替えたらホームルームやって終わりますよー。早く着替えてくださーい」
みんながバラバラと帰って行く。
私も帰ろうとした時、麻菜がいたので声かける。
「麻菜ー、疲れたねぇ。なかなかこの時間の体育はハードだよ」
「ほんとだよー、私なんかもう足プルプル震えそうなんだけど。走らせすぎ!」
あはは、とたわい無い会話が心地いい。あー、ぼっちじゃなくなってよかったわぁ。
「にしてもリョウくんカッコ良かったねー! もうほんと目の保養って感じ」
「まぁ確かに、私も最初は目の保養とか思ってたよ」
「だよね? 彼女できたって聞いてビックリしたわ。いつも断ってたし」
なんやかや話していると教室についた。早い人はもう着替え終わっている。私達も急いで着替え出す。
「今日もリョウくんと帰るの?」
「うん、その予定。たまには1人で帰りたい時もあるんだけどね」
「そうなんだぁ。私なら毎日一緒でも全然平気ってか毎日帰りたいけどな」
小首を傾げながらボヤいている。そういうものなのかな?
考えていると、男子と先生が戻ってきて、帰りのホームルームが始まった。
帰り道、リョウと並びながら歩く。
背の高いリョウと、背の低めな私が歩くと段差がすごい。もう少し差が小さい方がいいな。上向いて話してると首疲れるんだよね……
「って、新、聞いてる?」
突然ふられ、ハッとし苦笑いした。
「えへへ、ごめん。聞いてなかった」
「なんだよもー、人が一生懸命話してんのに」
「ごめんごめん、見上げてたら首疲れちゃって」
んーと何か思ったのか、リョウが神社のある方へ行く。
「あれ、どこ行くの?」
「こっち、きて」
神社に来ると、奥に進むと階段から下へ行く道があるんだけど、そこへ向かって行く。木々は鬱蒼としているが、夏に向けて綺麗な緑が生えてきている。
「ここ、ストップ!」
「えっ?」
階段を降りたところの真ん中辺りで、私は立ち止まる。リョウはそこから一段降りて私の方に振り向いた。顔が、一つ分くらいしか違わなくて、いつもより近く見える。
「あ……」
「これなら疲れない?」
いつもより間近で、優しい笑顔がすぐ近くにある。
リョウが私の両頬を優しく押さえて、かがむように唇を近づけた。
「ん……」
私はそっと目を瞑った。
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