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女子デート
しおりを挟む振り向かせる?
どういう事だろう。その……しちゃってる訳だし、付き合っているはずなんだから振り向かせるも何もないような。
私は机に肘をついて、顎を乗っける。
「新、今日はどっか寄ってく?」
いつも通り、リョウが期待の眼差しでキラキラと見てくる。尻尾がパタパタと振り切りそうな勢いだ。
「えー、今日はダメ。吉田さんと買い物行くの」
「えー! 俺も行っちゃおうかな? ね?」
ニコッと悪気なく微笑むリョウにムッとする。私の大事な友達付き合いに彼氏を連れていけないわ。
「また今度ね。今日は初めて遊びに行くんだから」
「えー、わかったよー」
しょぼんと尻尾と耳が下がってるのが見えるようだったが、今回ばかりは我慢してもらうしかない。
放課後になり、吉田さんと駅前のお店に行くことにした。
「なんか苗字でさん付けもあれだし、新でいい? 私は麻菜でいいよ」
「あ、うん」
明るく可愛い笑顔で言ってくる。
ボス的女子といる時と違って、わりと穏やかな気がした。
「私と一緒にいて、名前忘れちゃったけどお友達怒らない?」
「あー、友里? 大丈夫。リョウ君のファンみたいなもんだし、最初から仲良くなろうみたいな気はないから。多少新にはやきもちあるみたいだけど、そんなに悪い子じゃないよ」
そう言うと、クレープのお店を指差す。
「私あれ食べたーい! あそこのバナナチョコクリームが絶品なんだよー」
くーっと目をつぶって、良さを力説している。私は思わず笑ってしまう。
「あはは、確かに。私はイチゴクリーム派!」
2人で並んで、女子デートを楽しんだ。この後たこ焼き食べたり、カラオケ行ったり、服屋に入って試着してみたり。麻菜は買っていたようだけど。
「んっんー! 楽しかったぁ! もっと早く仲良くなれたらよかったよー。リョウ君が張り付いてたから、全然声かけられなくてさ」
あはは、と笑いながら帰り道の方へ向かう。足取りはお互いに軽い。
「私も想定外にリョウが他の人から遠ざけるもんだから、友達すらできなくてどうしようかと思ってたよ。麻菜、声かけてくれてありがとうね」
心底ありがたかった。
「んじゃまた遊ぼうね! 新ぁ」
「うん、またー!!」
お互いバイバイしながら、別の方向へ帰って行く。私はニマニマしながら家へ向かった。
公園に差し掛かった時、ベンチの所に佐々木冬馬が見えた。夕焼けを浴びながら読書する姿が、なんだか知的に見える。きっと前情報で頭がいいと聞いたから、先入観だろう。
サラサラした茶色い髪が、光でさらに明るく見えて綺麗な顔立ちに見えた。
声かけてみようかと思ったけど、リョウに浮気はダメと言われているし(浮気じゃないけど)、うーんうーんと悩んでいるうちにあちらが私に気がついた。
「おー、元ニセカノ」
「何ですか、佐々木冬馬?」
「てか、何でいつも敬語なんだ? 俺同級だけど」
「あ……いやぁ、何となく」
私は顔をそっぽ向ける。
何かこの人苦手っていうか、避けたくなっちゃうんだよなぁ。
「何してたんですか? 本?」
「ああ。家で勉強してたら気晴らししたくなってな。ここなら子供が来るぐらいで好きなだけいられるし」
「はぁ……っていうか、そろそろ私帰りますね。さよなら」
冬馬はプ、と吹き出す。
「何でそんな俺に冷たいかなぁ。なんかした?」
何でも言われても、自分でもわからない。何となくそうしてしまうのだ。
「ごめんなさい、わからないけど……一応リョウのため、なのかな? わかんない」
ふぅん、と手に持っていた本をそっと閉じて体ごとこちらに向き直る。
「ま、何でもいいけど」
そう言うと、私を通り過ぎて帰って行く。去り際に、じゃあな、とこちらを見ず手を振っていた。
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