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部屋2
しおりを挟む私の気持ちを代弁したかのように、リョウが呟いた。
「普段はこんなに緊張しないんだけど、何話していいかわからないや」
お手上げという風に胸の前で手をあげる。私も同じ気持ちだったので、嬉しくなって笑ってしまった。
「落ち着かないよね」
私も本音を言う。リョウもうんうんと尻尾を振りながら頷いている。
「外にでもいく?」
私が提案すると、リョウがエーッと反対する。
「せっかく部屋に来たのに」
「まぁそうだけど……」
まだ私たちは、同じ空間に2人でいる事に緊張する。彼女になったけど、まだ彼女のフリの感覚が残ってる。
まだ、お互いをよく知らないから。
「動画見よっか」
リョウがソファの前のテレビをつけて、何がいいかなと左腕を伸ばして動画を探す。
私が紅茶を手に取ろうとした時、リョウのその腕にぶつかった。
ドキ……ン。
あーなんかもう緊張しすぎて震える。
紅茶の入ったマグカップが揺れて、リョウにばれそうで怖い。もう片方の手で、支えるように持って飲む。
「あらた」
「えっ?」
リョウは私から紅茶を取り上げて、テーブルに置く。流れるように、ギュ、と強く抱きしめられた。首元にリョウの吐息を感じ、リョウの髪の匂いにクラクラしてしまう。
「あらたいい匂い」
抱きしめられたリョウの胸から、動悸が伝わってくる。
とくん、とくん、とくん、と頭に響いてくる。
私が何もしないでいると、リョウがガバッと私を引き離す。
「ごめ、またやっちゃった」
顔を赤く染めてそっぽを向くと、頭をぽりぽりかいて気を落ち着かせてる。
「あ、うん……大丈夫……だよ」
私は顔を赤く染め、体をリョウから反対の方へ向けた。なんだか前より恥ずかしい。
「ニセ彼女してた時の方が付き合ってたみたい」
思わず私が呟き、リョウは確かに、とうんうん頷く。
「彼女のフリって思っとこうかな?」
「えぇ! それは……うーん」
彼女のフリの時の方が友達みたいに遊べたし、リョウも緊張しないのでは?とない頭で考えたのだ。
「それでもまぁ構わないけど、浮気とかはだめだよ」
ギロリと本気の目でリョウが睨み飛ばしてくる。こ、こわ。
「わかってるよ! 彼女のフリの感覚でって事」
「おけ」
ニッコリといつものリョウの笑顔に戻る。やっぱりイケメン、笑顔が素敵すぎる。私はこんな風なかけ合いとかが楽しいんだ。
その後の私たちはイチャイチャする事もなく、クラスでワイワイするような楽しい1日を過ごせた。
少しだけ、リョウが時折物寂しそうな気がしなかったでもないけれど、私はとても楽しくて来てよかったと思った。
「あぁっ、もうこんな時間だ。そろそろ帰らなきゃ!」
「そっか、じゃあ送ってく」
玄関を出て、私の家の方に向かうと、肩を寄せて来た。一応彼女だし。
「なんだか今の新、昔の俺みたい」
「え? 私が??」
「うん、友達って感覚が楽で、付き合うのがよくわからなそう」
寂しげに、にこりと笑む。
「それって、片想いと同じなんだよね」
私は目を見張る。片想い?
だって私リョウの事好きだし、その、しちゃったし、ドキドキするし、なんでそう思うんだろう?
「でもいいよ、ちゃんと振り向かせるから」
目に力を入れて、キリッとリョウが言った。変なの、彼女なのに。
別れ際、リョウはさりげなく私の唇に触れるか触れないかのキスを落とした。
「じゃーねー! また明日、新!」
手をブンブン振って、こちらを見送っている。私も小さく手を振ってバイバイした。
「リョウー、またね」
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