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部屋
しおりを挟むリョウが戻ってくるまで20分くらいかかった。ゴメンね、と片手で謝るポーズをして、机のカバンを手に取ると帰ろうと手をつないできた。
もうだいぶ人もいないので、そのまま下駄箱に向かった。
「何してたの?」
「え? ああ、うん」
何してたのか聞けば眉を下げてなんとなくごまかすリョウ。リョウにしては珍しい反応。
隠し事する事もあるんだ。
「俺さ、部屋掃除してきたんだよ昨日」
ふふーとにっこり笑いながら、靴を履き替えている。昨日から私を誘おうと思ってたんだと思うと、ちょっと嬉しい。
私も靴に履き替えると、リョウが手を繋いできた。
ちゃんとニセカノじゃなくて彼氏と彼女だ。
「そういえば、時々佐々木冬馬くんと絡む事あるけど、友達なの?」
「えー? ああ、中学の時友達だったんだ。結構ちゃらけてる奴だけど、根はマジメなんだよ。頭も超いいし」
「え? そうなの? 確かにいつも勉強がどうとか言ってくるけど」
ぶーと口を尖らせて、リョウがムッとした顔をする。
「彼氏の前で他の男の話はどうかと思うけど。冬馬と仲良くしないでよ? 俺ヤキモチすごいからね」
言われなくても分かってますーと、私は苦笑いする。男子どころか女子まで遠ざけるくらいだからね……はは。
「あ、今度クラスの吉田さんと遊びに行く事になったから、その時は一緒に帰れないからね」
約束の事をリョウに話すと、えー、と不満げな表情をしていた。
なんだかんだ話して歩いていたら、リョウが親指で指差した。
「ここ、俺んち」
ぱっと見、うちの2倍くらいありそうな家だ。白が基調の建物で、リビングと思われる窓は大きくて3枚ぐらい繋がっている。
「俺の部屋も2階なんだ」
嬉しそうに言うと、手を引いてくる。
「なんていうか、大きな家だね……お邪魔します」
広々とした玄関は、埃もなく綺麗に保たれている。生花が飾ってあり、シンプルでも華やかさもある。
下駄箱の上には季節の小物や小さな犬の置物なんかも飾ってあって可愛い。
私は玄関で靴を脱ぎ、一応よそのお家なので靴を揃えた。
リョウは階段をサッと登ってゆく。
私は後をついていく。
「ここ!」
階段を登って左側、ふた部屋目がリョウの部屋らしい。
入り口ドアの前でドアを腕で開けて待っている。私はそろっと入った。
「わ、綺麗にしてるんだね」
私の部屋の倍はあるみたい。
壁紙はオフホワイトで、家具は黒とグレーを基調にしていて、なんか雰囲気と違って大人っぽいような……。
「掃除したって言ったじゃん」
へへ、と嬉しそうに言う。
にしても、綺麗すぎる。
天は二物を与えずとか言うけど、二物も三物も与えられてる人もいるのね、と思ってしまうわ、これには。
「ソファに座ってて。コーヒーか紅茶なら出せるけど」
「あ、じゃあ紅茶お願い」
「わかった、待ってて」
ご機嫌で下に降りていく。
広いのと綺麗なのとでなんだか落ち着かない。うちのリビングより大きい気がする。
机の上には教科書や参考書などが立てかけてあり、綺麗に整頓されていた。
「普段から綺麗そう……見習いたいわ」
1人苦笑する私。
キョロキョロと部屋を見渡すと、小さめなタンスの上に銀色の小箱を見つけた。私は近づいて、触らないように覗き見る。
私の手のひらくらいの大きさで、蓋はガラスか何かで中が見えるようになっていて、周りは花や葉の彫刻装飾がされている。手の込んだ箱だ。
「これ、オルゴールかな?」
箱の右側に、小さく巻くネジのような物があった。
「そうだよ。母親に昔もらったんだ」
独り言をつぶやいたとたん、後ろから急に声をかけられて驚いてしまう。足音にも気づかず、夢中になってたらしい。
「わっ、勝手にごめん。綺麗だったからつい」
「大丈夫。女の子はキラキラしたもの好きだよね」
いつもの犬のような笑顔でリョウは答える。
「紅茶いれてきたよ。適当に寛いで」
リョウはそう言うと、ソファにポスンと座り、コーヒーを口にしている。
私もちょっと離れてソファに座ると、紅茶を飲ませてもらった。
この状況、以前は……ふと思い出し、リョウの方を見ないようにする。耳まで熱を持っているように思える。
とりあえず、めちゃくちゃくつろげない。どうしよう。
「なんか緊張するね」
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