ニセカノ

らいらい

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吉田さん

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 最近何となくわかってきた。
 抱きしめられたり触れられた時、嫌な気持ちになる時はその人を好きじゃないんだなって。山田くんにギュッとされた時、嫌だった。
 そして、リョウに触られるのはふわっとした気分になる。
 私は机にノートと教科書を広げて、シャーペンをくるくると回す。
 あー、明日で中間も最後だ。頑張ろ。
 無理矢理考えを切り替えようとした。このままだと明日の中間全滅してしまう。まあ、とりあえず平均点は問題無さそうだけど。




     †††



 中間最終日。
 やっと一通りの勉強が終わる!
 休み時間にまた机の横にリョウが来た。ご機嫌で尻尾振ってるのが見える。

「新~、今日終わったら新の部屋行きたい」

 ギロっと周りの女の子の視線が痛すぎるので、周りに聴こえるように言葉を返した。

「えーっと、それはちょっとどうかなぁ……あはは」

 リョウの空気読めない感じは相変わらずだ。私は小さくため息をついて、この状況を受け入れるしかない。

「えー、じゃあさじゃあさ」

 私の耳元に口を寄せると、ボソボソと周りに聞こえないようにする。なんとなくこそばゆい。

「……俺の部屋おいでよ」

 リョウの部屋?
 確かに行ったことない。どんな部屋だろうと少し興味はある……けど……うーん、断れない。

「分かった。行くよ」

 小さい声で言うと、リョウがバンザイしたと思ったら目をキラキラと輝かせ、笑顔全開でやったー!! と首に抱きついてくる。
 ドキンと胸がなった。

「ちょ、ま……ッ」
「キャー!!」
「うっそ?!」

 クラス内がざわつく。
 やっかみやら嫉妬やらの視線の矢がブスブス突き刺さる。男たちはニヤニヤとからかうような様子で見ている。
 私は早く叩き始めた心臓を無視して、冷静を装いリョウの腕をほどくと、頭をポンポンしてハウス! と席を指さした。
 リョウはぽわぽわと幸せいっぱいなニマついた笑顔でフラフラと席に戻る。
 あーこれしんどいッ。感情の表現控えめにして欲しい……

「佐藤さん!」

 吉田さんが声をかけてくる。あれ以来何となく話せるようになった。
 顔は紅潮し、興味を隠せないでいる。

「やだ、涼くんかわいかったー。佐藤さん、すごい」

 すごいと言われ、何が凄いんだろうと思いながら、苦笑いする。

「吉田さん、リョウのあの周り見ない感じも人気なの?」
「そうだよ! ただカッコいいだけじゃなくて、優しいし笑った顔がかわいいし背高いし運動も得意だし、全然悪い所ないじゃん」

 長所は短所って言うけど、リョウに限っては周囲にそう思わせないみたいだ。近いからこそ感じるところもあるのかもしれないけど。
 みんな高校生活楽しくするために、リョウをアイドルみたいに位置付けてるように見える。
 完璧を求められて、プレッシャーだよね……きっと。

「ねぇ佐藤さん、今度一緒に遊ぼうよ。せっかく話するようになったし」
「うん、いいね! 買い物とかカラオケでもいいし。今日はちょっとリョウと約束してるから、別の日に!」

 私は思わぬお誘いに、ウキウキしてオッケーする。脱ぼっち!
 友達と遊ぶのもリョウは邪魔するけど、流石に今回は邪魔させない。
 やっと仲良くなれそうなんだから。

 
 おかげさまで、吉田さんとの約束なんかもあったりしてテンションが上がり、テストもいい感じで終わった。
 帰りのチャイムが鳴ると、皆んなそれぞれ帰っていく。
 んんーと私は伸びをして、帰る準備を始めた。今日はもう、教科書は置きっぱにしてく。廊下に出るとロッカーに仕舞い込み、鍵をかけた。

「佐藤さんじゃあねー!」
「うん、またね!」

 吉田さんが帰りにバイバイしていってくれる。私は思わず手を握り締め、ガッツポーズをしてしまう。
 感無量です。

「うぉいお疲れ」

 私がバイバイの余韻を楽しんでいると、隣のクラスの冬馬が声かけてきた。

「あー、お疲れ様。試験はどうだった?」
「俺? 俺一応優秀だから。問題ねーよ」

 私はジト目で冬馬を見る。ほんとかなぁ、頭いい風には見えないけど……ってそれは失礼か。私の視線で分かったらしく、言い返してきた。

「学年の張り紙今度見てみ、少なくともお前よりは上だから」

 ヘラヘラと笑い、んじゃーなと帰っていった。
 そういえばリョウが寄ってこない。どこ行ったのかな? いつもなら邪魔しにくるんだけど。
 カバンは席に置いてあるみたいだし、とりあえず帰る約束したので、私ば自分の席でリョウが来るのを待った。
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