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山田くん
しおりを挟む試験後、リョウは用事があるとの事で、今日は1人で帰宅することになった。この所毎日リョウと帰っていたので、また違った感覚だ。
「そだ、コンビニでチョコ買って帰ろ」
思い立って、公園の手前の辺りにあるコンビニに立ち寄った。
手押しのドアを開けて左へ進むと雑誌売り場があって、そこで私はダイエットの記事とかが載ってる雑誌を立ち読みする。
やるかやらないは別にして、今時の女子高生だし気にはしている。
スタイルの良いモデルさんを見て、はー、こんなんだったらなぁと自分の外見と比べてしゅんとなる。
一通り記事を見て、くるりと店内を回る。スティックチョコなんかが所狭しと並んだ辺りで足を止める。
太るかな……と気にはするものの、美味しそうなイチゴのチョコを見つけ、やっぱり買うことにした。
「あ、佐藤さんじゃん?」
品物を預けたレジから声が聞こえて来た。顔を上げると、見たことない男子だった。いや、見た事があるような気はする。
「あ、俺同クラの山田隼」
名札を指差して、苗字を見せる。
「あー、山田くんこんにちは」
知らないとは言えず、とりあえず挨拶だけしておく。
「テストやっとあさってで終わるな。俺今回赤取りそうだよ」
「そうなの? 赤はキッツイね」
私は適当に話を合わせると、チョコにテープを貼ってもらい受け取った。
「ねぇ明日勉強教えてよ。結構頭いいんでしょ?」
「そんな事ないけど……」
「テスト後とかでいいからさ、頼むよ」
お願い、と頼まれる。
まあそれくらいなら、と私はオッケーした。
「サンキュー! じゃあ明日」
勝手に約束したけど、リョウ大丈夫かな、と後になって不安になる。喋ってるだけで嫌みたいな感じだったしな……と、ちょっと思い出した。
†††
テスト終了後、リョウに事情を話して教えることになったと伝えると、それはもう不機嫌な顔になった。
「なんで山田が? 他に頭いい女子も男子もいるじゃん」
あからさまにブーブーと不満を伝えてくる。一緒に帰りたいと文句をひたすら言っている。
「じゃあ俺も待ってる」
それならまぁいいかな? と思い、じゃあそれでと決定した。
「よー、佐藤ごめんな」
後ろの席から山田くんがこちらへやってくる。ちら、とリョウは山田くんを見やる。
「リョウと帰る予定だったから、待ってるけどいい?」
と、山田くんに説明する。
山田くんはリョウに頭を下げて、納得させた。
「ほんとに鈴木と佐藤、付き合ってたんだな! 邪魔してごめん」
あーいや、と、私は苦笑いする。
「悪いと思うなら早めに終わらせてよ」
リョウが冷たく言い放った。
へーい、と山田くんは苦手な英語の教科書を取り出した。
英語はとりあえず単語をひたすら暗記する事と、文法を覚えることをおすすめした。
1時間くらいたった所で、山田くんはスッキリしたのか終わりにすると言った。
リョウは後ろの席の机に突っ伏して昼寝している。
「ありがとな、これでだいぶ点数取れそう」
「いーえ、少しでも役に立ったならよかったよ」
「……あのさ」
リョウをチラリと見やり、口ごもる。
「俺、前からお前の事好きだったんだ」
ええ?
私は突然の山田くんの告白に、戸惑っていた。
「中学でもクラスが違ったんだけどさ、ずっと気になってた」
「あ……そう、なんだ」
「で、別れたって聞いたから、頑張って近づいてみようかなって思ったんだけど……別れてなかった?」
山田くんは少し悲しげに俯く。
「別れたんだけど……昨日からまた付き合い始めたの」
そっか、と、残念そうに笑っていた。
「でも、好きでいるのは自由だよな?」
「えっ?」
「結構長い間好きだったし、嫌いにはなれないしさ」
私は俯いたまま、何も言えなかった。
好きな事をやめるなんて、そりゃ急には無理な話だと私でもわかる。
「えっと……わからないけど、気持ちはありが……」
言いかけた瞬間、ギュッと山田くんに抱きしめられた。
私はビクッとして固まってしまう。リョウとは違う感触に包まれた。こ、怖い。
私は突き飛ばすと、山田くんから離れた。
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