11 / 28
山田くん
しおりを挟む試験後、リョウは用事があるとの事で、今日は1人で帰宅することになった。この所毎日リョウと帰っていたので、また違った感覚だ。
「そだ、コンビニでチョコ買って帰ろ」
思い立って、公園の手前の辺りにあるコンビニに立ち寄った。
手押しのドアを開けて左へ進むと雑誌売り場があって、そこで私はダイエットの記事とかが載ってる雑誌を立ち読みする。
やるかやらないは別にして、今時の女子高生だし気にはしている。
スタイルの良いモデルさんを見て、はー、こんなんだったらなぁと自分の外見と比べてしゅんとなる。
一通り記事を見て、くるりと店内を回る。スティックチョコなんかが所狭しと並んだ辺りで足を止める。
太るかな……と気にはするものの、美味しそうなイチゴのチョコを見つけ、やっぱり買うことにした。
「あ、佐藤さんじゃん?」
品物を預けたレジから声が聞こえて来た。顔を上げると、見たことない男子だった。いや、見た事があるような気はする。
「あ、俺同クラの山田隼」
名札を指差して、苗字を見せる。
「あー、山田くんこんにちは」
知らないとは言えず、とりあえず挨拶だけしておく。
「テストやっとあさってで終わるな。俺今回赤取りそうだよ」
「そうなの? 赤はキッツイね」
私は適当に話を合わせると、チョコにテープを貼ってもらい受け取った。
「ねぇ明日勉強教えてよ。結構頭いいんでしょ?」
「そんな事ないけど……」
「テスト後とかでいいからさ、頼むよ」
お願い、と頼まれる。
まあそれくらいなら、と私はオッケーした。
「サンキュー! じゃあ明日」
勝手に約束したけど、リョウ大丈夫かな、と後になって不安になる。喋ってるだけで嫌みたいな感じだったしな……と、ちょっと思い出した。
†††
テスト終了後、リョウに事情を話して教えることになったと伝えると、それはもう不機嫌な顔になった。
「なんで山田が? 他に頭いい女子も男子もいるじゃん」
あからさまにブーブーと不満を伝えてくる。一緒に帰りたいと文句をひたすら言っている。
「じゃあ俺も待ってる」
それならまぁいいかな? と思い、じゃあそれでと決定した。
「よー、佐藤ごめんな」
後ろの席から山田くんがこちらへやってくる。ちら、とリョウは山田くんを見やる。
「リョウと帰る予定だったから、待ってるけどいい?」
と、山田くんに説明する。
山田くんはリョウに頭を下げて、納得させた。
「ほんとに鈴木と佐藤、付き合ってたんだな! 邪魔してごめん」
あーいや、と、私は苦笑いする。
「悪いと思うなら早めに終わらせてよ」
リョウが冷たく言い放った。
へーい、と山田くんは苦手な英語の教科書を取り出した。
英語はとりあえず単語をひたすら暗記する事と、文法を覚えることをおすすめした。
1時間くらいたった所で、山田くんはスッキリしたのか終わりにすると言った。
リョウは後ろの席の机に突っ伏して昼寝している。
「ありがとな、これでだいぶ点数取れそう」
「いーえ、少しでも役に立ったならよかったよ」
「……あのさ」
リョウをチラリと見やり、口ごもる。
「俺、前からお前の事好きだったんだ」
ええ?
私は突然の山田くんの告白に、戸惑っていた。
「中学でもクラスが違ったんだけどさ、ずっと気になってた」
「あ……そう、なんだ」
「で、別れたって聞いたから、頑張って近づいてみようかなって思ったんだけど……別れてなかった?」
山田くんは少し悲しげに俯く。
「別れたんだけど……昨日からまた付き合い始めたの」
そっか、と、残念そうに笑っていた。
「でも、好きでいるのは自由だよな?」
「えっ?」
「結構長い間好きだったし、嫌いにはなれないしさ」
私は俯いたまま、何も言えなかった。
好きな事をやめるなんて、そりゃ急には無理な話だと私でもわかる。
「えっと……わからないけど、気持ちはありが……」
言いかけた瞬間、ギュッと山田くんに抱きしめられた。
私はビクッとして固まってしまう。リョウとは違う感触に包まれた。こ、怖い。
私は突き飛ばすと、山田くんから離れた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サディストの飼主さんに飼われてるマゾの日記。
風
恋愛
サディストの飼主さんに飼われてるマゾヒストのペット日記。
飼主さんが大好きです。
グロ表現、
性的表現もあります。
行為は「鬼畜系」なので苦手な人は見ないでください。
基本的に苦痛系のみですが
飼主さんとペットの関係は甘々です。
マゾ目線Only。
フィクションです。
※ノンフィクションの方にアップしてたけど、混乱させそうなので別にしました。
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる