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カノジョ再び
しおりを挟む私は手を繋いだままリョウと公園まで来た。ギュッと握られたまま、離さない。ここに来るまで何も話さないで来た。
リョウの整った横顔は、前を向いたまま無表情で人形のようだと思ってしまった。
なんだろう、いつものリョウと違う。
時々ある。それは、冬馬の言ってた元カノと関係あるんだろうか。
「あ、もう公園まで来ちゃった。新、少し休んでこ」
ニコッといつものリョウが、顔を出す。入り口の自販機で手を離すと、お茶を買うリョウ。一口飲んでから、はい、と私に渡す仕草はスマートだ。
「ありがと」
私も一口飲んでからリョウに返す。
リョウはベンチまで歩いてく。私はリョウについてく。
「さっきごめん」
「え?」
「なんか、他の人と話してるの見ると邪魔したくなって」
「そっか。まあでも、私あの人あまりよく知らないし気にしてないよ」
リョウのことをただのイケメンとしか思ってなかったけど、リョウにはリョウの生きてきて色んな出来事があったんだろうな。
「あの、私、最初リョウの事ただのイケメンで暇つぶしで彼女にしたいのかな、まっいかって思って、好きでもないのにオッケーして……全然リョウの事見れてなかったよ。ごめんなさい」
私は正直な気持ちを話す。
リョウは思いがけなかった言葉のようで、一瞬固まっていたが、理解した途端破顔した。
「やっぱり新はちゃんと人を見てくれる人だ」
「そんなこと。みんなだって外見はもちろん、リョウの優しさとか、色々見てるんだと思うよ」
リョウは私の手をそっと握ってくる。以前のような嫌悪感はない。
私たちが寛いでいると、入り口の方から黒髪ロングヘアで背の高い綺麗な人が近づいてきた。
こないだの……リョウとキスしてた人。
「こんにちは」
リョウに向かってまっすぐなら眼差しで挨拶している。私の事は目に入らないみたいだ。
「うん」
リョウはそれだけ言うと、私の握った手をギュッと力を込める。
リョウを見据えるようにして、無言のまま前に立っている。
「ありさ、この間の話だけど」
「うん」
「俺、この子好きになったんだ。だから……ごめん」
リョウが申し訳なさそうな表情で、女の子に伝える。女の子はムッとしたように顔を背ける。
「わかった。あんたなんか好きにならなきゃよかった!」
涙声で踵を返して走り出す。スカートがひらりと風に遊ばれ、スタイルのいい長い足がチラと見えた。
リョウを好き、だったんだろうって事がよくわかる。悲しそうだった。
「リョウ、追いかけなくていいの?」
余計なことかなと思ったけど、何となく彼女が可哀想に思えて。でもリョウは首を振った。
「彼女は元カノで、また付き合いたいって言うから、君とは付き合えないってはっきり言ったんだ」
静かに、でもハッキリとリョウが言う。
「そしたらキスしてよって言うから、付き合えなくてもいいならキスくらいするよって、キスしたんだ……それを新に見られてたんだね」
あの時のキスは、彼女が愛されたくて望んだキス。でも、リョウには伝わらなくて、恐らくすごく傷ついただろう。なんだか悲しい。
リョウは自分の気持ちにも、他人の気持ちにも不器用で、分かってない。多分冬馬が言ってたのはこういうことなんどろう。
私はこの人が傷つくのは嫌だなって思って、リョウの手をギュッと握った。
リョウは私の顔を覗き込むと、ニコッと明るく微笑む。
「俺の彼女になってよ」
真面目な顔になったリョウが、言う。
私はドギマギして、下に目を逸らす。
「私でいいの?」
と、初めに付き合った時と同じ言葉を返す。リョウは頬に赤みをさした笑顔で頷く。
「もちろん」
ゆっくりとリョウの顔が近づいてきて、柔らかくてハリのある唇が、私の唇を塞いだ。
リョウの舌が私の中に入ってきて、私の舌を撫でてくる。優しく、くすぐるように。
私はリョウの首に腕を回して、リョウの息遣いを感じていた。
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