ニセカノ

らいらい

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 朝起きると、なんか熱くて、目の前がボーっとしていた。最近おつかれ気味で、睡眠もいまいちだったし、風邪ひいたかな……ゾクゾクと背筋が寒い。
 自室を出て、リビングに降りると薬の入った棚から体温計を取り出す。私はソファに座り、スイッチをオンにして脇に差し込んだ。
 キッチンには作り置きの食事があり、お母さんはもう仕事に出ているようだ。
 ピピピピッと、体温計が鳴る。
 引き出してみると、結構上がってるようだった。

「37.8だぁ。学校休も」

 私は食欲もないので、スープと目玉焼きだけ食べて、部屋に戻る事にした。
 中途半端に熱がある方が、結構シンドい。ベッドに潜り込むと睡魔が襲ってきたので、そのまま意識を手放した。
 

 ピンポン、とチャイムが鳴る。
 眠っていた私は、ゆっくりと瞼をあけるとドアを開け放したままフラフラとリビングに降りる。
 入り口ドアの脇にあるインターフォンの映像には、制服姿のリョウが映っていた。
 私は思わずインターフォンに出る。

「はい」

 インターフォン越しにリョウが顔を近づけて、「新いるー?」と声かける。
 私は通話を切って、玄関に出た。
 リョウは門を開けて入ってきて玄関ドアの所で立ち止まる。

「えっ、学校は?」
「サボってきた」
「何で? 風邪とか学校に連絡してないし」
「気になったから」

 それだけで?

「熱があって、多分2、3日休むと思う」

 私はリョウに伝えると、その場でへたり込んだ。熱がさっきより上がってる気がする。
 リョウは慌てて私を立ち上がらせると、横抱きにする。いわゆるお姫様抱っこだ。私はふわふわした不安定な感覚が怖くて、リョウの首に腕を回した。

「ごめん、部屋連れてくね。どこ?」

 耳元でリョウの柔らかくて聞き心地のいい声が聞こえてドキリとする。ただでさえ熱があるのに、この状況でますます顔が熱くなる。

「あ……そこの階段登って、右の部屋」

 ぽやんとした意識の中で、ふわふわふわふわと部屋に向かっていく。重いだろうなぁとか思いながら、身を任せたままだ。

「ついたよ」

 リョウが言うと、私をぽすんとベッドに横たえる。

「ありがと……」
「薬とかあるのかな?」
「リビングに多分あると思う」
「どこ?」
「下降りてリビング入ったら右の棚。上から2段目に」
「オッケ」

 どうやら薬を持ってきてくれるみたいだ。ケホケホと咳が出始め、くったりと掛け布団に潜り込む。
 よく考えたらパジャマのままだった。恥ずかしい。
 下からトントントンと階段を上がる音がする。

「新ぁー、これ飲んで」

 水の入ったコップと、熱冷ましの薬を勉強机の上に置く。そして私を座らせて、それを手渡してくれる。
 私は薬をシートから取り出すと、水でごくりと飲んだ。もちろん多めに水は飲む。

「それじゃ俺、学校戻るね。お大事に」

 ニコニコといつものリョウの笑顔にホッとする。
 あっ、と、私の汗かいたおでこにチュ、とキスをした。

「お世話したご褒美」

 そう言うと、いたずらな目をして笑って出て行った。
 私はまた横になると、ボーっと天井を眺めていた。
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