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リョウは友達
しおりを挟む次の日には案の定、別れたことがクラス中、他のクラスにももちろん広がっていた。どんだけ人気あるイケメンだったのよ、リョウは。
昨日まで睨んできてたうちのクラスのボス的女子も、今日はご機嫌で周りの友達と机を囲んでテンション高くおしゃべりしてる。
イケメンの彼女って憧れてたけど、やっかみとか意地悪とか、ちょっと豆腐メンタルな私には無理だったわ。
最初から、あんな迂闊な約束しなきゃよかった……
とはいえ、楽しかったのも確かだし、それはそれとして、いい思い出にしよう……あんな事になったけど、うっ……
はぁ、とため息をつくと、机に突っ伏す。次の授業のノートがグシャリと折れた。
ちょこん、と、私の机の横にリョウが来ていた。なんとも言えない表情だ。
耳が垂れ下がり、尻尾も下がって見える。
「おはよ、新」
「あ……おはよ」
私は言葉に詰まりながら、返事を返す。リョウが私の所に来たので、周りの女子がまたざわついて来る。うわ、勘弁してよ。
「別れたって、みんなに言ったんだ?」
「あー、みんなって言うか、少し言ったらすぐ広まったよ。リョウモテるんだもの」
「そか……でもさ、俺、やっぱり新に彼女でいてほしい」
爆弾発言。
やめて、やっとぼっち返上の予定なのに。リョウは男にも女にもモテるからいいけど、私はどっちからもモテないんだから。ピキ、と私のこめかみの血管が浮かんだ気がした。
「ダメ、もうぼっちやだもん」
それに、リョウとそういうの、怖いから無理。多分私、リョウのことは好きだけど、友達としてで異性としては無理なんだと思う。
だから、付き合えない。
「ごめんね、リョウ」
「そか、やっぱりダメか」
「でも、友達だから……」
私が困って友達というワードを出したら。一瞬、ムッとした顔でリョウが言い放った。
「キスしたのに友達でいられんの?」
クラス中に聞こえる声で。
さっきよりザワザワと、クラスの子たちがコソコソ話し始める。
私は真っ赤になって席を立つと、カバンに机の上の道具を入れて飛び出した。
昨日の今日でこんな嫌な気持ちになるなんて……
教室を出てすぐ、どすんと誰かにぶつかり廊下に転ぶ。カバンも床に勢いで落ちてしまった。
「ご、ごめんなさい……」
私は半泣きの状態で、ぶつかった人に謝った。
「あれ、佐藤新」
昨日の、佐々木冬馬とかいう人だった。私は涙をブレザーで拭うと、カバンを肩にかけて立ち上がって走り出す。
「あ、おい!」
私は逃げ出すように学校から出る。
次の授業のチャイムが、学校の外に鳴り響いていた。
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