【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき

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二年生 後期

44 春祭りの出し物

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私は呆然としたまま、ウィルフレッド様とカルロス様と三人並んでレオナルド殿下に叱られた。

雷の魔術は、当面使用禁止を言い渡された。

そしてカルロス様は、額に青筋を浮かべた宰相閣下に連れて行かれた。

宰相閣下は、息子であるユラン様を大人にして渋みを足した素敵なナイスミドルだったけど、ユラン様も目じゃないくらいの冷たい顔でカルロス様を引きずって行った。

大の大人が助けて~と半泣きになって引きずられる光景はなかなか衝撃的だった。


「カルロス様、大丈夫だったかな」

客室に戻され、部屋を出るなと言われ、ほぼ軟禁状態にされてしまった。
ドアの外には、私を守っているのか私を見張っているのか、判別の付かない護衛騎士が二人配置されている。

「これじゃ中庭に穴も掘れない」

悄然とソファーに座る私の耳に、カルロス様の声が甦る。

『魔力の相性がいいってことは、体の相性がいいってことだし、子供が出来る確率も上がる。良いこと尽くめじゃないか』

「ぎやー!!!」

「マクウェン男爵令嬢!どうなさいましたか?!」

「はっ!」

いけない。
思わず取り乱してしまった。

「す、すみません。何でもありません。大丈夫です」

外の護衛の人達に返事を返し、ついでに部屋をウロウロする。

カ、カラダノアイショウって、あのカラダノアイショウってことだよね…?

「ど、どうしよう」

そんなの知らなかった。
ウィルフレッド様は知ってたんだろうか。
あの様子だと知ってたっぽいけど。

「教えてくれたら…いや、ダメだ!」

ウィルフレッド様から直接教えられたら、その場で爆死していただろう。

前世での経験はあるけど、今世では全く考えたこともなかったから、いきなり降って湧いたカラダノアイショウ問題にどう対処していいか分からない。

「どうしよう…どうしよう…どうしよう…今度ウィル様に会った時、どうしたらいいんだろう…」

そして休日の間延々と、広い客室をグルグル歩いて過ごした。



週明け、王宮からレオナルド殿下と婚約者ディアナ王女のラブラブな馬車に乗せられて登校した私は、教室に入って一番にウィルフレッド様と目が合った。

そして思いっきり逸らした。

その後も、何故かしょっちゅう目が合っては慌てて逸らす。

そんなことをやっていたら、ウィルフレッド様は何も悪くないのに、俯いて悲しそうな顔をするようになってしまった。

ウィルフレッド様はカラダノアイショウについて知っていたのに、私に変な態度を取ったりもせず、普通に接してくれていたのに…。


さすがにウィルフレッド様に申し訳なくて、休み時間は教室から出て頭を冷やすことにした。
そんな私の後ろを王宮から派遣された護衛がついてくる。

エルダー様親衛隊のことをウィルフレッド様に相談しようと考えていたけど、もうそれどころじゃない。

話すどころか目が合わせるのすら恥ずかしくてたまらない。

どうしよう。
どうしたらいいんだろう…。

「シェリル嬢!」

行くあてもなく廊下を彷徨い歩いていたら、聞き覚えのある声に呼び止められた。
振り向くと爽やかな人の良い笑顔。

「アルノー先輩!」

三週間ぶりに見るアルノー先輩。

「戻って来たんですね」

私はアルノー先輩に近付いて小さな声で聞いた。

「戻りたくなかったんだけど、マチルダに怒られちゃったからね」

何やら照れ顔でそう言うアルノー先輩。
怒られたと言うわりには、生き生き艶々で輝いて見える。

なんだろう。
ちょっとイラッとする。

「マチルダから、シェリル嬢にお礼を伝えて欲しいって頼まれたんだ。それに俺からも。マチルダを助けてくれてありがとう」

アルノー先輩が私に笑いかける。

マチルダ様を追いかけて行ったリーバイ領で何があったのかは知らないけど、目を逸らしたくなるくらいの幸せオーラを放っている。

「マチルダ様のこと、呼び捨てにしてるんですね」

思わず低い声が出る。

「それに私のことも、シェリル嬢って名前で呼んでましたけど、許可した覚えはありませんよ」

前はマクウェン嬢と家名で呼んでいたはずだ。

分かってる。
これは八つ当たりだ。
幸せそうなアルノー先輩に対するただの嫌味だ。

「ああ、ごめん。マチルダがいつも名前で呼んでるから移ったみたいだ。今更だけど、名前で呼んでもいいかな?」

効いてない。
私の嫌味効いてないよ!

「…もういいです」

「ありがとう!」

くっ…。
アルノー先輩の幸せ一杯輝く笑顔は、休み時間にあてもなく廊下をうろつく私には眩しすぎる。

思わず小さく溜息を吐く。

よく考えたらカラダノアイショウがいいからって、実際ウィルフレッド様とどうこうなるわけじゃない。
私が動揺する必要はないはずだ。

「そろそろ次の授業が始まるから、シェリル嬢も教室に戻ったほうがいいよ」

アルノー先輩がそう言って去って行く。

その後ろ姿を見送りながら、それでもなるべくウィルフレッド様と目が合わないように気を付けようと心に決めて、教室に戻った。


「この時間は、春祭りでやるクラスの出し物を決めてくれ」

あちこちに跳ね散らかった緑色の髪をガリガリ掻きながら、オーガスト先生が面倒くさそうに言う。
ついでに大きな欠伸をしながら、教壇の端にある椅子に座って寝る体勢になってしまった。

こんなんだけど、オーガスト先生は二年Aクラスの担任だ。

「それでは、何か提案のある方はいらっしゃいまして?」

アマーリエ様が教壇に立って教室を見渡しながら言う。
アマーリエ様はライリー様と一緒にクラス委員をしてくれている。

レオナルド殿下やユラン様、ウィルフレッド様は生徒会役員なのでクラス委員は出来ないらしい。

「食い物屋がいいなぁ」

「飲食店は一年生が出しますわ。二年生以上は魔法を使って、魔法学園らしさを演出しなくてはいけませんのよ」

ライリー様の呟きを一刀両断したアマーリエ様。

まだ魔法の基礎を勉強している一年生は、あまり魔法を使わなくてすむ飲食店を出すことが多い。
二年生以上は魔法を使った出し物で、メネティス王立魔法学園の春祭りを盛り上げなくてはならない。

「せっかくシェリル様がいるんですから、闇魔法を使った出し物はどうでしょうか」

三人娘の子爵令嬢が手を上げて言う。

「闇魔法を使うには国王陛下の許可がいるぞ~。申請書を作って、審査があって、問題なくても許可が下りるまで最短三ヶ月だ」

寝てると思っていたオーガスト先生が声を上げる。
最短三ヶ月かかるんじゃ、三月末の春祭りには間に合わない。

「残念ですわ。癒しの魔術の素晴らしさを、沢山の方に知って頂きたかったのに」

子爵令嬢がしょんぼりしている。

ありがとう。
その気持ちが嬉しいよ。

感謝を込めて、子爵令嬢に笑顔を送る。

と、その後ろにいたウィルフレッド様と目が合いそうになって慌てて逸らす。

そういえば、ウィルフレッド様はどんな魔道具を作るんだろう。
今年こそオーガスト先生に勝つとか言ってたけど…。
あ、そうだ!

「はい!」

私は勢いよく手を上げた。

「あ、あら、はい。シェリルさん、どうぞ」

アマーリエ様が私を見た。

「去年、オーガスト先生が発表された、ゴーレムの心臓の小さいのを沢山作って、人形劇はどうでしょうか?」

「まあ!人形劇?!」

「セリフが言えないので物語にするのは難しいでしょうけど、場面ごとにテーマを決めて、いろんな衣装を着けた人形が踊るだけでも、楽しんでもらえるんじゃないでしょうか」

ラインダンスとかなら人形でも出来そうだ。

「面白そうですわね!」

アマーリエ様の目がキラキラしている。
アマーリエ様、お芝居とか好きそうだもんね。
エルダー様にさせた片膝ついてのエスコートの申し込みとか…現実でやられるとだいぶ痛かったけど。

クラスの雰囲気は、女子には概ね好評だけど、男子はいまいちぼんやりしている感じだ。

「オーガスト先生、如何でしょうか」

「んが?あ?ああ、いいんじゃないか」

「では、ゴーレムの心臓のご指導、よろしくお願いいたしますわね」

「あ?何だソレ?」

寝てたな。
先生。

「さあでは、どんな内容にするのか話し合いましょう!」

クラスの総意を確認することもなく、生き生きした表情のアマーリエ様の独断でクラスの出し物は決定した。

さすが王女様だ。


この後、ゴーレムの心臓はクラス全員で手分けして作り、人形は土人形の方が動きが良いとのことで、土魔法を持つ人は優先で人形作りをすることに決まった。
さらに、衣装は女子全員で、男子は舞台セットを作ることになった。

春祭りまであと一ヶ月半弱。

これからしばらく学園は、年に一度の一大行事に向けて忙しくなる。


「シェリル嬢」

休み時間、教室の外に出ようとしたらユラン様に声をかけられた。

「ありがとうございます。オリビアが喜びます」

そう、ゴーレムの心臓はオリビア様が見たがっていたのだ。

「春祭り、楽しんでくれるといいですね」

私が笑いかけると、ユラン様も優しい笑顔を向けてくれた。

妹思いのユラン様。

これで少しでも、オリビア様が元気になってくれたら嬉しいな。
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