【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき

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二年生 前期

4 勉強の邪魔です

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翌日。
授業の合間の休み時間に、早速エルダー様がやって来た。

「シェリル嬢」

潤んだ紫の瞳で見上げるように見つめてくる、まだ幼さの残る美少年。
自分が可愛いいことを知り尽くした仕草、まだ十四歳なのに末恐ろしい。

「はい、シュトレ様。何かご用ですか?」

読みかけていた本から顔を上げて、なるべく自然に見えるようにニッコリ微笑む。

エルダー様の向こうに、紅い瞳をキラキラさせたアマーリエ様の姿が見えた。

「何の本を読んでるの?」

「魔力と生物の相対性について、です」

「……あぁ、そう。……難しそうな本だね」

「何かご用ですか?」

再度ニッコリ微笑んで言ってみる。
用がないなら話しかけないでくださいませ作戦だ。

「いや、特に用事はないけど。いつもそうして本を読んでいるから、たまには僕とお喋りでもしないかなと思って。イヤかな?」

イヤです!
って言いたいけど、相手は高位貴族だ。
しかも作戦はサラッと失敗した。

「光栄です。シュトレ様」

「良かった!ねぇ、僕のことはエルダーって呼んでよ。僕もシェリルって呼ぶから。ね?」

そう言いながらコテンと小首を傾げるエルダー様。

…あざとい。

ただでさえ少し幼さの残るエルダー様が小首を傾げると反則的な可愛さだ。
しかも何か変な色気が漂っている。
年上のお姉様・奥様方に可愛がられまくっているって噂は本当だな。

「とんでもありません。シュトレ様は公爵家の方で、私は男爵家です。お名前で呼ぶなんて恐れ多いことは出来ません」

「学園の中では身分なんて関係ないじゃない。ほらシェリル、エルダーって呼んで!」

確かに学園の中は身分に関係なく平等と謳っているけど、そんなのは詭弁で、実際は貴族社会の縮図だ。

「シュトレ様、おからかいになるのは止めて下さい。特にご用事がないようでしたら、失礼させて頂きます」

そう言って席を立とうとしたら、手を掴まれた。

「用事ならシェリルとお喋りすることだよ!シェリルは僕が嫌いなの?だからそんな風に冷たくして、名前を呼んでくれないの?」

紫の瞳に涙を滲ませて、掴んだ私の手を両手で握りしめ、震える声で言いつのる超絶美少年。

何これ!怖い!
まるで私がエルダー様を虐めてるみたいじゃない!

チラチラとこちらを見ていたアマーリエ様がニヤつくのが見えた。
慌てて扇子を取り出して口元を隠してるけど、丸見えだ。

くっ…これ以上断ったら逆に不敬になってしまう。
しかも周囲の眼が痛い!

「ううっ…え、エルダー…さま」

「様もいらないよ。ほら、ちゃんとエルダーって呼んで!」

私の手を両手でギュッと握りしめ、涙の残る紫の瞳を瞬かせて言うエルダー様。
しかもグイッと顔を寄せてきたから、わたしの視界はエルダー様の美麗なお顔で埋まってしまった。

もう何をどう答えていいのか分からない…!

私の精神は限界を迎えた。

そして机に突っ伏した。

「これ以上は無理です!」

何コレ!どうしたらいいの?

くやしすぎて涙が出そう。
昨夜色々作戦考えたのに、ちっとも役に立たなかった。

「エルダー、女性を困らせてはいけないよ」

涼やかで凛とした声が響く。
そっと顔を上げると、アマーリエ様と同じ銀色の髪に切れ目がちの紅い瞳、彫刻のように恐ろしく整った美しい顔が見えた。

レオナルド王太子殿下が、見かねて声をかけてくれたようだ。

「レオナルド殿下…!困らせるつもりは無かったんですが…。シェリルごめんね。僕、シェリルと仲良くなりたかっただけなんだ」

心持ち頬を赤く染めたエルダー様が、私の顔を覗き込みながら謝る。

うぅっ。
やっぱりあざとい。

しかもさっき掴んだ私の手をさりげなく撫でている。

私が甘かった。

前世では多少男女のお付き合いもあったけど、よく考えたら、目が合うだけで赤面しそうな美少年なんて二次元でしか見たことないし、あざとさ満点のエルダー様みたいなタイプは苦手で、あまり関わったことがないんだった。

今世はそもそも家族親戚以外の男性との関わりがない。

「いえ、私こそ取り乱して申し訳ありませんでした」

撫でられている手をそっと引っ込め、エルダー様にそう言ってからレオナルド殿下の方へ向き直る。

「レオナルド王太子殿下、お声がけ頂きありがとうございました。見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ありませんでした」

「君は悪くない。謝罪の必要はないよ」

レオナルド殿下はそう言って優雅に微笑むと、颯爽と自分の席に戻って行った。

すると、レオナルド殿下の後ろにいた藍色の髪に黒い瞳の整った顔立ちの男子生徒が、私の方を見て何か言いたげに口を開けて……閉じた。

え?何?
言いたいことあるなら言って!気になる!

結局その男子生徒はそのまま何も言わず、レオナルド殿下の方へ行ってしまった。

あの人は確か、魔術師団長の御子息ウィルフレッド・メーデイア公爵令息だ。

ウィルフレッド様のお母様は現国王陛下のお姉様で、アマーリエ様とレオナルド殿下とは従兄弟にあたる。
嫡男ではないけど魔法の才能が高くて、魔術師団入り確実と言われていると聞いた。

羨ましい…。

そういえば、ウィルフレッド様もそうだし、レオナルド殿下やアマーリエ様、お取り巻き三人衆も、高位貴族はどうしてみんな馬鹿みたいに整った顔をしているんだろう。

「シェリル」

そんなことを考えていたら、いつの間にか目の前にエルダー様の艶めく笑顔があった。

「本当にごめんね。お詫びに今日の放課後、ケーキの美味しいカフェでお茶をご馳走するよ」

「ほ、放課後はバイトをしているので無理です」

「え?バイトしてるの?何のバイト?」

「…宿屋の食堂です」

「へえ。今度食べに行ってもいい?」

「女性専用宿なので男性は入れません」

「そうなんだ…残念。じゃあ今度の休日どこかに遊びに行こう」

どうしよう。
エルダー様の怒涛の攻めに終わりが見えない。

そしてアマーリエ様がずっとキラキラ目で見てるのが腹立たしい。

「休日もバイトがあるので無理です」

今の休み時間だって、本来なら貴重な読書時間だ。
いい加減諦めて欲しい。

「う~ん、じゃあ学園内デートにしよう!今日のランチ一緒に食べようよ」

ひとつ断ってもまた新たにひとつ提案される。
これって何か承諾しないと永遠に終わらないのかな?

このままだと休み時間が終わってしまう。
お願いだから、貴重な勉強時間を邪魔しないでもらいたい。

もう嫌!
誰か助けてー!!!
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