ジョージと讓治の情事

ヌクモリ ①

　
　それから僕らは、自分たちの話をした。
　ジョージは仕事で日本に来ているらしい。

　途中、英語で早口に捲し立てられてよく理解出来なかったけど、なんとなく日本人の恋人が欲しいみたいなことを言っていた気がする。

　そういえば日本人女性って外国人にモテるんだよね。
　奥ゆかしいし、若く見えるからだったかな？
　僕からすれば女の人は強い人が多いんだけどな。主に姉ちゃんが。

　だから姉ちゃんの強さをジョージに説明したのに、そんなことないよって笑顔で押し切られてしまった。
　ジョージは姉ちゃんに会ったことないじゃん。

　ジョージには妹がいて、既に結婚してるらしい。子供が可愛いって写真を見せてくれた。
　外国人って本当に見た目のいい人揃ってるよね。
　妹さんもジョージに似て美人だったけど、その娘はさらに天使だった。

　旦那さんは黒人に見えたけど、この娘さんとの繋がりはどうなってるんだろう？　って思って納得いかない顔をしていたら、ジョージが説明してくれた。

　どうやら娘の父親は違うらしい。
　妹さんのお腹が大きいのをみて、今の旦那さんとも新しい命を授かったんだなぁって思ってたら、「次生まれてくる子の肌色がどんな色になるか楽しみだろ？」って言われた。

　僕は漠然と白人と黒人のハーフはみんな混ざった色になるんだと思っていた。

「薄い黒色になるんじゃないんですか？」

「目の色と一緒で、父親の肌が黒くても白人に生まれることもある。黒人に生まれることもあるし、讓治が言うように混ざった色に生まれることもある。生まれる前に性別はわかるが肌色だけはわからないんだ。生まれてくるまでわからないって楽しみだろ？」

「そうですね。たしかに。どんな肌色で生まれてくるのか、楽しみですね」
　
　家族構成を聞く限り複雑そうに見えたけど、ジョージから語られる家族の話はとても幸せそうだった。
　ジョージの両親は孫の我儘と無尽蔵な体力に振り回されて四苦八苦しているらしい。

　表情豊かに楽し気に話すジョージは、家族がすごく好きなんだな、って凄く伝わった。
　嬉しそうに話すジョージを羨ましく思った。

　僕の両親や家族に不満があるわけじゃないけど、一緒に住んでれば、いつも小言を言われるし、姉ちゃんは暴力的で、俺の友達(だと思っていたやつ)の事もいつも悪く言ってた。
　今なら、姉ちゃんのいつもの罵倒を聞いたら、すっきりするかもしれないけど、それでも自分の為すこと全てに文句を言われれば気分は良くない。

　僕が家族の話をするときは、大した内容もなかったから、「ふつーです、ふつー」ってはぐらかすと、ジョージは少し訝しい顔をして、「家族は好きじゃないの？」って聞いてきた。

　ジョージほど好きではないよ。
　だけどもちろん嫌いじゃない。ただ、一緒にいるだけの人たち。

「さびしい？」

「全然。ジョージさんみたいに家族を愛してるわけじゃないもん。でも日本ではこれが普通」

「家族はとても大切。讓治は将来、大切な家族が持てるといいね」

「そっか。僕の家族か。まだずっと先の話で想像つかないな」

「きっと出来るよ」

「それより、僕は裏切らない友達が欲しいな」

「トモダチ？」

「ジョージさんみたいに暖かい人ならいいな」
　
　思わず口を突いて、本音が出ていた。

「えっ」

「あ、すみません、なんか変なこと言ってますね」

「讓治が望むなら、私は喜んで友達になるよ」

「ほんとに？」

「……YES」

「ジョージさんと友達になれたら嬉しいな」

「もう友達だよ」

「ありがとうございます」

「……そろそろ寝ようか」

「そうですね。明日、朝早いですよね」

「夜のうちに雨が上がってくれる事を祈ろう」

　寝るには随分と早い時間だったけど、シュラフに潜ってその上に二人で一枚のシートをかぶって横になると、しばらくして眠気が襲ってきた。
　結構体力使ったから、疲れていたんだろう。
　さっき一口貰ったお酒も手伝ってるのかもしれない。